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2013年度作文コンクール入賞作品一覧

特別賞 「身近な人から繋がりを」

東浦町立東浦中学校 1年 神谷咲佳

「今年も来てくれたの。ありがとう。」

わたしは東浦町『藤の会』主催、夏休み子ども浴衣講座に今年も参加してきた。着付け講座に参加したきっかけは二つある。一つは、大好きな盆踊りに自分で浴衣を着て行きたかったからだ。そして二つ目は、お祭りで見たいろいろな帯結びに興味を持ち、自分でもやってみたいと思うようになったからだ。二年生から参加し、今年で六年目になる。今ではわたしのことを知らない先生は、どなたもいらっしゃらないほどだ。町の広報に募集は載るが、いつの頃からか自宅のポストに、案内のちらしと丁寧に筆で書かれた『待っていますよ』というお手紙が届くようになった。六月、学校帰りにポストをのぞくのも楽しみになっている。

昨夜は待ちに待った盆踊り大会だ。友人と浴衣で行こうね、と約束して神社に出かけた。習いたてだったので、今年初の大人用の浴衣も難なく着られ、蝶結びも上手に出来上がった。しかし、残念なことに出かけてみると、今年も浴衣姿は少なかった。昔は着物を着て生活していたのに、今では特別な場合を除いて、あまり見かけない。それどころか、お祭りの時でさえこんな状態だ。お店では、簡単に着られるセパレートタイプの浴衣や同じ形に結ばれた帯が多く販売されている。日本の伝統文化であり、民族衣装が自分で着られなくなるかもしれない。そんな不安から抜け出すために、講座を続けてこられたのだと思う。

しかし、理由はそれだけではない。浴衣講座では、着付け、帯の結び方はもちろんのこと、畳の歩き方、お茶の運び、頂き方、お辞儀の種類、立ち振る舞いや、作法のことまでも教えてくださる。着付けが終わると、音楽に合わせて踊る。今年は高知出身の先生に習って、よさこい踊りで盛り上がった。また、休憩時間も楽しみの一つだ。先生お手製の和菓子がいただける。カステラやケーキもいいけれど、日本の『和』が味わえるお菓子は、見た目も涼しげで、甘さが程よく本当に美味しい。わたしが知らない戦争の話や昭和の暮らし、中学の歴史を話してもらうこともある。年齢を超えて話がはずむひと時は、コミュニケーション作りの場ともなる。さらに、一緒に講座に参加している子どもたちとも、『お菓子美味しいね。』や『この帯どうやって結ぶの。』『学校は楽しい。』など、身近な何気ない会話から学区を超えて気軽に話が出来、仲良くなっていく。幅広い年代の中で、共通の時間を過ごす経験は、めったにあるものではない。着付け講座は、日本文化を学ぶ会だけに留まらず、世代を超えて地域の人と人とを結ぶ貴重な場ともなっているのだと思う。

東北大震災以降、様々な場所で『絆』の言葉をよく見聞きする。ネットを使って簡単に、広範囲に人とのつながりを求める人が増えてきている。しかし、顔の見えない薄い広がりよりも、こんな時代だからこそ、わたしは身近な地域から、顔の見える、ふれあえる繋がり作りをこれからも大切にしていこうと思う。

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