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2006年度作文コンクール入賞作品一覧

特別賞 「変わらないもの」

東海市加木屋中学校 3年 平松可奈子

電車からおりて急いで駅の窓から顔をだすと、いつも同じ場所でおじいちゃんは優しい顔をして私を待っています。私はたちまち笑顔になり苦手な長い階段を猛スピードでかけおります。その先には私の大好きな笑顔があります。なかなか会いに行けないだけ、この日は私にとって大切で最高の日になるのです。おじいちゃんは頭がよく、いつも私に英語のテストをしてきます。頑張って会話をするものの、やはりいつも苦戦し、参りましたと私がいう。それがいつものパターンです。でも私にとってそれは楽しみなことです。学校の英語の授業で新しく会話文を覚えるたび、よし。おじいちゃんに再チャレンジだ。と気合がはいり、いつのまにか英語は私の得意分野へとなっていました。

中学三年生になって、遊びと勉強に大忙がしの私は、以前のようにおじいちゃんの家へ遊びにいくことが減っていました。一ヶ月に一度はでてきた"おじいちゃん家マーク"もカレンダーに書かれることはなくなっていました。そんなある日、おばあちゃんから泣いて電話がかかってきました。私は、電話で話しているお母さんを黙ってじっと見つめていました。電話を切ったお母さんは私に泣きそうな顔で

「おじいちゃんね、ボケてしまったの。おばあちゃんにもすごくひどいことをいうようになってしまったんだよ…。」

と涙をこらえながら話していました。おじいちゃんは人が変わったように暴言をはいたり、わけのわからない話をするようになっていました。おばあちゃんと仲よしだった、あんなに優しいおじいちゃんが言ってはならない暴言をはいている…。私にはすぐその現状が受けとめられずに心の中では、おじいちゃんがそんな風になるわけないぢゃん。と思っていました。次の日、家族とおじいちゃんを連れて外食しに行きました。そこには、私の知らないおじいちゃんがいました。私が会ってすぐに、英検に受かったと報告するとおじいちゃんはほめることなく、嫌味を私にいいました。"うそでしょ…。"目の前が真っ暗になりました。それからもおじいちゃんはひたすらわけのわからないことを話し続け、急に怒鳴ったりもしました。目が変わっていた。私の知ってる優しい目じゃなく、怖くなった。家に着くと涙が溢れました。私が泣いて電話した時、もう夜なのに迎えにきてくれて温かいご飯を食べさせてくれたおじいちゃん。どんな時も私の味方で私のためにいろんなことをしてくれたおじいちゃん。与えてもらってばかりでした。私は変わってしまう前にもっと話したかったと思ってしまっていた自分に腹がたちました。変わってしまっても、私の大好きなおじいちゃんには変わりないのです。たとえ今までのおじいちゃんではなくても、受けとめ、向かい合っていきたい。もっともっと好きになりたいと思いました。そしておじいちゃんが私にくれたように、私も笑顔をたくさん届けたいと思います。

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