看護学部 お知らせ
看護学部 新美綾子教授が日本災害看護学会年次大会で講演を行いました
本学では、大規模災害時における『公助の限界』を見据え、地域に在住する潜在看護職者(臨床現場から離れている保健師・看護師等)を防災・減災の担い手として育成・活用する実践研究に取り組んでいます。 このたび、日本災害看護学会第28回年次大会において、本取り組みが新美綾子教授による教育講演および同教授が座長を務めたシンポジウムにて紹介されました。
【教育講演】大規模災害に備えた「潜在看護職者」による地域防災力向上への取り組み
10月3日(土)に行われた日本災害看護学会第28回年次大会で看護学部 新美綾子教授が教育講演を行いました。本講演では、大規模災害発生時における「公助の限界」を見据え、地域に在住する「潜在看護職者」(現場から離れている保健師・看護師等)を防災・減災の担い手として育成・活用してきた10年間の実践研究が発表されました。全国に約79万人存在する潜在看護職者は、勤務先への参集義務を持たず、発災直後から「地域住民」としてその場に滞在できる強みを持っています。自分と家族の安全確保を最優先とした上で、できる範囲で地域住民の命と健康を守る「DiRAN(災害救護支援ナース)」の理念と、知多半島で推進する地域共助の取り組みが紹介されました。
■ 背景:地域に眠る「潜在看護職者」という頼もしい共助力
南海トラフ地震や豪雨災害の懸念が高まる知多半島では、発災直後の支援者不足や孤立化が課題です。そこで本学は、全国に約79万人存在する「潜在看護職者」に着目しました。彼女たちは勤務先への参集義務を持たず、発災直後から「地域住民」として滞在できる強みがあります。自分と家族の安全確保を大前提に、できる範囲で地域住民の命と健康を守る「DiRAN(災害救護支援ナース)」の理念を掲げました。
■ 第1期:ニーズに基づく教育プログラムの開発と地域展開(2015~2018年度)
2015年の東海市からの相談を契機に多職種チームを結成。受講ニーズを分析し、避難所運営や資機材のない環境での分娩支援、身近な物品(ラップやタオル等)による応急救護、発災72時間を疑似体験するゲーム「B72 for DiRAN」など実践的な講座を構築しました。知多市・美浜町へ展開し、3年間で延べ750名が受講。地域で役立つ自己効力感(自信)を育みました。
■ 第2期:広域化と行政での「自治体登録制度」の確立(2019?2021年度)
厚労省補助事業として「調査・研修・システム推進」の3事業を展開。Web調査により潜在看護職の約6割が協力意向を持つことを確認し、コロナ禍ではオンデマンド動画と対面実技を融合したハイブリッド研修を推進しました。さらに、受講者を自治体の地域防災計画に組み込み、東海市の「災害支援看護職活動員」、知多市の「災害時健康活動サポーター」、半田市の「Handa Potential Nurse Club」など公式な登録制度を確立。登録者はコロナワクチン接種の「打ち手」として大活躍し、有事における実効性を立証しました。
■ 第3期:実践展開と今後の展望(2022年度~)
福祉施設等のBCP策定支援や個別避難計画の作成支援へと領域を拡大。行政・福祉・住民が重層的に連携する仕組みの中で、潜在看護職の力を平時からの地域共生社会づくりと「災害時地域包括ケア」へ繋げるモデルの確立を目指しています。
【シンポジウム】大規模災害を見据えた地域力を高める取り組み ―潜在看護職者が防災・減災の要となる地域力の醸成―
新美教授が座長を務めたシンポジウムでは、潜在看護職者や多職種(歯科衛生士・管理栄養士・臨床心理士等)が地域でいかに役割を発揮できるか、多角的な視点から議論が行われました。地域共生社会における災害レジリエンスや行政保健師による組織化、協働によるサポーター育成プログラムの構築など、行政・大学・医療機関が連携した人材育成モデルの成果が提示されました。さらに、現場で活動する看護職活動員からの報告を通じ、研修による前向きな意識転換や平時からの継続学習、顔の見える関係づくりが、有事における地域の連携強化と持続可能な防災・減災に不可欠であることが共有されました。
シンポジストの発表内容
堀江 裕 氏(藤田医科大学地域共生社会推進センター長/元東海北陸厚生局長)
援者と被支援者の役割を固定せず、潜在看護職など多様な地域人材が平時から役割を担う「地域共生社会」の構築が、地域の災害レジリエンスを高める基盤になると論じました。
後藤 文枝 氏(名古屋葵大学講師/元東海市保健師)
公助の限界を見据え、東海市で潜在看護職の登録を開始し、大学との協働研修を通じて「災害支援看護職活動員」として委嘱・組織化したプロセスの成果を報告しました。
敦賀 不二佳 氏(知多市保健師)
知多市において看護職に加え多職種(管理栄養士、歯科衛生士など)による「災害時健康活動サポーター」を育成・登録し、市の避難所マニュアルへ位置づけた協働成果を発表しました。
新海 千佐 氏・酒井 千春 氏(東海市災害支援看護職活動員)
研修受講を通じて「自分にもできることがある」と意識が前向きに変化した体験や、継続的な学習と顔の見える関係形成が有事の連携強化に重要であると報告しました。
新美 綾子(にいみ・あやこ)
日本福祉大学 看護学部 教授
愛知県立大学大学院看護学研究科修了。博士(看護学)。2015年4月に日本福祉大学看護学部准教授に着任後、2021年4月より現職。大規模災害の発生に備え、潜在看護職を活用した災害支援共助システムや地域ネットワークの構築に関する調査・研究事業を推進。東海市や知多半島をはじめとする地域において、潜在看護職のマンパワーを生かした育成プログラムや新たな地域包括ケアシステムの確立に注力している。専門は基礎看護学、災害看護、看護技術教育。主な著書に『「0から100歳の地域包括ケア」への挑戦』、論文に「潜在看護職者への災害看護研修会」など。東海市防災会議委員、日本看護学教育学会評議員などを歴任。看護師、保健師。


