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第19回福祉教育研究フォーラムを実施しました

レポート
2026年02月19日

 1月31日、名古屋キャンパスにて第19回福祉教育研究フォーラムを実施しました。

 福祉教育研究フォーラムは、青年期の社会福祉の学びを共通テーマに高校と大学が①今日の福祉をめぐる教育諸課題の解明、②高大連携教育・教育実践の交流、③福祉教育の在り方などを通じ、高大連携による教育発展、研究充実に向けた交流・研修事業を実行委員形式で行っています。

 第19回となる今回は、共生社会やノーマライゼーションをテーマに、教育・技術・地域連携の実践と課題を共有・対話することを目的に実施され、当日は、北は青森県、南は長崎県からの来場者に合わせ、合計86名(対面:61名、オンライン:25名))が出席されました。

 開会にあたり原田学長及び共催団体である三重県高等学校福祉教育研究会会長で三重県立朝明高等学校の遠藤憲校長先生が挨拶されました。

 フォーラムの冒頭、原田学長は以下のように述べられました。

 「高校から大学へと続く青年期の7年間、福祉を学ぶ彼らの歩みをいかに充実させていくか。19年前、その問いからこのフォーラムは立ち上がりました。大学が企画するのではなく、現場の先生方と実行委員会を組織し、共に作り上げてきたからこそ、今日まで継続してこられたのだと確信しています。」

 続いて遠藤会長からは、第19回を迎えた本フォーラムの歩みに触れ、次のように語られました。

 「高校と大学が連携し、青年期における福祉のあり方を探求し続けてきたこの継続的な対話こそが、現場に多くの示唆を与えてくれました。立場や分野を超えて学び合うこの場自体が、まさにノーマライゼーションを具現化する一つの機会であると期待しています。」

 高校現場の視点から、改めて福祉教育が果たす役割の重要性を強調されました。

挨拶される原田学長(左)、遠藤会長(右)

当日プログラム
第1部
(講演)

「地域共生社会について考える
-ケアリングコミュニティ&ノーマライゼーション」
講師:原田 正樹学長

「次期学習指導要領改訂に向けた審議状況と高校福祉教育の展開」
講師:辻本 智加子先生
文部科学省初等中等教育局参事官(高校学校担当)付
産業教育振興室教科調査官

第2部
(分科会)

第1分科会
教育現場から見える”共生社会”のリアル

第2分科会
福祉の可能性を広げる ~福祉と異分野の事例から~

第3分科会
「地域と福祉を学ぶ高校との協働」の振り返りと、次の一歩

 第1部冒頭の講演では、原田学長が「地域共生社会について考える-ケアリングコミュニティ&ノーマライゼーション」というテーマで講演されました。

 「これからの福祉に求められるのは、支え手と受け手という固定化された二者関係を超えて、地域のあらゆる住民(高齢や障害等関わらず)が何らかの役割を持ち、支え合う『ケアリングコミュニティ』の構築です。2000年の介護保険制度以降、私たちはサービスを契約する『利用者』という主体を確立しましたが、一方で、その構図がサービス至上主義に偏り、制度の狭間にいる人々を見落としてこなかったかを問い直す必要があります。」

 支援を「サービスの提供」に留めず、一人ひとりの「役割」を回復させることの重要性を説かれました。

 続いて、辻本先生には、「次期学習指導要領改訂に向けた審議状況と高校福祉教育の展開」というテーマでご登壇いただき、次期学習指導要領の改定議論について触れられたのち、小中高生へのアンケート結果から見える子どもたちの純粋な想いに触れ、福祉教育の可能性を次のように語られました。

 「多くの子どもたちが『人の役に立ちたい』『差別なく接したい』という願いを抱いています。この素晴らしい種を、高校の福祉教育の中でいかに枯らさず、ワクワクするような学びに繋げていけるか。『国家試験のため』という狭い目的だけでなく、生徒自身が福祉の学びを通じて、自分たちの生きる社会をより良くできるのだと実感できるような、夢を与える授業づくりを目指してほしいと願っています。」

 第2部では3つの分科会が実施されました。

 第1分科会は、「教育現場から見える“共生社会”のリアル」というタイトルで、名古屋市立西陵高等学校の茶木正幸教諭と、同校で教育実習を行った日本福祉大学4年生の黒木幸雄さんによる実践報告が行われました。黒木さんは「先天性多発性関節拘縮症」という重度の身体障害があり、移動には電動車椅子を必要とします。実習先となった西陵高校はエレベーターがなく段差も多い環境ではあるものの、福祉科の教職員たちは「障害があることは、生徒にとって何らかの深い学びにつながるのではないか」と考え、実習の受け入れを決断されました。

 黒木さんの、障害名を生徒に復唱してもらう明るい自己紹介や、唇を使って緻密な指導案を作成する姿等、制約を「知恵」で乗り越える姿が生徒や教職員の価値観を変え、最初は遠巻きに見ていた生徒たちも、少しずつ自然に声をかけ、黒木さんの移動を見守り、手伝うようになったそうです。教職員もまた、障害を持つ同僚と共に働くイメージを共有し、自発的なサポートへと動いていったという報告もされました。

 共生社会の実現には必ずしも完璧な設備だけが重要なのではなく、たとえ建物に段差があっても、心の垣根を見直し、互いに支え合おうとする姿勢があれば、そこに共生の場が生まれる可能性が示されました。障害を特別なこととせず、日常の一部として共に過ごした西陵高校の実践が、これからの社会のあり方を考える上での大切な道標となったという報告がなされました。

第1分科会の模様

 第2分科会は、「福祉の可能性を広げる~福祉と異分野の事例から~」と題し、3つの高等学校(伊賀白鳳高校(三重)・益田清風高校(岐阜)・古知野高校(愛知))による実践報告が行われました。

第2分科会の模様
1. 三重県立伊賀白鳳高等学校:福祉の可能性を広げる ~福祉と異分野の事例から~
  1. ①実践の取り組み
     ネイリスト、美容師、住宅メーカー(LIXIL)、バス会社等と連携した授業を展開。
  2. ②背景と目的
     生徒の生活知識・経験値を向上させ、生活全般を支える「福祉」の視点を広げるため。
  3. ③結果や成果
     生徒が将来どの業界に進んでも「福祉の種」を撒ける人材養成の機会となった。また、他業種・業界の人に「福祉科」の存在を知ってもらう機会(一石二鳥)となった。
2. 岐阜県立益田清風高等学校:総合学科内「観光文化系列との連携」
  1. ①実践の取り組み
     総合学科内の他系列との連携(地域の朝市での野菜販売やアユ釣り体験の連携)
  2. ②背景と目的
     下呂市唯一の高校として、地域の基幹産業である「観光」を福祉の視点で再確認することを目的に実施。
  3. ③結果や成果
     朝市での地域住民との交流から、就労支援事業所で作業している品を販売していることがわかり、朝市も福祉に関係していることを生徒自身が実感をした。また、「高齢者でも楽しめる釣りとは?」という問いから、環境整備や新たな体験デザインを考える探究へと発展した。
3. 愛知県立古知野高等学校:異分野と創る、福祉×探求の学び
  1. ①実践の取り組み
     映像系の専門学校と連携し、認知症を疑似体験する「VRコンテンツ」を共同制作。
  2. ②背景と目的
     マイスター・ハイスクール事業の一環。生徒が設定した「小中学生に認知症を正しく伝えたい」という問いからスタート。
     ※マイスターハイスクールとは
  3. ③結果や成果
     認知症を知らない映像のプロに説明する過程で、生徒自身の理解が劇的に深化。単なる知識の習得ではなく、「他者に伝える責任」を持つことで、セルフマネジメント力ややり抜く力(非認知能力)の向上が数値でも確認された。

 本分科会では、多様な実践報告を通じて、その継続が福祉の輪を広げていくことにつながっていくということが共有されました。参加者一人ひとりが新たな一歩を踏み出し、1年後には「こんなことができるようになった」と互いに成果を報告し合える未来への期待を込め、盛況のうちに締めくくられました。

 第3分科会は、『「地域と福祉を学ぶ高校との協働」の振り返りと、次の一歩』と題して、前回(第18回福祉教育研究フォーラム)のテーマを振り返りながら、学校と地域が連携している実践事例(三重県立伊賀白鳳高等学校の宇野先生及び鈴木先生)の報告が行われました。

実践報告内容

  • 教育実践の模様を生徒が主体となってその内容や魅力をSNS(インスタグラム)で配信している。
  • 異業種や専門職との連携ということで、アロマセラピー、アニマルセラピー、福祉メイクなどの業界の方々と交流を行い、生徒が多職種連携の重要性を実体験から学ぶ機会を創出している。

実践を続けていくために必要なこと

  • 新しい挑戦には壁も存在するが、校内の協力体制を基盤としつつ、本フォーラムのような場を通じて「学外の同じ志を持つ仲間」と繋がることの重要性が再確認された。
  • 悩みを共有し、互いに熱量を高め合えるネットワークこそが、前向きに挑戦し続けるための原動力となるのではないか。
第3分科会の模様

 閉会式では、全国福祉高等学校長会 理事長で、学校法人東奥学園理事長(同校 校長)の髙橋秀親理事長、および愛知県高等学校福祉教育研究会会長の牛山美奈校長先生よりご挨拶をいただきました。

 まず、牛山先生は、フォーラムを振り返り「共生社会やノーマライゼーションは、特定の誰かのためではなく、目の前のすべての生徒に関わる大切な考え方である」と強調されました。特に、福祉の専門性を持つ教員が、生徒一人ひとりの背景や困りごとに寄り添い、その子らしさを引き出す実践を周囲へ広げていく役割を担うことへの強い期待を寄せられました。現場における公平性実現の難しさにも触れつつ、すべての生徒が「自分は大切にされている」という実感を持てる学校づくりを、本日の学びを糧に推進していく決意を述べられました。

 続いて、本会の締めくくりとして、髙橋先生よりご挨拶をいただきました。高橋先生は、本日共有された数々の学びや志が、今回限りのものに留まることなく、この先も途切れることなく続いていくことを強く祈念されました。次代への継続と発展を願う温かなエールとともに、長時間の研修を終えた参加者への労いと感謝の言葉をもって、本大会は盛況のうちに幕を閉じました。

閉会式でご挨拶される、牛山先生(左)髙橋先生(右)