当研究科は、教育科目の充実に加え、論文指導に重点を置いています。特に修士課程では論文の作成が指導の中心となっています。

社会人が2年間で修士論文を完成するには、自らの問題意識を基に論文を作成することを勧めます。 入学の動機も、既に持っている経験を如何に論文として表現するかにあると思います。 文章術やレトリックをマスターしたから論文が書けるというものではありません。制度や組織を前提とする社会福祉やビジネス分野では、既定の枠組みと手順に沿った論文形式で十分かもしれません。

しかし、複雑な社会関係の中での本質的な問題を追求しなければならない開発分野では、社会に対する複眼的な視点を必要とし、論文形式も多様となります。しかも、従来の専門分野やテーマで分けられた論文形式よりは、以下に示すような目的別の論文形式になりがちです。

  1. 仮説検証型のいわゆる学術論文を作成したい場合
  2. 自らの開発経験を整理して第三者に伝えたい場合
  3. 経験を基に独創的な理論や仮説を構築したい場合
  4. 独自の構想と論理構成でユニークな開発計画案を作成したい場合
  5. 新たな情報収集方法や意志決定手法の可能性にチャレンジする場合

いずれにしろ、自らの問いと目的が明確でなければ論文は書けません。出願に際して研究計画案を提出するのは、以上を確認するためです。 入学後は、各リサーチ科目に属し、論文とは何か、何故書くのか、その種類は、目的に応じた論旨展開は、表現の方法は、等々を学ぶことになります。 これら全ては、単に学術目的に限らず、業務報告や提案書の作成など、専門的職業人にとって不可欠な知識と能力です。

修士の学位は論文に対してのみ与えられるのではなく、社会人としての経験の積み重ね、そこから得られた知識を謙虚に分かち合う態度も評価の対象となります。 それが、社会人を対象とする当研究科修士課程の基本姿勢です。

それぞれの目的にあった論文の書き方を指導するために、研究計画の提出、その修正、論文計画の作成、論文作成の指導、論文草稿の指導と続きます。 その間、大学院学生は、インターネット上のリサーチ科目に所属し、情報を共有しつつ相互に学び合う方法がとられます。 この通信によるグループ指導は、教室での対面指導以上に効果がある反面、進捗の差による個別的対応がしにくいことです。 従って、必要に応じて対面指導を随時行っています。 特に海外在住者には、一時帰国の機会を最大限に利用して対面指導を積極的に受けることを勧めています。 また国内でも、指導教員の出張による対面指導が必要に応じて開かれています。