Plus Fukushi 株式会社/株式会社ひまわりウェルフェアHD 代表取締役 溝口 寛之さん

Plus Fukushi 株式会社
株式会社ひまわりウェルフェアHD
代表取締役

溝口 寛之さん

HIROYUKI MIZOGUCHI

情報社会科学部(当時) 2007年卒業
愛知県/星城高等学校

「ふくし」をプラスして、
さまざまな人を巻き込んで、
イノベーションを起こす。
きっと社会は変わる。

「ふくし」は、普段の暮らしの幸せを生み出す。
しかし、その支援は、介護や障害者支援など、
限定的に捉えられているのではないだろうか。
たとえば、日々の暮らしのなかに「ふくし」の視点が加われば、
それらのあり方は、きっと大きく変わるだろう。
そして、もっともっと多くの人に幸せが訪れるだろう。
何かに「ふくし」をプラスする発想と、その可能性を信じているのが、
その名もPlus Fukushi 株式会社、代表取締役の溝口 寛之さんだ。

幸せな日々のために、
ふくしのインフラを築きたい。

私が高校生だった20年前から、ずっと変わらずニュースをにぎわせている話題があります。それが、介護疲れによる犯罪や、介護離職など。一向に、その手のニュースが減らないことに、今でももどかしさを感じています。そして、高校生だった私の胸にも「どうして、最愛の人を守るための介護が、不幸を生むのだろう」という葛藤が芽生えました。

他愛もない日常生活を送るのにも、この世の中にはバリアが多すぎるとも思いました。高齢者の多くは白内障を患いますが、白線の色は、「白」。ファミリーレストランなどに行っても、呑み込みが難しい高齢者の方などへの配慮は、今もなお、十分ではありません。そして、「これはつまり“福祉のインフラ”が整っていない」と思うようになりました。「福祉のインフラ」という言葉は、私の造語ですが、その概念を社会に浸透させることが急務であり、私の使命だと思えたのです。

私の思いを実現するためには、情報と経営の知識が欠かせません。そこで、進学を決めたのが、日本福祉大学の情報社会科学部。経営を専門に学ぶ学部への進学も選択肢としてありましたが、「ふくし」についてもきちんと学びたいという思いがあって、最終的に日本福祉大学を選びました。

大学生活でつかんだ、
さまざまな体験が今に生きている。

日本福祉大学情報社会科学部で学ぶことで、「ふくし」の幅が大きく広がりました。たとえば、環境問題というテーマにも、その要素が隠れています。毎日大量に消費される、高齢者や障碍者の紙おむつに変わる商品を開発できたら、エコにもつながるし、より良い暮らしの実現にもつながります。このように、プラスふくしの発想はいかなる分野にも当てはまるということを学びました。

所属した中村先生のゼミナールでは心理学の錯視を応用した福祉施設について研究したり、自主的に参加した中川先生のゼミナールでは、小中学生を対象にした学習イベント「寺子屋体験」を立ち上げたり。さらに、学外でのボランティアサークル活動で、子どもたちのためのキャンプイベントを立案・運営しました。

毎晩終電で帰って、お金を稼ぐためにバイトをするという日々が、それでもまったく苦にならなかったのは、同じ志を持つひたむきな仲間たちがいたから。大学生活で得た、さまざまな経験はすべて、今に活きています。人とのかかわり方や人脈のつくり方、異なる分野にもふくしのエッセンスを加える視点など、さまざまな角度の興味を持った人材が集まる日本福祉大学でしか得られなかったものだと思っています。

そのイノベーションは、
きっと宝物になる。

卒業後は、介護業界の大手企業に就職し、介護の現場はもちろん施設運営など、マネジメントの分野も働きながら学びました。会社の中長期計画を立案するプロジェクトにも、愛知・岐阜・三重・静岡の代表として参加し、経営の最前線を知ることもできました。

そうした経験から、経営者同士の人脈も広がり、ここがタイミングだと、2020年にPlus Fukushi株式会社を立ち上げました。高校生の頃から思い描いた「福祉のインフラ」を創造する会社。いよいよ実現できた、経営者としての船出に、身震いしたことを覚えています。

この会社名には、2つの思いを込めました。一つは「福祉のインフラをつくるための手法」をそのまま言葉にしました。すべての業界に福祉の要素を取り入れ、それが一つにつながった瞬間に、インフラが生まれると信じています。英語表記にしたのは、海外への進出も見越したからです。二つ目の思いは、生まれてから死ぬまでの、すべての人々の瞬間にプラスな生活を届けたいという思いを込めました。

ロゴの色は、海をイメージした藍色。地球規模でインフラを広げたいという決意の表れです。また「+」は、金色に。「ふくしが加われば、イノベーションが生まれる。そのイノベーションは、きっと宝物になりうる」というメッセージを込めました。

思いの詰まったこの会社から、ふくしの力を借りてイノベーションを起こしていく。自ら掲げたミッションに挑めることが、本当に今、幸せです。

ビジネスを、
もっと自由に考えよう。

介護の現場には、未だぬぐえないマイナスイメージがあります。それは、「介護の仕事は給料が安い」とか「忙し過ぎて男性は結婚ができない」とか。そんなことを言われたら、誰だって働くのを躊躇してしまいますよね。けれど、これらの問題はすべて、「経営次第」だと思っています。

介護の事業だけにとどまらず、多角的に事業を展開して収支を安定させるとか、介護といってもお世話をするだけではなくて介護に役立つ新商品を開発するとか。介護の知識をまったくちがう事業にも派生させることができるのです。

すなわち、ちょっと視点をずらせば、周辺にはいろんな収益が見込めるものが転がっているということ。この業界といえば介護職や施設で働くことというイメージが先行しているかもしれませんが、本当にそうでしょうか。

たとえば、障害者向けのかっこいい服をつくるのだって、歩行介助ロボットをつくるのだって、立派なふくしです。AIと福祉を組み合わせてれば、まったく新しいケアプランをつくることだってできるでしょう。

今、進路に迷っている皆さんも、福祉を学んだら施設で働くものだと思っていませんか?

ふくしの視点を持った人材は、どんな業界だってどんな職種だって、活躍できる可能性を秘めています。そう考えて、もう一度、あなたの回りを見直してみませんか。できることが、無限にあると、私は信じています。

イノベーションは、
「他者」を巻き込んだその先に。

2021年7月には、母校である日本福祉大学の「健康科学研究所」と産学連携研究をスタートさせることができました。「福祉のインフラ」を念頭に置いた事業開発に関する共同研究が始まります。これによって、私の考えるゴールは、よりいっそう、その幅や可能性を広げることでしょう。今からワクワクする気持ちが止まりません。

また、同年10月には弊社初の介護施設「GRAND -彩-(グラン イロドリ)」(名古屋市中川区)をスタートさせました。この介護施設の設計には、建築バリアフリー専修の村井裕樹ゼミの学生さんたちおよそ10名が関わってくれています。学生さんたちには、施設の設計プランの提案や素材の提案など、さまざまな提案をしていただきました。私自身、柔軟で新しい発想が欲しいと思っていたのですが、彼らの活躍は期待以上でした。本来、こうした施設はバリアフリーを大前提として考えますが、一方で快適性や洗練性を犠牲にすることも。この施設では「安全性」と「かっこよさ」を両立させた今までにないプランとなりました。これまでのイメージに凝り固まった頭では、決してこのような発想は出てこなかったでしょう。

完成した介護施設を見て、病院関係者の方々やケアマネジャーさんから「介護施設じゃない、介護施設ができたね」とおっしゃっていただきました。この言葉は、最高の誉め言葉です。

こうやって、さまざまな分野の人と関わり、多くの他者を巻き込んでいく先に、イノベーションが生まれていくと思います。イノベーションとは、化学反応。IT企業や飲食業界など、多種多様な「他者」と手を組んで、ふくしのエッセンスを社会に、世界に広げていきたいと思います。そんな未来はきっとすぐそこ。ふくしの総合大学で学ぶ後輩たちにも、大いに期待しています。

Editor’s Note

介護施設「GRAND -彩-(グラン イロドリ)」の話をするとき、溝口さんは本当にうれしそうに、豊かな表情を見せてくれた。「介護のブランディング」という言葉も飛び出した。施設の内外装だけではなく、ユニフォームも学生たちと共に生地選びから関わった。これまでにない、新しいものをつくり出すことを、溝口さんは心底、楽しんでいる。

少子高齢化社会において、ますます介護業界の働き手は減っていくかもしれない。旧態依然としたイメージのままでは、もはや業界自体が成り立たないのかもしれない。

たとえばそんな時、溝口さんの頭の中には、「星野リゾート」がある。そのブランド力と類稀なマーケティング力で今や国内外に多くの拠点を運営する星野リゾートのように、そこへ行きたいという人と、そこで働きたいという人が数多くいる。そしてまた、「GRAND -彩-(グラン イロドリ)」も、その視野は国内外に広がり、多くの若者たちを呼び寄せるだろう。

建築バリアフリー専修の村井先生はこんなことを言った。「上がり框は、日本の古くからの知恵でウィルスを侵入させにくい」。だから、介護施設には珍しく、「GRAND -彩-(グラン イロドリ)」には上がり框がある。過去の常識を覆し、新しい視点を導入することで、業界そのものが変わっていくことができる。コロナ禍で逼迫する社会に風穴を開け、新しいスタンダードをつくり出す、溝口さんと仲間たちの知恵に、未来を託したいと思う。

※掲載内容は2021年11月取材時のものです。

大切なものは仲間です。福祉のインフラのあるべき姿は、社会の変化によって、常に変わり続けるものです。だからこそ、その環境整備への挑戦が私だけで、終わってはいけない。同志が必要で、仲間が大事なんです。幸い、たくさんの素敵な仲間に恵まれていて、私は彼らのことが本当に大好きです。ちょっと、真面目過ぎるでしょうか。デザイン担当の同志からは、よく、真面目過ぎると怒られています。

Other Interview

Other Interview

名古屋市立内山保育園
園長(名古屋市職員)

社古地 恵子さん

森 美聡 さん

名古屋市立守山養護学校 教員

森 美聡さん

宮田 隼 さん

コミュニティハウス「ひとのま」 代表

宮田 隼さん

中村 仁隆 さん

岐阜県総合医療センター
医療ソーシャルワーカー

中村 仁隆さん

元島 生 さん

特定非営利活動法人 場作りネット 副理事長

元島 生さん

簗瀬 寛 さん

株式会社GOBOU代表取締役
「大人のための体操のお兄さん」
ごぼう先生

簗瀬 寛さん

吉本 浩二 さん

マンガ家

吉本 浩二さん

小山 浩紀 さん

法務省法務事務官・矯正長
大阪刑務所 教育部長

小山 浩紀さん

井原 吉貫 さん

阿智村役場 地域経営課

井原 吉貫さん

高橋 峻也 さん

経済学部 4年

高橋 峻也さん

伊倉 公美 さん

社会福祉法人 よつ葉の会
サービス管理責任者

伊倉 公美さん

三好 秀樹 さん

堀田丸正株式会社 代表取締役社長

三好 秀樹さん

瀬 佳奈子 さん

社会福祉法人 むそう ほわわ世田谷

瀬 佳奈子さん

西尾 和子 さん

一般社団法人 小さないのちのドア 施設長・保健師

西尾 和子さん

川島 史子 さん

株式会社クラウドクリニック 代表取締役

川島 史子さん

船戸 敬太 さん

介護タクシー「GO OUT TAXI」 代表

船戸 敬太さん

池田 一 さん

多摩少年院 院長

池田 一さん

新堀 亮 さん

イマドキヒャクショウ

新堀 亮さん

滝澤 ジェロム さん

児童養護施設「子供の家」職員

滝澤 ジェロムさん