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2007年度作文コンクール入賞作品一覧

特別賞 「僕らの言葉」

美浜町立河和中学校 3年 野田裕太

先日、僕はある不思議な経験をした。近所の病院で、おばあさん二人の会話を耳にした時のことだ。その会話の内容が、僕には分からなかったのだ。もちろんそれは、外国の言葉ではなかった。多分、僕の住む町の方言だったのだと思う。それでも意味が分からなかった。自分の住んでる地域の方言が分からないなんて…。考えてみると、僕らはあまり方言を使わない。家でも、学校でも。じゃあ、どんな言葉で僕らは会話しているのだろう。

都会の女子高生が使っているような言葉じゃない。NHKのアナウンサーが使っているような、全国共通語とも少し違う。僕らには僕らの言葉がある。この言葉をよく思い出してみた。そしたら、病院にいたおばあさん達みたいに方言ばかりではないけど、やっぱり僕らも方言を使っていた。特に、この地方の代表的な方言「じゃん」「だら」「りん」は、僕らの会話にはなくてはならない言葉だ。僕は、友達の言葉を頭の中で共通語に直してみた。そしたら、なんだかよそよそしくてかた苦しい感じになってしまった。この地方の方言のことを、もっと詳しく知りたいと思い、調べてみた。聞いたこともない言葉、おばあちゃん達が使っていた言葉、そして僕らが普段使っている言葉。こんなのも方言なんだと思う言葉がたくさんあった。僕は、この町で生まれこの町で育った。この町以外に友達もいない。だから、僕の使っている言葉が共通語だと思い込んでいた。

今の時代、教科書も、僕らが読む本も、全部共通語で書かれている。テレビに出るタレントは、関西弁以外の方言を使う人は、共通語に強制されるらしい。僕は、こんな環境で育ったから、方言をあまり知らなかったのだろう。病院での出来事の後、昔からその地方で使われている方言を大切にしようと、強く思うようになった。なぜなら方言は、どこで生まれ育ったかが表現される、その地域特有の文化だから。実際僕だって、言いたいことを的確に表現でき、親しみを感じるのは方言だ。病院で、何の話か分からなくても、おばあさん達の話に耳を傾けたのも、そのリズムや音が快かったからだろう。

僕は、この町が大好きだ。自然に恵まれ、人々がやさしく、ゆったりしている。だからこそ地域特有の文化である方言が、だんだん使われなくなっていくのは寂しい。もちろん言葉だけでなく、文化そのものもそうだ。僕たちは、地域に住むお年寄りの話を聞く機会を持ち、地域特有の言葉や文化を、自分の子供や孫達に伝えていかなければと思う。

明日、仲間と別れる時、いつもの「じゃあね」のかわりに「そいじゃあね」っていってみよう。

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