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学園創立70周年記念事業 第36回 日本福祉大学 社会福祉セミナーin静岡 を開催しました
11月17日(日)清水テルサ(静岡市)にて大学・後援会・同窓会の共催で『学園創立70周年記念事業 第36回日本福祉大学社会福祉セミナーin静岡』を開催しました。会場・オンラインを合わせ、約230名の方にご参加いただきました。
オープニング
静岡県立駿河総合高等学校 和太鼓部の皆さんにお越しいただきました。普段から、『考える和太鼓』をモットーに、観客だけでなく、自分たちも楽しむことができる演奏を追求されています。今回は、BAGBAN・道・野火の3曲で参加者の感情を揺さぶる素晴らしい演奏を披露していただきました。
開催挨拶
開催に先立ち、原田正樹 学長は「今回のセミナーは静岡県地域同窓会と東海地域ブロック同窓会の皆さんが中心となって準備が進められた。地元の高校生による演奏や発表も企画されており、大変楽しみにしている」という期待を述べられました。
そして、「素晴らしい講師の皆様による講演・発表を通して、創立者である鈴木修学先生が掲げられた建学の精神『この悩める時代の苦難に身をもって当たり、大慈悲心・大友愛心を身に負うて、社会の革新と進歩のために挺身する志の人を、この大学を中心として輩出させたいのであります。』(一部抜粋)を実現すべく、『ふくしのバトンを次世代へ』つなぐ機会になることを願っている。」と開催テーマにちなんだメッセージを送られました。
続いて、増田せつ子 日本福祉大学静岡県地域同窓会会長より、「静岡では、今回で3回目の社会福祉セミナーの開催となった。『ふくしのバトンを次世代へ』をテーマに、次世代を担う高校生の学習報告や、ロールモデルとなる同窓生の実践報告を通して、「Well-being for All」の実現につながることを願って企画した。本日のセミナーが、それぞれの分野で活躍される皆様にとっての一助のなることを期待している。」と挨拶をいただきました。
第Ⅰ部 記念講演「パラスポーツを通して考える共生社会」
日本パラリンピック委員会委員長、競泳金メダリストの河合純一氏をお迎えし、「パラスポーツを通して考える共生社会」と題してご講演いただきました。
河合氏はセミナー開催地、静岡県のご出身で、先天的な視覚障害があります。1992年のバルセロナパラリンピック以降、水泳で金メダル5個を含む21個のメダルを獲得されたアスリートで、東京2020パラリンピック競技大会からは日本パラリンピック委員会 委員長を務められています。
講演の冒頭、障がいの捉え方として車いすユーザーが階段を使用する場面を例にし、「障がいは個人の問題だけではなく、個人モデルであったり、医学モデルと考えることができます。社会が生み出しているもの。エレベーターやスロープなどの設置により、障害の影響は大きく軽減することができるため、障がいは個人にあるものではなく、社会が生み出しているもの」だと話されました。
続いて、パラリンピックの歴史と現状について、話されました。パラリンピックでは、4つの価値(勇気、強い意志、インスピレーション、公平)があります。特に公平は『多様性を認め、創意工夫すれば、誰もが同じスタートラインに立てることを気づかせる力』とされており、一般的な和訳の『平等』ではなく、あえて『公平』と標記しているとのこと。
「パラスポーツのゴールは、アスリートのパフォーマンスの場を作ることではなく、アスリートのパフォーマンスに触れることで、インクルーシブな社会を創出すること」だと力強く説明されました。
最後に、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)について、「この世界は多様なものだが、一人ひとりの基本的人権が尊重され、誰でも公平・公正に自分の意思で選択できる社会にするかどうかは、一人ひとりの小さな選択による結果の積み重ねである」とし、共生社会を実現するには、knowing(知る)→doing(行動する)→being(意識しなくてもできる)の3つのステップが存在する。「真の共生社会は、個性をすり潰して混ざり合うのではなく、共に生かしあえる社会」だと考えているため、本日お越しの皆さんとともに進んでいきたい」と講演を締めくくられました。
第Ⅱ部 高校生の(ふくし)探求・ 同窓生による実践発表
はじめに、静岡県出身の小松理佐子 副学長によるコーディネートのもと、3つの高校による「ふくし探求学習」発表を行いました。
高校生は今年4月から約半年かけて探究学習を行い、夏休みも返上して調査に取り組みました。
静岡県立富岳館高等学校による発表
富岳館高等学校のテーマは、『地域のためにできること~皆が健康で元気な100歳を迎えるには~』。地域寄り合い処(月1回開催)や認知症カフェ(年3回開催)の活動を通して、「利用者の方だけでなく、自分たちも楽しむことがとても重要だと気付いた」と発表しました。
また、今年度は「地域づくりのためにできること」をテーマに小学生とともに考えたり、管理栄養士の方から『食べること』を考える講習を受けるなど、多岐にわたる活動を報告しました。今後は相互学習や共同学習の実践、地域活動のユニバーサルデザイン化など、地域の「健康で元気に暮らす生活」を支える人材になりたいと、報告しました。
静岡女子高等学校による発表
静岡女子高等学校は、『障害者の学びと関わり』と題し、発表しました。はじめに、聴覚障害について簡単。「コミュニケーションを取るために必要なことは次の3つ、①相手に注目してもらうこと ②予め話す内容を伝えておくこと ③やや大きく、ゆっくりと単語で区切って話すことが重要」だとし、相手に寄り添った行動の重要性を訴えました。
続いて、障害者が置かれている一般的な問題や見られ方、偏見を持たれる原因として、「知らないが故に誤解したり、怖いという感情を抱かれてしまうことが問題。健常者と障害者だから違うという枠にはめて考えず、自分から相手を知ろうと思う気持ちで接してほしい」と話しました。
静岡県立駿河総合高等学校による発表
静岡県立駿河総合高等学校は、2つのテーマに分けて報告を行いました。はじめに、『障がいのある孤児・捨て児の保護問題についての調査』に関する報告を行いました。趣旨を説明した後、区役所と放課後等デイサービスを対象とし、アンケートとインタビューの2つの方法で調査を行いました。調査の結果、法律を複合的に理解して手続きすることの難しさや「親亡きあと問題」に関する認知度の低さを感じました。来年1月には学校で最終発表を行うため、自分の意見と区役所担当者の意見の比較やそこから見える課題のまとめを行い、考察していきたいと報告しました。
続いて、『発達障害(ASD)児との非言語的コミュニケーションの活用について』に関する報告を行いました。本研究では、放課後等デイサービスと児童発達支援事業所で2回にわたり直接インタビューを行い、仕事内容や支援中に気を付けることなどを計14項目にわたって質問。調査の結果、年代によって話し方や姿勢、介入方法を変えているということがわかりました。個別指導方法と年齢に応じた非言語コミュニケーションの重要性に気づき、非言語コミュニケーションの啓発ポスターの作成を行っていきたいと報告しました。
それぞれの高校からの発表に対し、本学学生は「高校生の視点でみる福祉の考えは新しく、とても参考になり、また刺激を受けました。春から福祉系の仕事に就くため、利用者の方や地域との対話を大切にしながら、何事も素直に学ぶ姿勢で頑張っていきたいと思います。」と感想を述べました。
同窓生による実践発表
高校生の発表に続き、三田 忠男氏(日本福祉大学同窓会 理事)によるコーディネートのもと、3名の同窓生による「実践発表」を行いました。
久保田 和宏 氏(社会福祉法人清承会 特別養護老人ホーム白扇閣施設長)
1993年度に社会福祉学部を卒業された久保田 和宏 氏より、『専門職の視点を生かした特別養護老人ホームの取り組み』と題し、実践報告をしていただきました。報告では、施設長を務める特別養護老人ホーム白扇閣で取り組んでいる人材確保・定着の取り組みや、職員がやりがいをもって業務に打ち込むことができるよう配慮すべき事柄などについて述べられました。
特に、モチベーション維持のため、昇給等の短期的となる『外発的動機付け』だけでなく、トップダウンではなく、現場からの提案が採用され、管理職・現場職を含めた全職員が価値観を共有し、同じ方向に向かって進むことができる『内発的動機付け』が大切だと話されました。
古橋 誠 氏(社会福祉法人子羊学園 浜松地区事業推進部長)
1989年度に社会福祉学部を卒業された古橋 誠 氏より、『静岡DWATにおける災害福祉支援活動』と題し、実践報告がありました。報告では、2017年より取り組まれている静岡DWATでのミッションや支援内容について、近年の豪雨や地震での活動実績を例に述べられました。
静岡DWATは2016年度の開設された静岡県内の福祉分野における公民協働の広域支援体制です。被災した市町村から静岡県が派遣要請を受けると、事務局がチームを編成して被災地へ派遣し、避難所や福祉避難所で支援活動を行う流れとなっています。
ミッションは避難所等への移動や生活での肉体的、精神的疲労による災害関連死を防ぐことで、近年の地震による災害関連死は東日本大震災で死者22,325人中3,647人(16.3%)、熊本地震で270人中220人(81.5%)となっており、とても重要な役割を担っています。「平時には出前講座や防災訓練も行っているので、ぜひ興味をもっていただきたい。」と話されました。
高橋 愛 氏(ヤマハ発動機株式会社 SPV事業部JWビジネス部部長)
2022年度に福祉経営学部を卒業された高橋 愛 氏より、『事業を通じた社会課題解決』と題し、実践報告がありました。報告では、「企業で働く中でなぜ精神保健福祉士(以下、PSW)をめざしたのか」「企業で働くPSWがどのように活躍しているのか」についてお話いただきました。
PSWの取得をめざそうとしたのは、特例子会社へ出向して障害を抱える社員とともに働くことがきっかけ。自治体等のPSWと交流する中で、企業内にもPSWが必要だと感じ、働きながら資格取得に励みました。
障害を抱える社員と働く中で、彼らができないことを明るく話すことから、「できないと言ってもよい、できるふりをしなくてよい」と学び、安全で安心な組織像が見えたとのこと。
「障害によってできないこともあるが、できることは人一倍すごい。得意なことと人をマッチングし、企業の成長を図っていきたい。」と話されました。
閉会挨拶
閉会に際し、奈良修三 日本福祉大学同窓会会長より、「現在、全国的に福祉系学部を募集停止する大学が増えている。福祉の仕事は大変というイメージが社会に定着する中、福祉に興味を持つ高校生や大学生がこのセミナーに参加してくれたことをとても嬉しく思っている。本学の同窓会は、進学相談に限らず、仕事や生活のことなど、ともに支え合うことができる素晴らしい組織なので、ぜひ積極的に活用していただきたい」と挨拶をいただきました。
続いて、藤元聖一 第36回日本福祉大学社会福祉セミナーin静岡 実行委員長より、「福祉経営学部卒業後、同窓会の温かい先輩方に囲まれ、静岡のふくしの歴史や実践について学んできた。今回のセミナーを通し、目の前の一人ひとりを大切にする『ふくし』の視点が、未来のふくしを担う若者や同じ志を持つ皆さんにお伝えすることができた。」と挨拶をいただきました。
最後に、濱本 義則 日本福祉大学鳥取県地域同窓会会長より、次年度開催地域の代表として「今回のセミナーは地元に縁のある講師やふくしの未来を担う若者が登壇するなど、とても魅力的な内容だった。このバトンをしっかりと受け取り、日本福祉大学の教育標語でもある『万人の福祉のために、真実と慈愛と献身を』に寄与できる企画を実現したい」と挨拶を述べられ、盛会のうちに閉会しました。