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2025年度看護学部・看護実践研究センター開設10周年記念講演会

レポート
2026年01月07日

看護学部・看護実践研究センター開設10周年記念講演会 報告

11月29日(土)に日本福祉大学看護学部・看護実践研究センター開設10周年記念講演会を日本福祉大学東海キャンパスにて開催いたしました。

開会にあたり、白尾久美子 看護学部長より、参加者の皆様へ看護学部のこれまでの歩みや、近藤克則先生との出会いを振り返りながらご挨拶がありました。

本講演会は、看護学部・看護実践研究センター開設10周年記念講演として、看護学部開設当初に多大なご尽力をいただいた近藤克則先生をお迎えし、「自然に幸福・健康になれるまちづくり」をテーマに開催しました。講演では、日本老年学的評価研究(JAGES)による全国規模の縦断研究の成果が紹介されました。調査結果から、幸福感や健康状態には地域差がみられ、幸福感の高い地域ほど死亡率、認知症発症率、要介護認定率が低い傾向にあることが示されました。特に、主観的幸福感が高い人ほど将来的な健康リスクが低いという知見は、疾病の予防に重点を置いてきた従来の考え方を補完する重要な示唆として示されました。

また、健康と幸福に関連する要因として、食料品店が近くにない場合には死亡リスクが約1.6倍となること、男性では同居していても孤食の場合に死亡リスクが約1.5倍となることなど、具体的なデータが示されました。社会参加、歩行や運動、笑い、共食、趣味活動といった日常生活の中で実践可能な行動が、健康維持に重要であることが強調されました。さらに、「まちの環境」や「社会環境」の視点からは、食塩摂取量と食品工業用塩の消費量の関係、食品加工の工夫(カゴメトマトジュースの食塩無添加化)や、ウォーカブルな姫路市の事例などが紹介され、環境整備が健康行動を自然に後押しする具体例が示されました。

これらの取り組みは、特別な医療的介入を必要とせず、生活環境や地域の工夫によって自然に促進できる点に特徴があります。個人の努力や意識啓発のみに依存するのではなく、歩きやすい道路環境、公園や身近な商店の配置、住民が気軽に集える「通いの場」の整備といった、健康を生み出す背景要因に着目する「ゼロ次予防」の重要性が強調されました。

さらに、愛知県武豊町の事例では、住民主体のサロン活動や通いの場の充実により社会参加が促進され、要介護認定率の低下や医療・介護費の抑制につながったことが紹介されました。これらの成果は、行政、大学、民間、地域住民がそれぞれの役割を担いながら連携することの有効性を示すものです。加えて、成果連動型民間委託契約方式(PFS)やソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)といった新たな仕組みは、健康づくりを将来への「投資」として捉える視点を提示し、持続可能な健康施策の可能性が示されました。

講演のまとめとして、幸福と健康は個人の努力のみによって実現されるものではなく、地域や社会の仕組みづくりによって支えられるものであることが改めて示されました。本学における看護教育・研究、ならびに地域連携協働においても、今後一層、エビデンスに基づく健康なまちづくりの視点を実践に活かしていくことの重要性が示唆されました。また、ウェルビーイングの本質は、すべての人、すべての世代、未来の人々のための豊かさであること、その実現に向けて産・学・官・金が連携し、「Well-being for All」を中部から世界へ発信していくことの意義が語られ、一人ひとりが身近な一歩を踏み出すことの大切さが会場に呼びかけられました。

会場からは、詳細なデータに基づき、新たな視点と具体的な実践事例が豊富に示された講演に対し、大きな拍手が送られました。当日は、小学生から高齢者まで、市民、自治体関係者、保健医療福祉職、学生・教職員を含む78名が参加しました。アンケートでは、「Well-beingの高いまちづくりの重要性がよく理解できた」「統計データから、どのようにWell-beingを高めていけるのかが分かった」「介護保険とまちづくりの関係が整理できた」「自分にもできることがあると感じた」「社会参加を続けていきたい」「産官学民連携の重要性を実感した」「大学の存在意義を改めて感じた」「地域をさらに盛り上げてほしい」など、多様な立場からの感想や、次回開催を期待する声が寄せられました。

閉会にあたっては、岡田由香看護学研究科長より、看護学部、看護実践研究センター、看護学研究科が、今後も地域や保健医療福祉分野に一層貢献していく決意とともに、感謝の言葉が述べられました。