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日本福祉大学金沢セミナーを開催しました

レポート
2023年08月31日

日本福祉大学後援会は、全国各地にて日本福祉大学セミナーを開催しております。
7月16日(日)にTKPガーデンシティPREMIUM金沢駅西口において日本福祉大学セミナー(金沢会場)をハイブリッド形式で開催しました。

野尻教授による講演

内容 時間
日本福祉大学金沢セミナー
テーマ:『ヤングケアラー ~見過ごされた子どもたち~』

講師:野尻 紀恵 社会福祉学部 社会福祉学科 教授、学長補佐
13:00~14:00
大学近況報告・就職状況報告 14:10~15:00
保護者個別懇談会 15:10~16:30
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最初に講演テーマに繋がる野尻先生ご自身の経歴を話されました。大学教員になる前の私立高校教員の時に阪神大震災で生徒を亡くしたこと、ヤングケアラーと思われる生徒に対しても当時はSSW(スクールソーシャルワーカー)制度等はなく、担任が励ますことしかできない状況だったこと。その後、社会福祉士を取得してSSWとなり、同時に研究の道に進んだこと、現在も大学での教育以外に現場に出続け、学生と共に子ども食堂を開催するなど、実践・研究の話がされました。
その後、以下の事例について体験も交えつつ説明していきました。

  • 障害当事者の体験を高校生にさせたことがあるが、一人ひとり状況が違うため、健常者でよかったと思わせるだけの擬似体験だけでは意味がない。
  • 介護殺人やヤングケアラーによる家族殺害の事例では、当事者だけではどうすることもできない社会構造の問題をはらんでいること。
  • 愛知県で年代別にヤングケアラーの調査を実施したところ、兄弟の世話が最も多く、次いで母の世話が多いとの結果であった。
  • 家族の手伝いとケアラーの違いは、やってほしいと言われることの量と質。保護者も本人も当然のこととして周りに言い出せなくなるため、いつの間にか過重にケアを負担するケアラーになることが起きてしまう。
  • 元ヤングケアラーに調査すると、「社会サービスを知らなかった」、「家族の世話をするのは当然のことで、疑問にも思わなかった」などの意見が寄せられた。
  • ヤングケアラーの子どもは愛護される権利を剥奪されたり、子ども時代の豊かな体験が奪われ、考え方が偏ったり、未来の選択肢が奪われることも少なくない。
  • ヤングケアラーは18歳までを指すが、18歳でケアが終わるわけではなく、その後も家族の世話があることで就業や人生に影響を及ぼすケースも少なくない。
  • 国はヤングケアラー支援のため、4つの支援策(早期発見、相談支援、家事育児支援、介護サービスの提供)を示した。しかし、個々のケースでの違いが多く、また関係性が築けていないと支援までつながらないため、まだ制度として上手く回っているとは言えない状況である。

その後、実際に起きたヤングケアラーのケースを説明し、「仕方ない」を「仕方ない」のままにしておかないため、何を基にして考えるか、知る努力が必要で、おせっかいと言われても積極的に関わる姿勢が大切であると話されました。

参加者からは「資料がわかりやすく、事例も具体的で、介入の必要性やこれからの課題について考えさせられた。」、「実体験を交え、エビデンスをもってお話ししてくださり、非常にわかりやすく理解ができました。」、「先生の熱量に圧倒されました。阪神大震災から今日まで現場や研究者として精進されている様子が十二分に伝わってきました。」、「興味深い講義を聞けて良かった。もっと長く聞きたかった。」などの感想が寄せられました。

講演会終了後、引き続き野尻先生が学長補佐の立場で、大学近況報告として、大学重点課題、学園創立70周年、研究の取り組み、学内行事や学生諸活動の様子、学部長メッセージ等について紹介しました。
最後に2022年度卒業生の就職状況および大学で行っている就職支援について紹介しました。