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自閉スペクトラム症(ASD)とは? 症状や診断について 【専門家監修】

2023.10.13

自閉スペクトラム症(ASD)とは?

「自閉スペクトラム症」には「自閉症スペクトラム障害」、「自閉症」などよく似た名前の診断名がたくさんあります。そのほかにも「広汎性発達障害」、「アスペルガー症候群」など、名前は似ていないけれど、症状特徴がよく似た診断名もあります。これらは同じものなのか違うものなのか、混乱してしまいますよね。
以前は少しずつ症状特徴が違うことから、いくつかのグループに分けてそれぞれに違う診断名をつけていました。でもそれは症状の程度の差であって、それぞれ境界線を引くのはとても難しいことなので、それらを一連の続き(スペクトラム)として捉えようということになり、正常から重症まで、境界が曖昧で連続性があるという意味で、現在は「自閉スペクトラム症」もしくは「自閉症スペクトラム障害」と呼ばれるようになりました。

自閉スペクトラム症(ASD)の症状

自閉スペクトラム症(ASD)は、対人的な相互交流とコミュニケーションの難しさ、著しく興味が限局しパターン的な行動があることの2つの特徴があるといわれています。これらの症状の他に、知的障害を合併することがあるため、一見全く異なる状態のようで、同じ自閉スペクトラム症と診断されることがあるわけです。

知的障害を合併してことばの遅れも重度の場合

ことばでほとんどコミュニケーションをとることができず、声が出ていても特定の単語や音感の良いフレーズなどをずっと繰り返すだけの場合があります。ほしいものや嫌なことがあると、大人の手を引っ張る、かんしゃくを起こす、泣き叫ぶなどの方法で表現することもあります。他のお子さんとのやり取りは難しく、物をずっと一列に並べる、くるくる回る、手をひらひらさせるなどの遊び方を好みます。

単語や2語文など少しことばがある場合

ことばがあってもオウム返しや独り言が多く、聞かれたことに答えられない場合が多いため、コミュニケーションをとることは難しいです。車や電車、恐竜など、特定のものにしか興味を示さない、ものを置く場所や通る道がいつもと少しでも違うと怒り出す、集団生活でほかのお子さんと同じようにできないなど、行動面での困りごとが強く現れます。

知的障害がないか軽度で、ことばで会話ができる場合

一見ことばの遅れが無いように見えても、字義通りに解釈してしまって誤解が生じる、場の空気にそぐわない表情や発言をしてトラブルになるなど、コミュニケーションを円滑にとることが苦手です。臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心のあること、自分のやり方やペースの維持、ルールを優先させようとして、他の人との折り合いが付けられずトラブルになることがあります。

自閉スペクトラム症(ASD)の検査

自閉スペクトラム症(ASD)は、血液検査や脳画像検査などで診断できるものではありません。また、よくWISCなどの知能検査を実施してきたという話を聞きますが、WISCというのは知能検査であり、知的障害を合併しているかどうか、様々な認知特性にデコボコはないかどうかを確認することはできますが、自閉スペクトラム症であるかどうかを判別するための検査ではありません。
自閉スペクトラム症(ASD)は、普段の行動特徴を養育者の方から詳細に聴取したり、遊びや行動を観察したりして、先述したような特徴をどのくらい有しているかを調べ、診断基準に合致するかどうかによって診断します。幼少期からの成育歴、集団生活の様子などの情報も併せて判断します。
あまり小さい時期はお友達とのやり取り遊び自体が少なく判断しにくいため、3歳以降に確定診断されることが多いでしょう。ことばの遅れがあまりない人では、小学生になってから、大人になってから診断がつく場合もあります。地域によって異なりますが、児童精神科、発達障害の専門外来のある小児科などで診断を受けることができます。

自閉スペクトラム症(ASD)とお薬

現在の医学では、自閉スペクトラム症(ASD)を完全に治すお薬はありません。自閉スペクトラム症(ASD)で見られる不安や興奮のしやすさ、合併しやすいてんかんや多動などの症状に対して、日常生活に支障が出るほどであれば、お薬で治療する場合があります。症状によって効果的なお薬が異なりますし、合併症によっては使えないお薬もありますので、よく主治医の先生と相談してください。

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監修・講座講師

大岡 治恵
日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科 学科長
日本福祉大学付属クリニックさくら 言語聴覚士
1990年から11年間、新城市民病院、岡崎共立病院等で言語聴覚士として勤務ののち、2001年より名古屋文化学園医療福祉専門学校専任教員、2008年より日本福祉大学中央福祉専門学校言語聴覚士科学科長として言語聴覚士養成に携わる。学生の演習施設、教員の臨床施設として併設施設「ことばと聴こえの支援室さくら」を開設、2020年日本福祉大学付属クリニックさくら開院後は、教員の傍らクリニックの言語聴覚士としても発達障害、構音障害、吃音等の臨床、および臨床研究を行っている。

日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科
日本福祉大学付属クリニックさくら

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