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子どもの発音、滑舌の悪さの原因とは?正しい発音、滑舌を良くするためのトレーニング方法を解説【専門家監修】

2024.04.23

「さ行」が「た行」に。子どもの発音は何歳まで様子を見ればよい?

 幼稚園年中の娘のことばですが、「さかな」が「ちゃかな」になってしまいます。園の先生からは「そのうちはっきりしゃべれるようになるよ」と言われるのですが、どのくらいまで様子を見ていていいものなのでしょうか?
 2歳くらいの小さな子どもが、「つみき」を「ちゅみき」などと発音していると、かわいらしくほほえましく思えます。幼稚園の年長さんではどうでしょう?子どもの発音がはっきりしないという場合、何歳まで様子を見ていてよいのでしょう?
 これらの発達にはかなり個人差があり、3歳くらいで大人と変わらない正確な発音ができる子もいれば、小学生になっても「ちゅみき」になってしまう子もいます。「ケーキ」が「ちぇーち」になるなど「かきくけこ」が「たちつちぇと」になってしまう、「ごはん」が「ごあん」になるなど「はひふへほ」が抜けたような発音になってしまうなど様々な音にゆがみがみられます。4歳くらいでは約2割に発音の未熟さが残っているといわれていますが、5、6歳くらいまでにおおむね正確に発音できるようになってきます。しかし小学生でも「つ」やサ行、ラ行などの発音しにくい音で歪みが残っている子が2~3%くらいいるといわれています。これら小学生以降に残っている発音の歪みは、自然に治りにくいといわれ、何もしないでいると、大人になっても残ることが多い傾向にあります。
 つまり、様子を見ていてよいのは幼稚園の年中さんくらいまでで、年長さんになってもあまり変化がなく同じ音の誤りが残っていたら、ことばの専門家(言語聴覚士)のところへ相談に行くとよいでしょう。合併する問題や通える頻度などにもよりますが、適切にトレーニングすれば数か月できれいな発音になります。
 言語聴覚士のいる施設は、日本言語聴覚士協会や、各都道府県言語聴覚士会のホームページなどで検索できます。

発音が悪い原因とは?

 はっきりと大人と変わらない正確な発音ができるようになるためには、子どもの体の様々な部分が発達してくる必要があります。舌や唇、喉の奥などの筋肉が正確に素早く協調して動かせるようにならないと、正確な発音を作ることができません。また「らいおん」と「だいおん」が違う音であると聞き分けることができる耳の力も必要になってきます。こういったさまざまな機能に苦手があると、発音が不明瞭になります。
 中には、耳の病気の後遺症により高い周波数の音が聞こえにくのが原因で、発音が悪い場合もあります。一部の周波数のみ聞き取りにくい場合、名前を呼んで振り向くなどは出来ますから、周囲が聞き取りにくさに気づかないこともあります。中耳炎を繰り返していたなど、心当たりのある場合は一度耳鼻咽喉科で正確に聴力を測定してもらいましょう。
 また、噛み合わせが悪い場合や、舌の裏側のスジが突っ張るなど、口腔内の形の問題でうまく発音できないこともあります。そういった可能性がある場合は、早めに歯科へ相談に行きましょう。
 また、発音そのものではないのですが、長い単語の音の並び方がうまくイメージできないお子さんがいます。「とうもろこし」が「とうもころし」になってしまったり、「ストップウォッチ」が「とぽっぷぽっち」になってしまったりする子です。長い単語でなくても「コップ」が「ぽっく」、「テレビ」が「てびれ」になってしまう子もいます。こういったお子さんは、文字を覚えるとともに正確な音の並びが分かるようになる場合が多いのですが、音のイメージが苦手な場合、しりとり遊びやさかさまことばなどのことば遊びをするのもよいでしょう。

正しい発音のためにお家でできること

 何度教えても正しい発音を覚えられない、その都度注意し言い直しをさせると嫌がってしまう、ゆっくり話させると比較的はっきりと話せるのですが、その都度「ゆっくり」と声をかければよいですか?などのご質問がよくあります。
 発音の悪さに関して、実はその都度注意し言い直しをさせるのは、あまりよいことではありません。「ゆっくりいってごらん。」などの声掛けも同様です。先ほど説明したように、発音が悪い場合、様々な原因があり、どれも「注意をする」「ゆっくり言う」ことで解決するものではないからです。
 発音に必要な運動機能や耳の聞き分け力が育っていないのですから、何度言われても子どもはどう直してよいのかわかりません。たくさんお話をしようと思ってお母さんに話しかけているのに、いつも話の内容は聞いてもらえず、発音の悪さだけを指摘され言い直しを強要されると、子どもはたくさんお話をすることをやめてしまいます。場合によっては、自分の発話に注意が向きすぎてストレスとなり、吃音やチックなどの症状が出てしまう場合もあります。
 発音の悪さは気になるでしょうが、まずはお子さんの話の内容にゆったりと耳を傾けるよう心がけましょう。お子さんにゆっくりと話をしてほしかったら、大人の話しかけや返事もゆっくりとしたペースにすることです。

正しい発音、滑舌を良くするためのトレーニング方法とは?

 5、6歳になってもまだ発音の不明瞭さが残っている場合、正しい発音の指導は言語聴覚士などの専門家に任せましょう。まずは発音の悪さの原因を探り、それに合わせたトレーニングの方法を指導してもらって家庭でも毎日練習します。最初は1音だけ、次に単語や短文と段階を踏んで練習をしていきます。最終的に「日常会話の中で指摘して修正してよい」と指示を受けるまでは決して会話の中で注意をしたり言い直しをさせたりしないようにしましょう。このことは、園や学校の先生とも情報を共有して協力していただきましょう。
 発音のトレーニングの適期は5歳~6歳くらいといわれています。小学生になっても少し時間はかかりますがトレーニング可能です。ただし年齢が上がるに従い治りにくくなりますし、学校が終わってからトレーニングに通おうと思っても、夕方の時間帯は混んでいて予約が取りにくい場合が多いようですから、やはり年長さんくらいがトレーニング時期としてはおススメです。
 家庭でも、よく噛んで食べる、うがいをする、シャボン玉や楽器吹きなどお口を使う遊びをたくさんするなど心掛けることで、唇、舌、顎、喉などの運動のトレーニングになります。あまりトレーニングだからと意気込まず、毎日の生活や遊びの中で楽しく続けられることをやってみましょう。

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監修・講座講師

大岡 治恵
日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科 学科長
日本福祉大学付属クリニックさくら 言語聴覚士
1990年から11年間、新城市民病院、岡崎共立病院等で言語聴覚士として勤務ののち、2001年より名古屋文化学園医療福祉専門学校専任教員、2008年より日本福祉大学中央福祉専門学校言語聴覚士科学科長として言語聴覚士養成に携わる。学生の演習施設、教員の臨床施設として併設施設「ことばと聴こえの支援室さくら」を開設、2020年日本福祉大学付属クリニックさくら開院後は、教員の傍らクリニックの言語聴覚士としても発達障害、構音障害、吃音等の臨床、および臨床研究を行っている。

日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科
日本福祉大学付属クリニックさくら

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