工学部 お知らせ
工学部 渡辺崇史教授のインタビューが9月1日発行の月刊「CARE WORK」に掲載されました
介護現場でテクノロジー普及に伴う業務効率化が進む一方、「誰のためのテクノロジーか」が見えにくくなっています。テクノロジーを活用には本人の「できること」を増やし、暮らしや社会参加を支える視点も求められています。工学部の渡辺崇史教授が専門誌のインタビューに答えました。渡辺教授は、アシスティブテクノロジー(支援技術(AT))の考え方を手掛かりにして、ローテクかハイテクかにこだわらず機器道具を適切に使い分けることができるように、目の前の利用者を理解するアセスメント力や実際に機器や道具を試してみることの重要性を説き、ICT(情報通信技術)やテクノロジー利用の苦手意識を超えて「温かいケア」へ導く実践的視点を語っています。
支援技術(AT)の定義と目的
支援技術(AT)とは、機器道具・アプリ・システムなどのハード面だけでなく、一人ひとりに合った機器道具などの選定・入手・調整・製作改造や導入利用支援なども含めたものです。また、支援技術(AT)の目的は、地域の中で生き生きと自分らしく生活すること、これまで諦めていた活動をできるようにすること、そして個々の人々の社会参加を実現することです。職員の負担軽減、業務効率化、ケアの質の向上が目的となっている介護テクノロジー導入に対して、支援技術(AT)が果たす役割は大きいものと考えます。
テクノロジー介護への意識改革と成果
介護の場に技術を導入する「介護テクノロジー」から、テクノロジーを当たり前の手段として活用する「テクノロジー介護」への発想転換が大切だと思います。現在では、移乗用リフトを導入することによって職員の負担軽減により安定したケアができるようになった、見守りセンサー導入により、施設入居者の満足度が上がった等の効果が現れています。テクノロジーを活用して、自分の生活をいかに豊かに楽しむか、いかに質の高いサービス提供するかが、今後ますます求められるでしょう。
現場職員に不可欠なアセスメント力
支援技術(AT)の考え方では、ハイテクかローテクかは関係ありません。本人の活動を広げ、自立した生活を実現するためのものであれば、何でもテクノロジーです。大切なのは最新機器を導入することではなく、ローテクかハイテクかにこだわらず、場面や目的に応じて使い分けることです。そのためには、固定概念や思い込みにとらわれず、目の前の利用者の困りごとを理解するアセスメント力と、実際に機器や道具を試してみる力が求められます。人間にしかできないことを大切にするからこそ、テクノロジーを学び、使いこなせるようにしましょう。
苦手意識の克服と利用者の可能性拡大
支援者の「ICT(情報通信技術)やテクノロジーが苦手、できれば避けたい」という声を聞くことがあります。それは、利用者の生活における選択肢や可能性を無意識に狭めているかもしれません。支援機器が適切に使われないための機会損失は非常に大きいと感じています。まずはスマートフォンで撮った写真や身近なアプリをコミュニケーションツールとして活用するなどの体験から試してみてください。「これなら自分にもできる」という感覚とともに、利用者の生活にどのような変化をもたらしうるのか実感して欲しいと思います。
- この記事は渡辺崇史教授の監修により、インタビューの要旨をまとめたものです。
月刊ケアワーク2026年9月号
ケアトピックス
【アシスティブテクノロジーで読み解く介護現場のテクノロジー活用】
日本福祉大学工学部工学科 教授 渡辺 崇史 氏
- 介護テクノロジーとアシスティブテクノロジー
- 「介護テクノロジー」から「テクノロジー介護」へ
- 介護現場の職員に求められる力
- 「苦手だから使わない」は利用者の損失
渡辺 崇史 わたなべ たかし
日本福祉大学 工学部 工学科 情報工学専修 教授
博士(工学)。専門分野はリハビリテーション工学およびアシスティブテクノロジー(支援技術)。電機メーカー勤務を経て、名古屋市総合リハビリテーション事業団でリハエンジニアとして活動後、本学に着任。現在も福祉用具相談支援に携わる。ウェルビーイング工学研究センター幹事も務め、「人とモノ・生活・環境」をつなぐ視点から、身体的・心理的・社会的な多様性に適合した福祉用具やコミュニケーション支援の研究・開発に取り組む。地域での工学支援や特別支援学校・障害学生への相談対応のほか、3DプリンタやIoTを活用した機器製作、海外での協同型支援にも従事。厚生労働省「介護ロボットのニーズ・シーズマッチング支援事業」マッチングサポーターも務め、研究と現場をつなぐ実践的活動を続けている。



