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日本語教育サミット『共生社会のための日本語教育』開催報告

レポート
2024年07月11日

6月21日(金)東海キャンパスで、『共生社会のための日本語教育』をテーマに、日本語教育サミットが開催されました。国際交流機関、地域で外国人の支援や子どもたちへの日本語教育支援にあたっている公的機関やNPO法人、日本語学校・日本語教室の関係者、大学院生、留学生の他、本学関係者など約80名が出席しました。

日本語教育センター主催で2019年から始めて4回目の開催となる「日本語教育サミット」ですが、今回は、学園創立70周年及び国際福祉開発学部を国際学部へと名称変更したことを記念しての開催となりました。

冒頭、カースティ祖父江 日本語教育センター長より「ベトナム・ハノイ大学の日本語学部から2名の先生をお迎えし、ベトナムにおける日本語教育や在日ベトナム人の子どもたちへの日本語教育支援の現状と課題をお話しいただきます。日本語教育や日本語教育支援のあり方について皆様と考える機会としたいと考えています。短い時間ですが、是非、参加者同士、横に繋がる交流の機会としていただきたい。」と挨拶がありました。

続いて、国際学部の佐藤慎一学部長より「2008年に国際福祉開発学部としてスタートして16年目のこの春、国際学部に名称変更をした。学部の学びの特徴は「外へ出て、体験から学ぶ」。ベトナムを始めアジアからの留学生も多数在籍し、日本人学生と一緒にユニークなプログラムを実施している」と、挨拶もかねて学部紹介がされました。

最初に『ベトナムの日本語教育の現状とこれから』をテーマに、ハノイ大学日本語学部副学部長グエン・ソン・ラン・アイン先生より基調講演をいただきました。

まず、ベトナムの日本語教育の歴史について触れられ、1950年代以前の萌芽期から始まり「蓄積期」「氷河期」「雪解け期」を経て「拡大期」となった2000年以降、日本語学習者や日本語教師、機関数が増加していった経緯についてデータに基づきお話されました。大学では日本語学部が設置されるようになり、中・高レベルでも日本語教育が行われているケースも増えている一方、コロナ禍や円安でここ数年学習者数に減少傾向もみられ、学習者のニーズをふまえた教育の質向上が課題になっている現状が述べられました。

続いて、ラン・アイン先生が取り組まれている『ピア活動』の実践についてお話がありました。ベトナムの高等教育も教師主導型の伝統的な教育・学習観から学習者主導型に変化してきており、ピア・ラーニングによる教育実践のケースを紹介。自律的な学習とピア活動の相互の連関によって、ベトナムにおける日本語教育の質向上の可能性を探求されている先生の研究の一端を伺うことができました。

参加者からは、ベトナムの大学・高校で目指されているレベルや、日本語を学んでいる人の就職先ニーズや、共生社会のために日本側が考えるべきことは何か等々多くの質問が寄せられました。「日本の大学に進学したいという意欲を持つベトナムの高校生は多い。そして日本語だけでなく+αで英語教育も受けたいというニーズも強い。また、研修生の数も急激に減少している現状もある。政府レベルでも環境整備の課題に取り組まれているが、学びたい側のニーズに基づいたさまざまな教育支援・プログラムの充実が必要」と答えられました。

続いて、ハノイ大学日本語学部准教授ディン・サオ・マイ先生より『在日ベトナム人の児童生徒への日本語教育支援(異文化の観点から)』と題して、実践報告が行われました。

2年間大阪の小学校に通ったこともある経歴と、ベトナム人の増加が日本の教育現場に与える影響について研究していることなど、自己紹介を交えてお話がスタートしました。最初にベトナム人増加の背景と、日常のコミュニケーションや地域社会との関りに留まらず、キャリア形成やアイデンティティの確立、孤立防止のためにも在日ベトナム人児童への日本語教育が重要だということについて、事例をあげて紹介。一方最適な日本語教育を提供することによって、①教育システムの向上 ②経済的メリット ③社会的メリット ④多文化共生の促進 ⑤教育政策への影響など、5項目において日本にもたらされるメリットも大きいことが、丁寧に説明されました。

しかし現状は、教材不足や不十分なカリキュラムや教師の専門性の問題、言語や文化の壁など、多くの課題があることを指摘。ベトナムから来日した3家族のケースを示して、それぞれ失敗・成功要因の分析を紹介されました。

こうした現状をふまえて、家庭内での積極的な日本語使用の支援をはじめ、教師の専門研修やバイリンガルアシスタントの配置、地域での相談窓口の設置や親の日本語教育支援等々、家庭と学校と地域社会のそれぞれに必要な施策について提案がされました。施策の前提として「アイデンティティの尊重のため、ベトナムの文化や言語も大切にしながら、バイリンガル教育を進めることが必要」と強調されました。

講演後、ベトナムにおける外国語教育の現状や日本文化に触れる機会についての質問や、実際に日本にいる子どもたちの学習時間の確保や保護者との情報共有のあり方など、外国にルーツを持つ子どもたちへの支援を行っている関係者から、マイ先生のご意見をお伺いしたいと質問が寄せられ、活発な議論が続きました。

終了後、ラン・アイン先生とマイ先生を囲んで国際学部のベトナムからの留学生と学生