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第14回福祉教育研究フォーラムを開催しました

レポート
2021年02月26日

 2021年2月13日(土)オンライン(Zoom)で、「第14回福祉教育研究フォーラム」を開催し、全国各地の社会福祉協議会職員や福祉系高校教員を中心に約150名が参加(180名が申込)しました。

※申込者一覧および地域別出席者データ
職種 申込者数(名)
高校教員(福祉科) 34
高校教員(総合学科) 10
高校教員(その他) 5
大学生 15
高校生 4
専門学生 2
大学院生 1
一般 5
専門学校教員 4
施設・社会福祉法人職員 6
社会福祉協議会 55
教育委員会職員 2
大学教員 18
特別支援学校教員 1
その他 1
実行委員 17
180
 
地方別 申込者数(名)
北海道 5
関東 38
中部 80
関西 30
中国 12
四国 2
九州・沖縄 13
180

開会

 主催者を代表し児玉 善郎 氏(本学学長)が「コロナ禍でも高校・大学が連携し、福祉を担う人材の育成は重要な課題。本フォーラムでの学びをそれぞれの職種で活かしていただきたい」と挨拶されました。

 続いて清水 豊 氏(三重県高等学校福祉教育研究会会長・三重県立朝明高等学校校長)より、「高校の福祉教育の中でも特に重要な学びの1つである施設等での実習がコロナ禍により中止となり、代替措置への対応に工夫を重ねられたことと思う。また、人と人との関わりの中で育まれる福祉マインドをどのように養成していくか、という課題にもご苦労されたのではないか。本日はコロナ禍での福祉教育についてたくさんのヒントを得ていただきたい」とご挨拶いただきました。

清水 豊 氏(三重県高等学校福祉研究会会長・三重県立朝明高等学校長)

第1部シンポジウム「青年期の福祉教育の学びを考える」

 福祉マインドをどのように発揮しているのかについて、青年期の福祉教育の学びの振り返りつつ、3名の福祉専門職からそれぞれ以下のようにお話いただきました。

山岸 心 さん(社会福祉法人みなと福祉会)

<進路選択の経緯と理由>

高校在学中、社会福祉協議会の方の授業やボランティア団体での活動(子どもが行うボランティア活動のサポート)が強く印象に残っている。当時は進学に前向きではなかったが、教員に進学を勧められて日本福祉大学に進学、現在は相談職として勤務。

<学生時代の学びが仕事にどのように活かされているのか>

本学在学中に参加したドミノ企画(中京テレビ)を通して、1つの物事は裏方を含め多くの人の協力があって成り立っていると学んだ。それは福祉おいても変わらないと感じている。
現在は知的障害者(重度)支援の担当をしており、言葉の選び方や声のトーン・速さ・伝え方など、利用者1人ひとりに合わせたコミュニケーションによって心を通わせることができると学んだ。利用者の方の本心を引き出し、正しい行動につながるよう支援することを課題とし、日々の業務に取り組んでおり、利用者の方やそのご家族からの感謝の言葉や施設での思い出を聞くことでやりがいと喜びを感じる。

<後輩や高校時代の自分へのアドバイス>

何事でも楽しんで、自分が感じたように行動することが重要。福祉の仕事はきれいなことだけではない。どんなことであっても、自分が楽しんで取り組んだことは社会人になってからの糧になると伝えたい。

<今後の目標・抱負>

4年間現場で働く中で、利用者と接することが何よりも楽しいと感じている。現場をマネジメントできるよう、運営業務や行政との関わり方について学んでいきたい。

石川 幸絵 さん(社会福祉法人昭徳会 特別養護老人ホーム安立荘)

<進路選択の経緯と理由>

高校在学中、文化祭での手話体験や施設(障害者・保育園・高齢者)での実習ボランティア体験を通して、当事者1人ひとりに対する対応の難しさや工夫の必要性について学んだ。当初は資格を使って就職しようと考えていたが、途中でスポーツに携わる仕事をしたいと思うようになり大学に進学。現在は介護職として勤務している。

<学生時代の学びが仕事にどのように活かされているのか>

高校在学中、施設実習や利用者の方と関わった経験や大学時代に学んだジェスチャー等が、利用者の方とのコミュニケーションに役立っており、利用者の方からの感謝の言葉をいただくことに喜びを感じている。

<後輩や高校時代の自分へのアドバイス>

学生時代、遊ぶことだけでなく勉強ももう少し頑張ればよかったと後悔している。大学では福祉ではなくスポーツを専攻していたが、在学中の経験も介護職につながっているため、遠回りにはなったが後悔はしていないと伝えたい。

<今後の目標・抱負>

入職から1年弱が経過し業務には慣れてきた。今後は業務上の知識を習得するため、介護福祉士の資格勉強に励みたい。

佐竹 名菜 さん(千葉県立大原高校教諭)

<進路選択の経緯と理由>

高校入学時は看護師を志していたが、在学中に福祉科教員に憧れるようになり日本福祉大学に進学。現在は福祉系高校教員として勤務。

<学生時代の学びが仕事にどのように活かされているのか>

試験勉強や実習では辛いと感じることも多々あったが、それを乗り越えた経験が現在に繋がっている。
生徒が現場に出た際、資格の有無に関わらずプロとして仕事できるよう、座学だけでは習得できない知識や経験も伝えながら指導していきたい。
“福祉の面白さ”を伝えることにより、福祉職の就職を希望していなかった生徒が前向きな気持ちで就職してくれていることや、社会福祉士資格に関する質問を受けることが嬉しい。

<後輩や高校時代の自分へのアドバイス>

大学在学中、恩師から「教員の仕事は8割が大変だが、残りの2割に楽しさややりがいを感じて続けられるもの」と言われた。「憧れだった仕事をしているが、教員採用試験の勉強より仕事を始めるようになってからの方が大変」と伝えたい。

<今後の目標・抱負>

生徒が現場に出た際、資格の有無に関わらずプロとして仕事できるよう、座学だけでは習得できないことも伝えながら指導していきたい。

矢幅先生ご講評

 3名の報告後、矢幅 清司 文部科学省初等中等教育局視学官より「高校時代から『福祉』に触れていたことで、3名とも人として成長されたのではないかと思う。経験不足は前向きに捉え、足りない部分は補い、新しいことにチャレンジしようとすることが大切だとメッセージをいただいたように感じる。福祉人材の育成にも参考になるシンポジウムだったとご講評いただきました。

 その後、小中高の学習の核となる学習指導要領において、小学校では『高齢者や障害者との触れ合い』、中学校では『介護』、高校では新科目『公共』内で社会システムの中の福祉を、『家庭科』内で家庭中の介護と実技の学習がそれぞれ位置付けられ、学生時代に必ず福祉教育を受けることとなる。
 教員自らが福祉・介護を教える力を身に着けるのは当然だが、地域の福祉専門職のお力もぜひ学校教育の中にも活かしていただき、この分野への興味や就業意欲を高めていきたい。
 福祉教育=専門職養成と考えやすいが、ベースには、当たり前の市民教育としての福祉教育があり、その上で専門職養成に繋がると考えている。また、専門職ではなくても、1人ひとりが福祉や福祉教育の支援者であり、市民の一員として地域でどのように生きていくのか考える必要があるように思う。
 福祉教育が広く、当たり前に生活の中核として位置づけられていくことを願っている。」とコメントをいただきました。

 最後にコーディネーターの小林 洋司 本学社会福祉学部准教授より、「3名の登壇者の報告から7年間の福祉の学びが楽しく、そして意義深いものであったとわかる。また、進路を決めるにあたって、実習やボランティア経験が大きなきっかけとなっており、コロナ禍で福祉専門職に就きたいと考えるようなきっかけが奪われている。本日のフォーラムを通して、福祉の学びが広がることを願っている。」と第1部シンポジウムを締めくくりました。
 参加者からは「福祉系高校の卒業生が、大学での学びを就職にどう生かすことができるのか知ることができました。また高校時代の印象に残っている学びについて知ることができ、とても参考になりました。」「3名の方のお話しを聞く事ができ、高校や大学での学び・出会いが大切である事や福祉を学んでよかったという気持ちが伝わり、自身のモチベーションに繋がりました。」等の意見をいただきました。

写真左上より、①小林 洋司 氏(本学社会福祉学部准教授)、②矢幅 清司 氏(文部科学省初等中等教育局視学官)、③佐竹 名菜 氏(千葉県立大原高校教諭)、④山岸 心 氏(社会福祉法人みなと福祉会)、⑤石川 幸絵 氏(社会福祉法人昭徳会 特別養護老人ホーム 安立荘)

第2部ブレイクアウトセッション「コロナ禍における福祉教育実践~実習・演習を中心に~」

 「コロナ禍における実習・演習を中心とした教育の在り方」をテーマに、1グループ6名程度(全26グループ)に分かれ、以下の2点について話し合いました。
 ※グループは地方ごとに分け、様々な職種の方をバランスよく配置

①コロナ禍における実習・演習・課外活動の実態

  • 高校や大学における実習、社協主催のイベントやボランティア活動が制限された
      (一部地域によっては施設に入館基準を設けて実施したケースも報告)
  • オンラインで施設見学を実施
  • 施設での実習が中止となり、大切な現場経験ができなかったことに戸惑いを覚えたが、学生自身が考えて取り組む実習を校内で実施したことで、新たな学びができた
  • 小規模でのボランティア活動や生活に困窮された方への食料配布、ドライブスルー方式でのプレゼント配布など、出来る範囲での活動に取り組んだ
  • 実習等の実施は難しく、外部のゲスト教員を招いての授業を行った

②制限された教育・課外活動に対する工夫や悩み

  • 高校ではオンラインで施設と繋がり、介護過程のアセスメントを学ぶ授業の実践を行った
  • 社協では従来子どもたちと共に行っていた配食サービスの方法を一部変更し、子どもたちが事前に用意した手紙をお弁当に同封するなど独自の取り組みが話し合われた
  • 社会福祉協議会と福祉系高校がタイアップして高校生が手作りマスクを作ったり、一人暮らしの高齢者にメッセージカードを作成して配布を行う等、対面以外の方法で出来ることを考えて行った。
  • ボランティア活動を行っていただく際には体調を伺ったり、対面で受けられない講義はオンラインで行うなど、それぞれ工夫して実施した。やはり学生にとって実習はとても大きな経験になるため今後コロナの状況も踏まえて実施していきたい。

※各グループでの議論内容はこちら新しいタブでPDFを開きます からご確認ください。

 その後、矢幅 清司 氏(文部科学省初等中等教育局視学官)から、コロナ禍での高校における職業教育や福祉系高校の状況と取り組み等、多岐にわたる内容についてご説明いただきました。

 初めに厚生労働省・文部科学省の連名で通知された文書について確認が行われ、施設実習の代替措置として校内実習を行った場合の留意点(①知識と技能が習得できる内容であれば校内実習での代替を認める ②教員介護実習は年度を越えての実施でもよい)についてご説明いただきました。

 次に、全国に先駆けてオンライン施設実習を行った高校の事例紹介(オンライン実習や県外施設との交流)やスマート専門高校(最先端のデジタル化に対応した産業教育装置の整備)実現に向けた文部科学省の補正予算についても触れられました。

 最後に、社会福祉協議会や施設の職員に向けて福祉系高校の定義や基礎データ、実態データについて報告されました。

 参加者からは「参加者はそれぞれでしたが、コロナ禍で日々工夫しながら、学びを止めないための授業や機会を作られており、今後の取り組みの課題等情報交換ができてよかったです。」「日常では出会えない他県の方や他職種の方と福祉教育についての話や情報交換は勿論、自分自身の疑問へのヒントや解決につながりました。意義深い時間を過ごさせていただきました。」等のご意見をいただきました。

矢幅 清司 氏(文部科学省初等中等教育局視学官)

第3部基調報告「ソーシャルワーク資格のカリキュラム改訂が求めること」

 道念 由紀 氏(厚生労働省社会・援護局 総務課社会福祉専門官)より、以下についてご報告いただきました。

<社会福祉士カリキュラム改訂の概略>

  • 業務:高齢分野や障害分野、児童分野、司法領域、学校等での広範囲で対象者が抱える課題やニーズに応じて、養成課程で習得したソーシャルワーク技法を用いて相談援助を中心に実践する
  • 教育内容の見直しの背景:社会経済状況の変化により、ニーズが多様化・複雑化し、既存の制度では対応が難しい課題が顕在化。また、全ての人が地域・暮らし・生きがいを共に創り高め合うことができる『地域共生社会』の実現を目指すため、社会福祉士にはソーシャルワークの機能を発揮し、制度横断的な課題への対応や必要な社会資源の開発といった役割を担うことができる実践力が求められている
  • 教育内容の見直しの目的:地域共生社会の実現に向けて求められる社会福祉士が担うべき役割を理解し、多機関の協働による包括的な相談支援体制の仕組み等の知識を習得する

<精神保健福祉士カリキュラム改訂の概略>

  • 精神保健福祉士の定義:精神障害の医療を受ける者、または精神障害者の社会復帰を目的とする施設を利用する者の地域相談支援の利用に関する相談、その他の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練、その他の援助を行う
  • 現在求められる役割:精神疾患や障害によって医療を受けている者に加え、社会生活の支援を必要とする者、潜在的にメンタルヘルスの問題を抱える者への相談援助及び精神保健の保持・増進に係る活動
  • カリキュラム見直しの背景:求められる役割や配置・就労状況の拡大が問題視されており、地域強化検討委員会では、制度横断的な知識を有し、アセスメントの力、支援計画の策定・評価、関係者の連携・調整・資源開発までできるような、包括的な相談支援を担うことができる人材育成に取り組むべき、と指摘を受けた

<地域共生社会>

  • 「地域共生社会」とは:全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができ、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地域コミュニティの育成すること。また、地域の公的サービスと協働して助け合いながら、自分らしく暮らすことができる仕組みの構築を兼ね備えた社会。
  • 「地域共生社会」の成り立ち:2つの側面(①全ての人の生活の基盤としての地域 ②全ての社会・経済活動の基盤としての地域)と2つの循環(①支え・支えられる関係の循環 ②地域における人と資源の循環)を持ち併せており、これらを円滑に回すことによって、地域住民一人ひとりの暮らしや生きがいが創出される
  • 【事例紹介】要介護の高齢者が子ども食堂の食事作りボランティアを行っているケース 「支援の受け手に回ることが多い高齢者が、ボランティアを通して支え手に回るという循環によって、暮らしや生きがいが創出されるとともに、地域の中での担い手にもなる。その結果として、地域のつながりが構築される
  • 地域共生社会の実現が求められるようになった理由:日本の社会保障は、ライフステージにおける様々なリスクや課題を想定し、その解決策を目的として作られ発展してきた。社会福祉の分野でも属性別や対象者別の制度が発展し、専門的な支援が提供されるようになったが、個人や世帯が抱える生きづらさやリスクが複雑化・多様化しており、制度下での支援対応に苦慮している実態がある。
  • 対人支援において今後求められるもの:従来の具体的な課題解決を目指すことに加え、対象者とつながり続けることも重要となる
  • 改正社会福祉法で新たに設けられた「重層的支援体制整備事業」とは:相談支援・参加支援・地域づくりに向けた支援の3つを一体として取り組むもの。相談機関は世帯全体に関する複合的な課題を受け止め、スピーディーな支援を提供でき、結果として課題が深刻化する前に立て直す見通しを立てることができるようになった。

 「現代において『福祉』とは、ある特定の領域で特定の課題を持った方に対する支援ではなく、広く地域住民を対象とした身近なものとなっている。
 地域には多様な住民が様々な課題を抱えて生活している。課題を抱える住民に対する興味や関心、温かいまなざしを育むことができるよう、周囲に働きかけていただきたい。地域の中で住民が知り合い、そして学び合うプラットフォームの1つに高校をはじめとする教育現場がなっていただき、つながる福祉教育の中でより深く福祉を学びたいという生徒や学生が現れることを願っている。
 コロナ禍で教育現場には負担がかかっているが、この苦難を乗り越え、より良い社会づくりに寄与する人材を育成するため、引き続きご協力いただきたい」と締めくくられました。
 参加者からは、「時間数や科目内容の変更だけではなく、改定の背景を理解することができた。参考になる話を聞けてありがたかった。」「『地域共生社会』についての考え方を深く聞くことができ、授業にも繋げられると感じました。社会福祉士を取得している教員が多い事もあり、生徒もその分野に興味を持ってくれることが多いと考えています。しかし、私が取得したときからは時間が経過しており、生徒に聞かれても答えられないことがあり、キャリアガイダンスの点でも本日の講義は大変参考になりました。カリキュラムに関して大学の先生からの意見も伺ってみたいと感じました。」等のご意見をいただきました。

写真左より、原田 正樹 氏(本学副学長)と道念 由紀 氏 (厚生労働省 社会・援護局 総務課 社会福祉専門官)

閉会

 はじめに、奥山 眞壽美 氏(全国福祉高等学校長会副理事長・千葉県立松戸向陽高等学校長)から「高校と大学で学んだ福祉教育がどのようにして仕事につながっているのか考える機会となった。また、全国各地の皆さんと議論を交わすことができ、意義深い時間となった」とのご意見をいただきました。
 最後に閉会挨拶として山崎 博司 氏(愛知県高等学校福祉教育研究会会長・愛知県立高浜高等学校長)より、「本フォーラムを通して専門的な情報を得るだけでなく、県内外の福祉専門職との情報交換を通して視野の広がりや福祉専門職とのつながりを感じることができた」とのご挨拶をいただき、本フォーラムを締めくくられました。

奥山 眞壽美 氏(全国福祉高等学校長会副理事長・千葉県立松戸向陽高等学校長)
山崎 博司 氏(愛知県高等学校福祉教育研究会会長・愛知県立高浜高等学校長)