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第8回福祉教育研究フォーラム 「社会福祉教育に携わる高校と大学の教育交流と研修」を開催しました

レポート
2014年12月12日

 福祉教育研究フォーラムは、2007年に第1回が開催されて以来、毎年、東海地区を中心に全国から教育関係者が集まり、福祉教育の実践研究や現場が抱える課題についての議論を深めてきました。
 今回で8回目となる本フォーラムは、「いのちの尊厳を伝える」をテーマに7月21日(月・祝)、本学名古屋キャンパスで開催され、高等学校や大学の福祉教育に携わる教員、学生ら141人が参加しました。

◆主催者の挨拶:左から、二木立・日本福祉大学学長
村松利之・愛知県高等学校福祉教育研究会会長/愛知県立高浜高等学校校長
和田欣子・三重県高等学校福祉教育研究会会長/三重県立いなべ総合学園高等学校校長

基調講演
演題「『助けてと言える国へ』-いのちの尊厳を伝えるということ-」

 講師の奥田知志氏(NPO法人抱樸:理事長・牧師)は、25年にわたるホームレス支援活動を通して、非正規雇用の増加により生活困窮者への支援活動の課題が拡大している現状について触れ、貧困が常態化するなかでの支援の仕組みづくりや、経済的困窮と社会的孤立(社会参加や他者との関わりの希薄さ)という2つの視点をもち、諸制度や社会的資源をコーディネートして支援を行うことの重要性に話されました。
 奥田氏は、「人類は、出産・乳児期においてサルと比較しても弱く、他者に頼った人類だけが家族や社会を形成した」という進化論を紹介し、弱さが人を人とならしめることと絆の必要性についても強調されました。また、子どものためのホームレス支援セミナーでは、過去に支援を受けた方から発せられた「『助けて』と言えた日が助かった日だった」という言葉が紹介され、誇り高き人間として生きるために「『助けて』と言える社会」を築いていくことの大切さについて訴えた奥田氏の言葉を、参加者はしっかりと受けとめました。

写真:講義をする奥田知志氏
写真:講義の様子

 午後からは3分科会にて、今後の福祉教育実践に向けた熱心な議論が行われました。

第1分科会「高校生が福祉を学ぶ意義」

 高校生が「介護(福祉)実習」を通して、福祉を学ぶ意義を考えました。愛知県内4校の福祉科生徒を対象とした実習に関する質問紙調査結果において、高校で学んだことと現実のギャップを感じたという回答をとりあげ、様々な経験から得た気づきを丁寧に掘り下げ、豊かな学びとモチベーションの向上につながる支援(施設見学会や学習会の開催、ボランティアの経験値を積むなど)の重要性について報告されました。
 また、介護と福祉の学びを積み重ねていくなかで、高校生が介護(福祉)実習を通して、人とのふれあいや課題への気づきから、自らの「福祉観」を育て、そのことが自己の適性や職業選択を考える際に影響を与えているという報告がありました。
 実習指導者の立場からは、実習を受け入れることにより、施設利用者が刺激を受ける、新鮮な視点や気付きが得られ職員の自己啓発にもつながるという利点があげられました。また、高校生は、多感な時期に多職種の人とのコミュニケーションを取る能力や他人を尊重することの大切さなどを、実習を通して学び体験することの意義などが話し合われました。

 
報告者 後藤 静  氏 (愛知県立海翔高等学校)
報告者 米谷 浩  氏 (名古屋市立西陵高等学校)
報告者 伊藤 公一 氏 (社会福祉法人弥富福祉会 特別養護老人ホーム 輪中の郷)
写真:講義の様子
第2分科会「『社会福祉基礎』における授業研究」

 2009年の新指導要領実施から5年が経ち、様々な「社会福祉基礎」の授業展開がなされてきたなか、電子黒板などICTを取り入れた授業方法や図表や動画を活用した教材について紹介されました。高校生からは「内容が理解しやすくスピードにもついていくことができた」と好評であることや、教員はICTの活用により板書の時間を省くことができるとともに、タブレットの活用を通して生徒ひとり一人の意欲や理解度などを観点別に分析、グラフ化し、その結果を授業内容に活かしていることが報告されました。
 また、総合選択制により普通科の高校生が「社会福祉基礎」などの福祉科目を学ぶ意義や、ICTの活用とともにグループ学習やディスカッションなど様々な方法を取り入れ、生きる力を育む取り組みが報告されました。

 
報告者 藤原 拓郎 氏(三重県立伊賀白鳳高等学校)
報告者 髙木 諒  氏(愛知県立海翔高等学校)
写真:講義の様子
第3分科会「青年期のキャリア形成 −高校生・大学生の福祉の学びと進路−」

 日本では、100校以上の介護福祉士養成高校等で福祉教育が実施されており、福祉系高校生の8割が,明確な福祉への志向性(資格取得・進路選択・学習意欲)を持って入学し、福祉分野の離職率も相対的に低いことが報告されました。同時に、生徒の支援に奮闘する教員の姿も浮き上がりました。高大接続教育を経験した大学生が、明確な入学動機と熱意ある学びを通して、高校福祉科教員や公務員、福祉職等のキャリアを実現させており、高校と大学の福祉教育の好循環が生まれ始めている事例も具体的に紹介されました。
 また、青年海外協力隊の取り組みとして、タイの貧困層を対象とした「自分の将来について考えるキャリアガイダンス」についての報告がありました。自己の状況を理解し、将来について具体的に考え、そのために毎日できることを約束することにより、施設での入所者の生活に変化がみえてきたことなどが紹介され、参加者は熱心に報告に聞き入りました。

 
報告者 岡 多枝子 氏(日本福祉大学)
写真:報告の様子

 その後、フォーラム全体を総括して、国立教育政策研究所教育課程研究センターの矢幅清司調査官が講演を行いました。矢幅氏は、少子高齢化、社会保障費の内訳と推移、要介護認定者数の予測など豊富なデータに基づき、福祉教育の現状、今後の方向性を説明し、福祉の原点である「いのち」の尊厳の大切さを参加者へ伝え、フォーラムは終了しました。

 
講師 矢幅清司 氏
文部科学省
(国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官
併任 初等中等教育局高校教育改革PT児童生徒課産業教育振興室教科調査官)

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