おかあさんはたいへん。小さな子どもを抱えて、一人で頑張ってるみたい。

その声に応える 日福の学び

地域が、周りの人々が、子育てを支える社会が、日本を救う。

「アロマザリング」という言葉を知っていますか? 動物行動学の言葉で、母親以外による養育行動を表します。動物にとって、これはとても珍しく、哺乳類の99%は母親だけで子育てをします。なぜでしょうか? たとえば子馬は、生まれ落ちてから1時間もすると歩いています。これに対して人間の子どもは歩きだすまでに、ほぼ1年かかります。人間の子育ては、他の動物とは比べようがないほど多くの時間と労力を要します。だから、人間にはアロマザリングが必要だったのです。私自身、かつて縁もゆかりもない土地で子育てを体験し、その大変さを痛感しました。そこで地域の方たちと手を携えて、子育て支援のNPOを設立しました。小さな民家を借りて、いつでも行きたいときに立ち寄れる、集まった人同士が交流できる、子育ての悩みをわかちあったり、相談したりできる、そういう「広場」を作りました。私たちが失ってしまった、子育ての仕組みを、もう一度取り戻す、それは、人口減少化社会が始まるなかで、さまざまな社会的な課題を解決するための方法として、もっと力を入れられるべきだと思います。日本は、他の先進国に比べて、あまりにも子育てを「家庭」だけに依存しすぎてきたと思います。

子ども発達学部子ども発達学科保育専修渡辺 顕一郎 教授

待機児童の地域格差から、
地域特性に合わせた子育て支援を考える。

保育所の待機児童の問題は、さまざまな課題を浮き彫りにしています。なかでも地域格差について、私たちは考えてみたいと思います。2014年4月1日現在では待機児童は東京都で8,672人と最も多く、続いて沖縄県2,160人、千葉県1,251人、大阪府1,124人となり、この都府県で全国の待機児童の約60%を占めています。保育サービスの不足は、共働き家庭など、保育を必要とする家庭にとっては大きな問題ですが、一方で、専業主婦など、家庭で子育てをする人たちに対しても支援が必要とされています。実際、専業主婦のほうが共働き家庭の母親よりも子育ての負担感を強く感じているというデータ(2000年度 財団法人こども未来財団「子育てに関する意識調査事業調査報告書」)もあり、保育だけにとどまらず、地域特性に合わせた多様な子育て支援が求められているのです。

※出典:平成26年4月 「保育所関連状況取りまとめ」(厚生労働省)一部抜粋

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「子育て支援」には、さまざまな社会的課題を予防するチカラがある。「子育て支援」には、さまざまな社会的課題を予防するチカラがある。

地域の子育て支援施設での実習風景

渡辺先生が、子育て支援のなかで強く思ってきたことがある。「予防」だ。たとえば障害のある子に周りが気づいて、いち早くサポートできれば、親はひとりで悩まなくても済む。あるいは親が子育ての悩みや不安を蓄積し、児童虐待が起こってしまうことを、未然に防ぐことができるかもしれない。子育て支援は、1990年代なかば以降の「少子化対策」として、ようやく注目を集めるようになった。しかし、現代で期待されているのは、児童福祉における問題解決である。現代では、子どもだけを見ていては問題は解決できない。その保護者、環境、そして社会を広く見ていくことが今、求められている。

Profile

WATANABE,Kenichirou
渡辺 顕一郎(ワタナベ ケンイチロウ)
教授
博士(社会福祉学:関西学院大学)

関西学院大学社会学部卒業(1987)
関西学院大学大学院社会学研究科博士課程前期課程修了(1989)
関西学院大学大学院社会学研究科博士課程後期課程修了(2000)
京都国際社会福祉センター専任講師(1991~)
四国学院大学社会学部専任講師(1995~)
四国学院大学社会学部助教授(1996~)
四国学院大学社会福祉学部教授(2004~)
日本福祉大学赴任(2007)