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第12回福祉教育研究フォーラム「福祉教育の質的な向上をめざしてー豊かな教育内容をつくるー」を開催しました
1.開会 | 10:00~10:15 |
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2.分科会 | 10:15~12:15 |
■第1分科会(会場:S301教室) 「社会問題をどのように教材化していくか」ワークショップ) |
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■第2分科会(会場:S302教室) 「福祉教育実践者の後進育成」(シンポジウム) |
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■第3分科会(会場:S303教室) 「進路指導を通して福祉の魅力をどのように伝えるのか」(実践報告会) |
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3.ランチタイム | 12:15~13:15 |
4.シンポジウム | 13:15~15:00 (会場:S304教室) 「今日の福祉の現状をどう伝えるか」 |
5.総括講演 | 15:15~16:30 (会場:S304教室) 「福祉系高等学校の教育の質をどう高め、教育内容を豊かにしていくか」 |
開催概要
福祉教育研究フォーラムは2007年に第1回が開催され、それ以降毎年、東海地区を中心に全国から教育関係者が集まり、福祉教育の現場が抱える問題と課題について議論を深めてきました。
今回で12回目の節目となる本フォーラムは、「福祉教育の質的な向上をめざしてー豊かな教育内容をつくるー」をテーマに開催2月9日(土)、本学東海キャンパスで開催され、福祉系高等学校教諭や福祉系大学教職員、学生らを中心に105人が参加しました。
主催者挨拶
挨拶 | 児玉 善郎 氏(日本福祉大学学長) 岩田 政久 氏(愛知県高等学校福祉教育研究会会長・愛知県立海翔高等学校校長) 大久保 克彦 氏(三重県高等学校福祉教育研究会会長・三重県立明野高等学校校長) |
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分科会
第1分科会
「社会問題をどのように教材化していくか」(ワークショップ)
講義 | 遠藤 健司 氏(中日新聞社 NIE事務局長) 川口 永理 氏(愛知県総合教育センター 研究部 経営研究室 研究指導主事) |
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進行 | 岩城 令佳 氏(愛知県立古知野高等学校 教諭) 安藤 政代 氏(愛知県立一宮北高等学校 教諭) 橋本 宏恵 氏(愛知県立杏和高等学校 教諭) |
中日新聞社NIE事務局長遠藤健司先生より、新聞ができるまでのプロセスや取材をする上で大切なこと、その上で新聞の役割とは何かについてご講義いただきました。毎日発行される新聞は大体300程度の記事が掲載されているが、新聞社に寄せられる記事情報の数は7000を超えるとのことです。取材はより事実に近づくための努力であり、情報をいかに素早く正確に伝えることができるかが新聞の役割です。その分、新聞はその記事に対して最も重要な視点しか述べられていないため、その記事にまつわる背景等が書かれていないことが多く授業等では使いづらいかもしれないとの解説もありました。
その後、遠藤先生のご説明を踏まえ、愛知県総合教育センター研究部経営研究室研究指導主事の川口永理氏から新学習指導要領の改訂の中で重視されるポイント、福祉科における改訂のポイントについてご説明いただきました。学びに向かう力、知識・技能、意向力・判断力・表現力等の育英すべき資質・能力の3つの柱を教育するために、パフォーマンス評価(評価基準に沿ったパフォーマンスの出来栄えを評価)が重要になってくることから、その評価を行うためのルーブリックの制作に関わり、実際にワーキング形式でグループになり、ルーブリック(生徒や学生の学習到達状況を評価するための評価基準)作成と新聞記事を利用した授業を例に実施をしました。
参加者から「このワークを通じて、新聞を利用する際の授業の進め方だけでなく、新学習指導要領に関わる重視されるポイントを踏まえ、授業の進め方やその評価(ルーブリック)の一例を学べた」との意見をいただきました。
第2分科会
「福祉教育実践者の後進育成」(シンポジウム)
報告 | 野川 すみれ 氏(名古屋市港区社会福祉協議会事務局次長) 茶木 正幸 氏(名古屋市立西陵高等学校 教諭) 増井 佑利花 氏(関西福祉科学大学4回生) |
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進行 | 曽根﨑 藍 氏(三重県立朝明高等学校 教諭) 鈴木 幹治 氏(三重県立伊賀白鳳高等学校 教諭) |
コメンテーター | 原田 正樹 氏(日本福祉大学 社会福祉学部教授) |
社会福祉協議会、高校教諭、学生というそれぞれの立場から福祉実践者のための教育方法やその要素についてのお話をいただきました。まず初めに、関西福祉科学大学の4年生で春から名古屋市西陵高校の教諭になられる増井佑利花様より、生徒から教師を目指すようになったきっかけと理想の教員像についてのお話をいただきました。そもそも福祉に興味を持ったきっかけとしては、祖父母の家族介護だったそうです。そこから人の幸せを支えるような仕事をしたいと考えるようになり、高校では福祉科に進学しました。高校では介護実習やボランティアなどを通して、知識や技術だけでなく、自分のしたいことについて改めて考え直すきっかけにもなり、家族の次に身近な存在であった高校教諭を志すようになったとのことでした。教育実習は想像以上に大変だったそうで、「愛情を持って生徒に向かい合い、それぞれの個性を伸ばす教員」という理想は崩れたそうですが、現実とのギャップを埋めながら「生徒とのかかわりを大切にしつつ、自分に何ができるのか模索していきたい」と締めくくられました。
次に名古屋市立西陵高等学校の茶木正幸先生より、教育実習の受け入れと生徒との関わりについてのお話をいただきました。教育実習についてはまだ社会人としての自覚が足りない大学生が高校生たちから授業に対する姿勢や日常の態度を観察されており、また担当教員に指導案を提出しなければならないこともあり、担当から見てもとても大変そうだ、というお話しでした。しかし、実習を行う中で自分を見つめなおし、生徒と真剣に向かい合う様子から大学生は日々悩みながらも成長していると感じている、のことでした。また、生徒との関係性については授業外でも関わることも多く、この場面で高校生たちの思いや悩み、考え方などについて触れながら指導と教師の在り方について考えることもしばしばあるとのことでした。特に自分なりの指導としては、この授業外を大切にしているそうで、実習期間の間に高校生たちの思いに触れ、教師として高校生たちと向かい合う覚悟があるかどうか考えてもらうようにしているそうです。最後に「教師になるかどうか考え、違う道を選択する学生も少なくないが、他の仕事でも活かせるような気付きを与えられるような実習を企画したい」、と締めくくられました。
最後に名古屋市港区社会福祉協議会事務局次長の野川すみれ先生より、社会福祉協議会(以下、社協)の事業についてご説明をいただいたのち、社協として児童・生徒たちに、「世の中には様々な立場の人がいる。誰にでもできることとできないこと、得意なことと苦手なことがあるので、困っている人には手を差し伸べられる人になってほしい」との思いを話されました。その後、小中学校行われている福祉教育プログラムの事例と学校との連携についてお話しいただき、最後に社協での人材育成と福祉教育コーディネートを行う際の伝え方についてお話しいただきました。最後に、福祉教育や人間関係について考える上で大切なこととして、「”共通点”があるからこそ人間関係が構築でき、“違い”があるからこそ、助け合える」と近年難しくなってきつつある人間関係についても金言をいただきました。
参加者からは「地域や子どものためにできることを考えたい」や「今後もっと目の前にいる生徒と向き合っていけるようにしていきたい」との意見が寄せられました。
第3分科会
「進路指導を通して福祉の魅力をどのように伝えるのか」(実践報告会)
報告 | 松永 亜紀 氏(三重県立みえ夢学園高等学校 教諭) 谷 晴奈 氏(三重県立みえ夢学園高等学校 教諭) 佐々木 善隆 氏(岐阜県立岐阜各務野高等学校 教諭) 制野 司 氏(社会福祉法人昭徳会 法人本部事務局人事部長) 纐纈 純司 氏(社会福祉法人昭徳会 法人本部事務局人事課長) |
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進行 | 服部 浩子 氏(愛知県立高浜高等学校 教諭) |
コメンテーター | 矢幅 清司 氏(文部科学省初等中等教育局 視学官) |
「進路指導を通して福祉の魅力をどのように伝えるか」というテーマの下、実践報告と情報交換を行いました。
まずは三重県立みえ夢学園高等学校教諭の松永亜紀先生と谷晴奈先生に「総合学科 福祉系列における進路指導の取り組み」と題し、キャリア教育と職業観の育成についてご報告いただきました。みえ夢学園高等学校は午前の部・午後の部・夜間部の3部制からなる定時制課程・総合学科・単位制であり、福祉系列では社会福祉系列で介護福祉士国家試験受験資格取得と介護職員初任者研修修了を、福祉サービス系列で介護職員初任者研修修了をめざしています。「自分を見つめ、夢の実現に向けてチャレンジできる学校」を建学の精神として掲げており、『「誰もが、いつでも必要に応じて自分のペースで自分の時間帯で学習ができ、自分探しや夢探しができる」学校づくりを行う』という思いから、自分の関心のあることを学べるようにしているとのことです。福祉系列においても「いつでも誰でも福祉を学ぶことができる」という教育課程上の特徴から、年次ごとに自分の特性や興味・関心をもとに選択できる機会が与えられており、自分自身と向きあい、進路について考えていくことができるとのことです。1年次は福祉の視野を、2年次以降は職業意識を身に付ける指導を行っており、学校関係評価委員からも「今後も『学校は生徒の拠り所である』との観点で学校経営を行ってほしい」とのご講評をいただき、今後も継続していきたいとのお話をいただきました。
続いて、岐阜県立岐阜各務野高等学校教諭の佐々木善隆先生には「進路指導の取組について」と題してご報告をいただきました。岐阜各務野高等学校福祉科はコース制をとっており、2年次よりケアワーカーフィールドと子ども福祉フィールドに分かれ、ケアワーカーフィールドにおいては介護福祉士国家試験受験資格取得をめざします。「他者との交流から、自分と向きあう機会を提供する」というテーマのもと、1年次から施設見学、介護実習の計画を組み、福祉の視野を広げるための指導を行っており、講習会や病院見学等の情報提供を積極的に行うことで介護以外の福祉職にも目が向けられるように指導しているとのお話をいただきました。また、福祉科3学年の「縦のつながり」を意識した福祉科デイキャンプ等、特徴的な行事についてもご報告をいただきました。進路指導については他の先生方との情報共有はもちろん、生徒に個別に声掛けを行うことで信頼関係を構築することが何よりも大切である、と締めくくられました。
次に、社会福祉法人昭徳会 法人事務局本部人事部長の制野司様より、「人材育成としての福祉事業所の役割とは」と題してご報告をいただき、同課課長の纐纈純司様には質問にご回答いただきました。福祉施設の職員不足の現状と事業所が抱える課題、入職後の育成サポートについてのお話で、単に「職員の数の確保」だけではなく「人材の質」が問題であるという分析に基づいた内容でした。長期にわたって就労する良質な人材を確保するには入職前の段階、生徒・学生・学校との連携が大きく影響することを、実例を交えてお話しいただきました。今後の労働環境や外国人労働者の増加など、大きく業界が変動するため、しっかりと変化に対応していいけるような組織作りと人材育成を目指したいと締めくくられました。
15分程度の情報交換会のあと、最後にコメンテーターとして、文部科学省初等中等局視学官 矢幅清司先生よりコメントをいただきました。福祉職をめざす高校生の数は決して多くない。福祉の魅力を若者に伝えるには、まずは国民(地域の大人)に福祉の魅力を理解してもらう必要がある、との前置きのあとに「専門教育としての福祉教育」があり、福祉分野の人材確保につながっていく。学校として今できることは福祉の魅力を地域に伝えることである。地域の方々は未だ老人ホーム等施設によい感情を持っていない面が見られるが、果たしてそれは事実なのか。まずは現在の状況を知ってもらうためにも、アピールしていくことが必要である、と締めくくられました。
シンポジウム
「今日の福祉の現状をどう伝えるか
報告 | 「介護ロボット・ICTテクノロジーの今」 渡辺 崇史 氏(日本福祉大学健康科学部教授) 「災害ソーシャルワーク」 佐藤 大介 氏(日本福祉大学全学教育センター助教) 「0歳から100歳までの地域包括ケア」 原田 正樹 氏(日本福祉大学社会福祉学部教授) |
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コーディネーター | 小林 洋司 氏(日本福祉大学社会福祉学部准教授) |
シンポジウムでは本学教員3名による、専門講義が行われました。まず、健康科学部渡辺先生には「介護ロボット・ICTテクノロジーの今」と題し、ご講演いただきました。「現在ではICTテクノロジーは生活には欠かせないものとなっているが、これはあくまで生活を便利にするものにすぎない」との説明のあと、これをいかに利用し、合理的配慮を行うか、についての考え方を学びました。参加者からは「ICTテクノロジーについての知識はあまりなかったが、話を聞く中で普段自分達が使っている便利な道具もテクノロジーであることに気付いた。これらを上手く活用し、過ごしやすい環境がつくれればと思う」や「ICTを使った世の中がすぐそこまで近づいているのを感じ、これからの使い道について考えなくてはいけないと感じた。確かにAIを使った技術は必要だが、その中でも授業にあったように人と人の関わりが大切だと思った。」などのご意見をいただきました。
次に全学教育センターの佐藤先生より、「災害ソーシャルワーク」と題し、ご講演いただきました。まず、そもそも災害とはどのようなものかの説明が行われたのち、災害は自然現象によるものが多く、被害を出さないようにすることは難しいが、被害を最小限に止めることはできる、それには日常からの意識が必要であるとご説明いただきました。
参加者からは「災害は生徒も自分事として捉えるため、日常生活での意識を見つめ直す重要な機会だと感じた」や「災害のことを改めて考えさせられた。阪神・淡路大震災や東日本大震災、これから南海トラフが起こるかもしれないということで、自分は今何が出来るか考える事が大切であると思った」などのご意見をいただきました。
最後に社会福祉学部の原田先生より、「0歳から100歳までの地域包括ケア」と題し、ご講演いただきました。そもそも2025年問題とはなにか、についてご説明いただいた後、地域福祉におくる2025年問題について例を挙げながらご説明いただきました。次にこれに対応するためのシステムはどのように設計すればよいかご説明いただき、最後に地域の問題は自分の問題でもある、と認識を持ち、住民主体の支えあい関係の構築が大切であると締めくくられました。
参加者からは「福祉の分野においても、多くの事柄に目を向け、関心を持つことを止めてはいけないと再確認できた。」や「福祉は時代の変化とともに変わっていくという言葉が印象に残った。その変化も年々早くなってきているように感じる。その変化に教員として敏感でなければならないと思った。」「地域の中での役割を持ちながら動いている福祉をとらえ、地域を支援していきたいと思った。」などのご意見をいただきました。
総括講演
「福祉系高等学校の教育の質をどう高め、教育内容を豊かにしていくか」
講師 | 矢幅 清司 氏(文部科学省初等中等教育局 視学官) |
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文部科学省視学官の矢幅清治先生より、総括講演として「福祉系高等学校の教育の質をどう高め、教育内容を豊かにしていくか」と題し、ご講演いただきました。まず学習指導要領改訂の背景として、情報化やグローバル化など社会変化の進む現代に対応できる能力と資質を備えた学校教育を実現するため、求められているものを明確にするという方針があります。教育の「見える化」として最も大切にされているものは、「なにができるようになるのか」「何を学ぶのか」「どのように学ぶのか」です。社会はsociety5.0(最新テクノロジー等を駆使し、一人ひとりが快適に暮らせる社会の実現)に向けて進み始めており、政策として「個々人に最適化された学びの実現」「基礎的学力に加え、情報活用能力の習得」「文理分断からの脱却」の3つが示されています。これらにより、効率的に成長が望める時代が到来します。官民一体となり、社会変化に対応できる人材育成を実現させることができるよう、今後も研究を行いたいとのお言葉で総括講演を締めくくられました。
参加者からは「少子高齢化の問題点及びそれに対応するための福祉教育のあり方について、もっと掘り下げて具体を検討する必要があると感じた」「現場で求められる質は高まっている印象を実習・見学等で受けるので授業の見直しを常に行いたい」「日本がsociety5.0に向かって進んでいることを初めて知った。名称は知っていたが、内容までは把握していなかったため、大変勉強になった」などのご意見をいただきました。