日本福祉大学の3つのポリシー策定の基本方針

 日本福祉大学は、「建学の精神」のもと「地域に根ざし、世界を目ざす『ふくしの総合大学』」として多様な学部・研究科を配置し、社会と時代が求める「人財」(※)を養成しています。これにあたり3つのポリシーをいち早く策定し公開しましたが、このたびこのポリシーを軸とする文教政策が示されたことを受け、その見直しと今後の継続的な教育の質向上の取組を進めるための基本方針を以下の通り定めます。

(※「人財」とは、本学の養成人材が、地域・社会・時代等の中で各々の力を発揮し、その持続や発展に貢献する、かけがえのない「たから」のような人材であってほしいとの趣旨を込めて、「材」を「財」に替えて表現したものです。)

1.日本福祉大学の3つのポリシー策定の基本方針

1. 日本福祉大学の3つのポリシーは、本学の教育内容を明確に示す「鍵」となります。
  • 3つのポリシーを通して、本学の教育の内容を本学学生・教職員と社会一般に広く伝えます。
  • そのため、抽象的でなく、より具体的で分かりやすい表現で3つのポリシーを記述します。
  • また、3ポリシーの間の一体性・一貫性・整合性に留意し、その関係性について図を用いて示します。
2. 日本福祉大学の3つのポリシーは、教育の運営・向上・発展の「鍵」となります。
  • 3つのポリシーを、日々の教育運営と教育の向上・発展に係るPDCAサイクルの中心に位置づけます。
  • そのため、3つのポリシーの内容は絶対不変ではなく、教育の向上・発展への弛まぬ取組の中で絶えず必要な見直しを行い、より良いものへと向上させていきます。
  • また、3つのポリシーを指針として、教員・職員の資質・能力の向上を図るFD・SDに取り組みます。
3. 日本福祉大学の3つのポリシーは、「建学の精神」の理念を教育につなぐ「鍵」となります。
  • 3つのポリシーには、本学の理念である「建学の精神」や「教育標語」、養成人材像(本学学則第1条「目的」・2条「教育の目標」にて定義)を反映します。
  • そのため、この基本方針の中で、「建学の精神」に発する「ふくし」の考え方などについて基準を示し、本学の伝統と特色を生かした教育を目ざします。
  • また、各学部等の3つのポリシーと並行して、「日本福祉大学スタンダード」の「四つの力」と「ふくし・マイスター」の育成に係るポリシーを全学共有のポリシーとして策定します(※)。
    (※「日本福祉大学スタンダード」:本学学生が共通して身に付けるべき知識、技能、態度等を集約したもの。)
    (※「四つの力」:本学スタンダードの構成要素。伝える力、見据える力、関わる力、共感する力。)
    (※「ふくし・マイスター」:地域に関心を持ち、身をもって地域課題の解決にあたる素養をもった人財。)
4. 日本福祉大学の3つのポリシーは、教育の質保証・質的転換を進め、社会の要請に応える「鍵」となります。
  • 3つのポリシーを軸とするPDCAサイクルでは、教育の質保証と質的転換を志向するとともに、アクティブラーニング等の能動的学修の一層の普及を推奨します。
  • そのため、求める学修成果、それに至る学修方法、学修成果の評価の在り方について、3つのポリシーとは別に、アセスメント・ポリシーとしてまとめて明確にします。
  • また、卒業生の就職先等を含む社会のニーズに3つのポリシーが対応するように留意し、その対応方針を別途まとめて示します。

2.3つのポリシーの策定単位について

  • 3つのポリシーは、各学部・各研究科を単位に策定します(必要に応じて、学科・専攻・専修単位も可能)。策定にあたって、この基本方針に基づいた上で、各学部・各研究科の自主性を尊重します。
  • 「四つの力」と「ふくし・マイスター」の育成に係る全学共有の「日本福祉大学スタンダード」ポリシーは、全学教育センターにて策定します。これには全学教育センター科目だけでなく各学部の科目も対応します(センター移管科目もしくは対応する学部科目指定 [例:地域志向科目の指定])。
  • アセスメント・ポリシーは、各策定単位にて策定します。
  • 社会的ニーズへの対応方針は、各策定単位にて策定します。
  • アドミッション・ポリシーは、各策定単位のポリシーとともに、全学的な方針を別途示します。

3.アセスメント・ポリシーの策定について

  • アセスメント・ポリシーの策定にあたって、まず各策定単位のディプロマ・ポリシーについて、どのような学修成果をあげれば学位を授与できるかを検討し、客観化する必要があります。
  • そのためには、ディプロマ・ポリシーの一つ一つの内容をさらに「深掘り」し、どのような知識・理解、技能、態度・志向性などを身に付ければ修得したといえるか、具体的検討が必要です。この作業を行うにあたっては、中央教育審議会が出した学士課程答申の「学士課程共通の学習成果に関する参考指針」のカテゴリーと各資質・能力の区分を参照することを推奨します。
  • このように学修成果を検討した上で、対応する学修方法と評価方法についての方針をまとめます。
  • この方針は、今後、各策定単位において教育の質保証や質的改善に取り組む指針とします。

4.今後の入学者受入れに係る基本的方針について

  • ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーとの整合性を重視したアドミッション・ポリシーを策定します。
  • 「学力の三要素」を十分に評価する多様な選抜方法による入学試験を実施します。
  • 多様な背景を持つ学生の受け入れを目指した入学試験を実施します。
  • 外部検定試験・資格を入学者選抜に活用します。

5.「ふくしの総合大学」としての「ふくし」の考え方について

  • 本学は福祉を「ふくし」と平仮名で表記し、「ふつうのくらしのしあわせ」を表すものとして使用しています。この平仮名「ふくし」の表現は、「ふだんのくらしのしあわせ」を意味するものとして、地域福祉や福祉教育の分野でも古くから使われてきました。いずれも、より多くの人たちに関心をもってもらい、福祉を身近なものとしてとらえてほしいという意図が込められています。
  • 「ふつう(ふだん)のくらしのしあわせ」の主人公は、私たち自身です。とはいえ「福祉」と聞くと、障害のある人やお年寄りのことをイメージする人が多いのではないでしょうか。それも援助を必要とする社会的な弱者を思い浮かべることが多いのです。そこには社会的弱者を助けてあげることが福祉だという先入観があるのではないでしょうか。結果として、福祉は他人事になり、できれば自分自身は関わりたくないといった貧しい福祉観が世の中に蔓延してしまったのです。また「福祉」が狭い意味での福祉制度を意味することにもなりました。
  • しかし「ふくし」とは他人事なのではなく、一人ひとりが、どうしたら日々の暮らしをしあわせに営めるかを考える、まさに我が事として認識することからはじまります。そうなれば、私が幸せであるように、家族や友人、いろいろな人たちも幸せであってほしいと願うようになります。一方で一人の人間は弱い存在であることを認めあい、地域のなかでお互いが支えあいながら前向きに生きていくことを意図するようになります。
  • 「ふつうのくらし」を大切にするということは、当たり前の暮らしを営むことは権利であるというノーマライゼーション(共生社会)の理念に通底します。社会的排除・差別をなくし、多様性を認め合うというソーシャルインクルージョン(社会的包摂)という考え方を取り入れ、持続可能で相互に支えあう地域社会(ケアリングコミュニティ)を創出していくことが、「ふくし」の思想なのです。
  • 「ふつうのくらし」を大切にすることは、憲法25条の「生存権」の保障そのものです。また「しあわせ」とは、憲法13条の「個人の尊重」と「幸福追求権」のことであり、その人らしく生きていくことの権利のことです。そして、「ふくし」は平和と民主主義が基盤になければなりません。
  • 日本福祉大学は、こうした「ふくし」をさらに探求し、実現していくことを目指しています。そのための研究と教育を世界レベルで担っていくことを決意して「ふくしの総合大学」と自らを称することにしました。
  • 狭い意味での「福祉」を超えて、「いのち」「くらし」「いきがい」という3つの領域から「ふくし」にアプローチし、「万人の福祉のために、真実と慈愛と献身」ができる人財が輩出し、一人ひとりが「ふくし」の実現に向けて主体的に行動する社会にしていくことこそが本学の使命です。
  • 格差社会が広がり、虐待、差別や自死など人の命に関わる事件・事故が日常的かつ頻繁に起こっている混迷した現代社会。建学の精神が示す「この悩める時代の苦難に身をもって当たり、大慈悲心、大友愛心を身に負うて、社会の革新と進歩のために挺身する志の人を、この大学を中心として輩出させたい」という本学の原点は、まさに「ふくし」人財の養成を通じた、社会への貢献にあります。
  • 日本福祉大学は、「ふくしの総合大学」として、「ふくし」の考え方を基盤として各学部・研究科にて多様な教育・研究を展開し、現代の社会が求める「ふくし」人財の養成を進めます。現代社会における「ふくし」は、多様な分野・領域の参画、様々な職種などの連携・協働を必要としています。さらに「ふくしの総合大学」としてこれからの時代に求められる「ふくし」の創発を進める、教育・研究を追求していきます。