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第17回福祉教育研究フォーラムを開催しました

レポート
2024年03月05日

2024年2月10日(土)「福祉の魅力を再発見 ー多種多様な福祉教育のかたちー」をテーマに、第17回福祉教育研究フォーラムを開催し、福祉系高校教員や学生など118名がご参加いただきました。

開会

原田 正樹 学長
原田 正樹 学長
 主催者を代表し、原田 正樹 学長が「高校・大学と7年にわたり、青年期に福祉を学ぶことはとても重要で、教育方法や魅力について考えるという本フォーラムは非常に意義があると考えている。不登校や退学者など、社会的孤立に陥る状況というのは年々深刻さを増している。自分がどう生きるかというだけではなく、他者をどう想うことができるのか考えることこそが、福祉教育の本質だと思うので、参加者の皆様とともに学びたい」と挨拶を述べました。
髙橋 秀親 氏(全国福祉高等学校長会 理事長、東奥学園高等学校 理事長)
髙橋 秀親 氏(全国福祉高等学校長会 理事長、東奥学園高等学校 理事長)
 続いて、髙橋 秀親 氏(全国福祉高等学校長会 理事長、東奥学園高等学校 理事長)から「超高齢社会の我が国にとって、福祉という領域と人材の重要性は年々増していると感じている。福祉に関する知識や経験を共有し学び合う本フォーラムの存在はとても大きい。本日はこの機会を通して、ご参加されている皆様から福祉に対する熱い想いを共有し、今後の活動に繋げていきたい」との力強いご挨拶をいただきました。 

第1部

対談「福祉の魅力を再発見」

「福祉の魅力を再発見」と題し、辻本 智加子 文部科学省初等中等教育局参事官(高校学校担当)付産業教育振興室教科調査官にご登壇いただき、福祉科教員時代に感じておられた福祉教育の課題や調査官として感じる課題などについてお話いただきました。
冒頭、商業科から福祉科の教員に異動した背景から、校内実習、施設実習やボランティアでの他者との関わりを通じて、相手の気持ちになって考える心を養う福祉教育の魅力についてお話いただきました。
 将来の予測が困難な時代ですが、教育こそが社会をけん引する駆動力の中核を担う営みであり、教科調査官になってから、政府はウェルビーイングの視点を重要視するようになっているように感じるそうです。教科調査官として、高校福祉教育は生徒がこれまでの学習を活かして、地域(高校・専門分野・地域住民)の架け橋になるための土台づくりをすることができる点に魅力がある。一方で、保護者世代の福祉に対するイメージが植え付けられ、福祉現場の最新のICT導入状況や労働環境といった改善が伝わらないため、直近10年間で福祉を学ぶ高校生が3,000名も減っている現状がある。また、労働生産力や人への投資がOECD加盟国の中でも下位にあるため、これまで以上に教育への投資を行う必要があると課題を提起しました。

 最後に、高校福祉教育に携わる先生方へのメッセージとして、①全国の熱意ある福祉教育・施設関係者とのネットワーク構築 ②他教科・業種の専門家との交流を通した情報感度の向上 ③一般教養としての福祉教育の重要性を発信することの3つを大切にし、明日の福祉人材の教育にご尽力いただきたいと締めくくられました。

辻本 智加子 氏(文部科学省初等中等教育局参事官(高校学校担当)付 産業教育振興室教科調査官)
辻本 智加子 氏(文部科学省初等中等教育局参事官(高校学校担当)付産業教育振興室教科調査官)
 参加者からは「地域のつながりに福祉教育をいかしている事例を紹介していただけたので、本校ではどのようなことができるだろうかと、具体的に考えるきっかけになった。福祉と他教科、他分野との繋がりの話しも参考になった。(高校教員)」「福祉を学んでいますが、自分にはまだ「福祉×〇〇」の〇〇が見つけられていないと気がついた。福祉をどこで活用できるのか、どのように組み合わせると、福祉の可能性が広がるのか、よく考えてみたいと感じた。(学生)」等のご意見をいただきました。

第2部シンポジウム

第1分科会「経験を重ねることによる心の視野の拡大~あなたと繋ぐ、地域と繋がる~」

はじめに、河西 博貴 氏(菊華高等学校教諭・一般社団法人地域福祉活動協会代表理事)より、一般社団法人設立の趣旨と経緯についてご紹介いただきました。コロナ禍で、地域の方にできることを生徒と一緒に考え、高校生の発想を大切にしながら健康サロンや企業と連携した詐欺被害防止啓発の取り組みなどについて報告されました。
続いて、生徒の気づきを広げる「心の視野」の考え方や、自治活動を通して実践しているリーダーの育成などについてご紹介されました。
その後、「各自が実践している内容に、さらに〇〇を掛け合わせて何ができるか」というテーマでグループワークを行い、「サークル×地域×SNS」「介護技術コンテスト×イオンモール×介護福祉士会」「大学生×高校生×授業」など多くの新たなアイデアが発表されました。
最後に、「一人ひとりのユニークな特徴さえ認識できれば、そこに特別な価値を生む可能性がある。生徒が協動したことによる「気づき」を大切にし、一歩踏み出すサポートを通して、生徒のカッコいい姿を発信していきたい」と締めくくられました。

河西 博貴 氏(菊華高等学校教諭・一般社団法人地域福祉活動協会代表理事)
河西 博貴 氏(菊華高等学校教諭・一般社団法人地域福祉活動協会代表理事)
 参加者からは「様々な学校の先生方が評価について大変苦労されていること、そして、自分の評価の根拠や軸が少し弱いと感じた。基準をもっと明確に設定したい。(高校教員)」「企業と連携した取り組みを知ることができた。高校生のやりたいことに焦点を当てる大切さを改めて実感した。(学生)」等のご意見をいただきました。

第2分科会「主役はあなた!みんなでつくる観点別評価!」

 はじめに角谷 道夫 氏(三重県立みえ夢学園教諭)より、観点別評価が求められる背景として、テクノロジーの進化や社会の変化を例に出し、時代の変化にも対応できるよう、生徒は学習改善を、教員は授業改善のための観点別評価が必要であると説明しました。
 その後、現在行っている観点別評価とそれによって育まれる能力や資質を改めて考えて、グループで共有し、グループごとのオリジナル観点別評価を作成しました。
 最後に辻本調査官はご自身の授業における評価の方法として、『生徒とともに評価をつくる』という実践例を話され、学びを深めました。

角谷 道夫 氏(三重県立みえ夢学園教諭)
角谷 道夫 氏(三重県立みえ夢学園教諭)
 参加者からは「先生方の実践していることと自分がやってみたいことがつながることがあったり、どうしたら実現できるのか、アイデアがいただけて勉強になった。実践していきたい。(高校教員)」「観点別で評価するべきなのか、考えるきっかけとなった。本当に評価は必要なのか、評価があってその人を知ることができる面はどこか、今後の課題としていきたい。(学生)」等のご意見をいただきました。

第3分科会「福祉の魅力発見~次世代につなげていく価値を探る~」

 はじめに、講師を務めた立松 知美 氏と前田 拓 氏(名古屋市立西陵高等学校教諭)より、福祉を身近なものだと意識するようになったきっかけや授業を組み立てる上で大切にしている要素、福祉を教えられる『生徒側』として感じていたこと、『教える』側になってから考えていることなど、多岐にわたる内容についてご紹介いただきました。
 その後、「あなたの好きなもの×福祉」について、グループワークを行いました。コメンテーターを務めた本学社会福祉学部の小林 洋司 准教授は、「学校には労働と仕事、活動の3つの要素が複雑に絡んでいる。この複雑な関係性こそが永遠の課題であり、追い求めるに値する悩み。本日の学びがそれぞれの価値を考え、整理する時間になればありがたい」と締めくくられました。

立松 知美 氏と前田 拓 氏
立松 知美 氏と前田 拓 氏
 参加者からは「楽しむことは魅力につながるし、今の福祉業界にはそれが必要だと感じる。自分も生徒も地域の人も楽しめるような授業にチャレンジする勇気をもらえた。(福祉系高校教員)」や「高校で福祉を学んだ方々がそれぞれのお仕事に福祉を活かしている姿を見て、勇気が出た。また、生徒たちが主体的に学ぶには「やりたい」を大切にしたり、楽しさを引き出すことがポイントだと分かった。(学生)」等のご意見をいただきました。

閉会

兵藤 直人 氏(愛知県高等学校福祉教育研究会 会長・愛知県立古知野高等学校 校長)
兵藤 直人 氏
(愛知県高等学校福祉教育研究会 会長・愛知県立古知野高等学校 校長)
 最後に閉会挨拶として、兵藤 直人 氏(愛知県高等学校福祉教育研究会 会長・愛知県立古知野高等学校 校長)より、「本日は福祉について改めて考えたり、日々の実践に役立つ内容を学ぶことができた。参加者の皆さんにはぜひ学校でも学んだ内容を還元していただきたい。」とご挨拶いただきました。
松本 徳一 氏(三重県高等学校福祉教育研究会会長・三重県立伊賀白鳳高等学校 校長)
松本 徳一 氏
(三重県高等学校福祉教育研究会会長・三重県立伊賀白鳳高等学校 校長)
 松本 徳一 氏(三重県高等学校福祉教育研究会会長・三重県立伊賀白鳳高等学校 校長)からは、「福祉は人と人、心と心を結ぶものであることを再確認できた。今回のフォーラムを通して、全国の方と意見交流ができ、大変参考になった。日々の授業の中で、本日の学びを活かしていただきたい」とのご挨拶をいただき、本フォーラムを締めくくられました。