学園・大学案内 お知らせ

トップページ 学園・大学案内 学園・大学案内 お知らせ 第13回福祉教育研究フォーラムを開催しました

 

第13回福祉教育研究フォーラムを開催しました

レポート
2020年02月28日

2020年2月1日(土)日本福祉大学東海キャンパスで、「第13回福祉教育研究フォーラム」を開催し、全国各地から福祉系高校教員を中心に約100名の参加がありました。
冒頭、主催者を代表し本学学長の児玉善郎先生より「高齢化が急速に進む中、地域共生社会を支える人材育成の取り組みについて、福祉系高校と大学が連携していくことが重要。本フォーラムでの学びを今後に活かしていただきたい」との挨拶がありました。

挨拶をする児玉善郎学長

初めに「青年期の福祉の学び ~福祉系高校への期待~」と題し、本学客員教授で日本社会事業大学元学長の大橋謙策先生にご登壇いただきました。
まず、導入として福祉教育とは「社会福祉問題を素材とした学習を通し、人々を疎外することなく問題解決する実践力を身につけることを目的とした意図的な活動であり、高齢化問題対応のための教育ではない。」とお話しされました。
また、教育学の在り方について「教科書を教えるのか」―「教科書で教えるのか」という「教育学」のお話の中では、「現場での教育として、原論ではなく概論の指導に止まっているのではないか」とご指摘されました。
最後に、「社会福祉実習では福祉サービス利用者へのケアを通し、技術だけでなく自らが成長できるような機会としてほしい」とのお言葉で基調講演を締めくくられました。

基調講演中の大橋謙策先生

続いて「福祉系高校の教員として」と題し、3名の高校教員にご登壇いただくシンポジウムを開催しました。まず初めに愛知県立一宮北高校の安藤政代先生にご登壇いただきました。一宮北高校では福祉実践コース担当として3学年を指導され、年間9回もの校外体験学習を実施されています。内1回は本学の学生が一宮北高校で、「高校と大学の学びの違い」について講義をしています。
教壇に立つ際には「目の前の生徒に対し何をしてあげられるのか」を大切にされており、自ら考え周りに伝えることができる力を伸ばすため、ディスカッションを積極的に取り入れているとお話しされました。
次に名古屋市西陵高校の茶木正幸先生にご登壇いただきました。「思考」と「試行」の積み重ねで福祉教育の質が決まるため、授業では「何を伝えるのか意識すると同時に、何を伝えないようにするのか」という点を大切にされています。今後も与える情報をあえて限定し、自ら考える習慣を付けさせるため「きっかけ」の種まきを続けていきたいと締めくくられました。
最後に三重県立伊賀白鳳高校の鈴木幹治先生にご登壇いただきました。初めに赴任した高校では2年目から学科主任を務め、定員割れを経験されました。定員割れを防ぐために豊かな学校生活や中学生から魅力的に見える校風づくりを心掛けられました。
また、高校福祉科は高校同士の結びつきが強くないため、情報交換の場が不足しています。有志による福祉に関するHP作成や各種研修会でのつながりを強め、教科「福祉」を盛り上げていきたいと締めくくられました。
その後、文部科学省初等中等教育局視学官の矢幅清司先生と本学社会福祉学部准教授の小林洋司先生を交え、5名でシンポジウムを開催しました。
「福祉を教える上での面白いこと・難しいこと」というテーマでは、「生徒の意見を受け、次にどのように繋げるのか」という意見や「教育学の原理を教えること」という意見があり、大橋先生の基調講演を引き合いに出しながら、原理を共有することの大切さについて認識を深めました。また、「生徒や地域の方から教えられることは」というテーマでは、「どんな時でも気丈に振る舞うことが大切」という意見や「世代を超えた意見交換が大切」という意見が出され、このテーマについてはフォーラム終了後の情報交換会で議論が行われました。
最後に矢幅先生から「教員は博識であり、学問の面白さを伝える姿勢が重要。高校生は少しのきっかけで大きく化ける。きっかけの種をまく努力が必要」と締めくくられました。

シンポジウムにご登壇された先生方

次に鼎談「福祉系高校の使命」と題し、語り手として大橋謙策先生と矢幅清司先生に、聞き手として本学副学長の原田正樹先生にご登壇いただきました。
鼎談では福祉科設立の経緯が家庭科の定員割れに対する救済措置だった、というお話や福祉教育への想いなど多岐にわたるお話をいただきました。福祉教育は「高齢化問題対応のための学科という見方や非行対策のための教育とみられたりするが、工学や情報科学との連携など学問として幅が広いため、未来ある高校生にぜひこの面白さを伝えてほしい」とのメッセージがありました。
また、資格に対する考え方に対するお話しでは、「福祉系大学では資格を重視しすぎている。制度を教えることも重要だが、福祉教育を行う意味を考える必要がある」とご指摘されました。
「本フォーラムは高校教員とともに作り上げることに意味がある。今後はこの取り組みを更に大きなものとし、他大学も巻き込んでいけたら」と原田先生が締めくくりました。

鼎談中の先生方

最後に「福祉系高校のこれから」と題し、今年度をもって文部科学省初等中等教育局視学官を定年ご退官される矢幅清司先生に最終講義をいただきました。
導入として、我が国が近い未来に直面する状況(生産年齢人口は半分にあるが、寿命が飛躍的に伸びる社会)において、求められる能力(答えのない課題に最善解を導くことができる能力、分野横断的な幅広い知識・俯瞰力等)についてお話いただきました。
次に教育の現状について学習到達度調査からの分析をもとにご説明いただき、今後の課題として「感性と創造性により新たな付加価値を生み出す力」や「情報社会に主体的に対応していく力」の育成が必要となるため、知識や技術の習得にとどまらず、主体性を育むことが重要であると言及されました。
その後、福祉系高校の設置状況や国家試験、学習指導要領等について資料や動画も交えながらお話しいただきました。
最後に天皇陛下の手術を執刀された天野篤医師の言葉を引用し、「覚悟をもって教壇に立ってほしい」と力強いメッセージで締めくくられました。

最終講義中の矢幅清司先生
最終講義を終え、花束を贈呈される矢幅清司先生
閉会後、情報交換会にご出席いただいた皆さんと記念写真