知タウンシップとは

  1. ホーム
  2. 知タウンシップとは
  3. (3)取り組みの特性

知タウンシップの取組について

前のページへ / 次のページへ

(3)取り組みの特性

1)公私協力による生涯学習システムの独自性

本学部で展開してきた生涯学習型の教育システムは、【図1】に示されるように、学生の社会参加能力の育成と生涯学習受講者のまちづくり主体への成長を支え、全体として地域社会をリードする実践型人材の養成を図るものである。とりわけ、地域社会のニーズや課題と教育資源とのマッチングは、課題解決に向けた学生の調査・分析・提言能力の獲得と地域への成果還元・フィードバックの循環を可能にした。このような教育システムは、地域の実践手法やフィールド体験を重視することから、企業における就業体験を模して「知タウンシップ」型教育と呼ぶこととした。

2)学部教育と生涯学習事業のマッチング

これまで大学で行われてきた生涯学習講座は、地域に対して学内資源を提供するエクステンション型のものが多い。本学のそれは、地元自治体(半田市)の生涯学習推進協議会に加わり、地域が必要とする学習ニーズと自治体のまちづくりに貢献できる人材養成に応えるべく組織された。したがって、「総合」「人間福祉」「まちと環境」「情報リテラシー」「国際理解」の5分野と「人材養成」の1領域からなる講座事業を展開した。また、講座事業のほかに、「まちづくりへの参加と支援」「研究・開発」「生涯学習の推進ネットワークづくり」を位置づけ、それぞれに学部教育とのマッチング、教育資源の活用、学生参加の機会を設けている。同時に、学生たちが学習活動を通じて地域課題に積極的に関わりを持とうとする姿勢を喚起し、地域社会に貢献できる人材として育つことを目指した。

1.自治体との共催による人材養成

半田市との共催による生涯学習講座は、【表3】に示すとおりである。このねらいは、自治体が期待するまちづくりのための人材養成をより多目的に推進するためのものと言ってよい。「ボランティア」「自然体験活動」「人にやさしいまちづくり」などの各リーダー育成が行われている。同時に、講座プログラムを本学部の基礎科目や「社会教育主事課程」科目とマッチングさせることによって、多世代による重層的な学びの構造が形成されている。また、社会人の豊かな知識や経験、学習姿勢は、希薄化しているといわれる学生の社会体験を広げ、研究・学習意欲を高めるものであり、実践型教育の導入部分として位置づけられた。その成果は、「学生」「受講者」「自治体」の3者の協働による講座(「自然わくわく大冒険」「寺子屋体験講座」)の実施へと発展した。

2.調査・分析能力の開発

文系学部では従来、座学を中心に専門的な知識の習得を目的とすることが少なくない。しかしながら、広義の社会問題を対象とする本学・学部では、地域の課題に取り組み、地域とともに学ぶ「知タウンシップ」型教育を「アシスティブテクノロジー演習」「卒業研究」などの演習科目で推進した。生涯学習センターをはじめとする学内諸機関における地域課題への取組やその成果の蓄積は、学生の地域調査・研究を促す教育資源となった。同時に、学生が課題解決に向けた地域への提言を目標にすることで、地域への成果還元と新たな課題のフィードバックを促すものとなっている(【図1】参照)。さらに、地域の多様な現職者との交流は、入学後の早い段階から職業意識を高め、学生が地域社会における自分の役割や社会参加のあり方を体験的に捉える機会となった。

3.連携を支える地域ネットワーク化の推進

知多半島全体をキャンパスとし、学生の教育・研究活動との連携を図るには、大学と地域の連携を支える推進ネットワークの構築が不可欠である。大学と地域の連携拠点(窓口)である本学生涯学習センターは、まちづくりの担い手や教育資源の提供者となり得る地域活動の組織化やNPO団体とのネットワーク化を推進した。生涯学習で学んだ人たちが主体的に学びの組織を維持するとともに、学んだことを生涯学習の発展と地域貢献に活かそうとする姿勢に大きな意義がある。当初、半田市が目標とした「まちづくりのための人づくり」が現実のものとなっている。

3)大学教育・学生成長へのインパクト

本学では、学生の主体的な教育・研究活動を推進するために、「知タウンシップ」型教育として、学び、就業体験、多世代間交流、社会連携を通して、社会参加能力を身に付ける場となるよう、学生の取組を支援している。

1.LAの組織化

生涯学習講座の運営を支援する学生アシスタント(LA)は、主として情報講座のアシスタントを担っていたが、自主企画講座を開設し、現在では講師を担うまでに成長した。また、地域団体からの研修受託や情報発信の支援など、その活動領域は多岐に亘る。とりわけ、研修受託は【表1】の実績に示されるように、地域の情報リテラシー発展への貢献は、地域から評価・期待されたことを証明している。また、LAのベンチャー的な取組は、他の学生の意欲を刺激し、学生プロジェクトの結成などに大きな影響を及ぼした。平成9年から17年までに、LAの登録者数は延べ327名にのぼる。

2.学生プロジェクトとまちづくりフォーラム

平成7年の「地域情報化研究会」や「マルチメディア研究会」の結成を契機に、学生の主体的な研究・地域貢献活動を展開する学生プロジェクトは、次々と誕生した。【表4】に示されるのは代表的な事例である。学生プロジェクトの構成は学生有志もしくは研究室単位で構成される。平成11年には「学生プロジェクト連合」が結成され、プロジェクト間の相互理解と協力・支援関係が構築された。同年から開催されるようになった「まちづくりフォーラム」は、「地域づくりプロジェクト」を中心に学生有志で実行委員会を結成して企画運営にあたった。この取組は、地域の中で学生たちが自ら果たすべき役割は何かを模索し、地域のNPO団体や市民との共同学習・成果共有の場とするために開催された。

3.地域の初等教育との連携

平成7年の学部開設当時、本学は、半田市立亀崎小学校からのウエブサイトの作成協力の依頼を受けた。ウエブサイトは、学生有志と小学校の放送委員会の児童が協力して作成し、生涯学習センターのサーバーから学外に公開された。当時、情報社会科学部の公式ウエブサイトはまだ外部に公開されておらず、もちろん知多半島5市5町の小中学校の中では先駆的な公開となった。その後も半田市内の小学校のウエブサイト作成支援や情報授業の支援などを継続的に行ってきた。また、平成16年に本学は、半田市立雁宿小学校から地域自慢の映像コンテスト「マイタウンマップ・コンクール」に応募する作品の制作協力の依頼を受けた。本学は、学生プロジェクトやLAなどが協力して「半田市自慢CMをつくろうプロジェクト」を結成した。本プロジェクトは、各プロジェクトの特徴を活かしながら、小学生の自由な発想力や行動力をさらに育むような工夫に留意した。小学生の地域への愛着や独創性を作品に反映した結果、雁宿小学校の作品は、同コンクールにおいて総務大臣賞を受賞した。

4.宮田村情報発信事業と自治体連携

本学は、学生の下宿率が約半数にのぼる全国型の大学である。そのため、出身地域の調査・研究、地域貢献活動が活発である。その中でも長野県宮田村は、地域情報化や地域づくりの分野で本学部との密接な連携実績を持つ自治体の1つである。宮田村と本学情報社会科学部の関係は、平成9年に同村出身の学生が村の特産品や観光・文化の紹介を学内のウエブサイトで発信したことから始まった。その学生は、在学中から同村の村づくり協議会の委員として参加し、情報社会科学部の学生数名とともに「村おこしプロジェクト」を組織した。当時、中山間地域にある同村は、「過疎化や地域力の衰退」の克服を課題としており、住民によるまちづくりの機運を高め、インターネット網を活用して地域の良さを全国、全世界にアピールしようとしていた。それに協力して、同プロジェクトから発展した「地域づくりプロジェクト」や「インターネット放送局」などの学生プロジェクトが平成12年から「みやだ祗園祭情報発信事業」を展開している。現在、本学と同村は友好協力宣言を締結し、自治体推薦入試を実施している。大学がまちづくり計画にかかわり、同村からは学生の実習、卒業研究、自治体インターンシップなどの機会提供を受けている。

ページの一番上へ

前のページへ / 戻る / 次のページへ