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アスペルガー症候群とは? 症状や特徴について 【専門家監修】

2023.11.24

アスペルガー症候群とは?

アスペルガー症候群は発達障害の一つで、コミュニケーション能力や社会性に障害があり、対人関係が苦手という特徴があります。また、限定されたものや手順に強い興味やこだわりがあるという特徴もあります。ことばの遅れや知的障害はないので、小さいころには気づかれにくく、大きくなっても周りからはちょっと変わった人などと思われがちです。症状のあらわれ方には個人差があり、幼児期にそれほどこだわりがなくかんしゃくなどが目立たない場合、集団生活や対人的なやりとりでトラブルが生じがちな就学期以降や成人期になってから社会生活に困難さを感じ、気が付く場合もあります。

アスペルガー症候群と自閉スペクトラム症は同じ?違う疾患?

アスペルガー症候群と自閉スペクトラム症とはどんな関係があるのでしょうか?以前は知的障害の有無や、ことばの発達の経過など症状特徴の違いから、いくつかのグループに分けてそれぞれに違う診断名をつけていました。でもそれは症状の程度の差であって、それぞれ境界線を引くのはとても難しいことなので、それらを一連の続き(スペクトラム)として捉えようということになり、正常から重症まで、境界が曖昧で連続性があるという意味で、現在は「自閉スペクトラム症」もしくは「自閉症スペクトラム障害」と呼ばれるようになりました。ですから、アスペルガー症候群またはアスペルガー障害という名前は、現在自閉スペクトラム症という名前に統一され、正式な診断名ではなくなりました。ただ、知的障害やことばの遅れはないものの、コミュニケーションでうまくいかないことが多いという特徴を強く持つという意味で、現在でも状態像を表すことばとして使われています。

アスペルガー症候群の症状・特徴

<特徴①>対人関係や社会的コミュニケーションの困難さ

会話は表面上問題なくできますが、行間を読むことが苦手で、字義どおりの意味で解釈する傾向があります。そのため、冗談や皮肉が理解できず、他者の真意を勘違いしやすい傾向があります。人の心情を直感的に理解し共感したり、人の気持ちを想像したりすることが苦手なために、場の空気を読むことや、相手の気持ちに共感する言動がとれず、対人関係でトラブルを抱えがちです。

<特徴②>特定のものや行動における反復性やこだわり

興味の偏りがあり、興味のあることには過剰に熱中します。規則性のあるものを好み、それが崩れることを極端に嫌う傾向があります。また、決まった手順や物の置き場所などへのこだわりがあり、それを崩されることに強いストレスを感じる場合があります。

「空気が読めない」というけれど、実際何が苦手なの?

俗語の「コミュ障」「アスペ」などのことばは、SNS(ソーシャル・ネットワーク)などで、他人と円滑にコミュニケーションをとることや、他人の気持ちに共感することが苦手な人に対して用いられるようになった表現ですが、医学的な観点からみたコミュニケーション障害やアスペルガー症候群とは厳密には定義が異なります。

対人的なコミュニケーションにおいて、相手の心情や文脈意図を読み取ることを「空気を読む」といいますが、「空気」には色や形はないため、その時、実際には健常の人は何を読み取っているのでしょうか?
健常者と言われる人は、相手の表情だけでなく、その時の姿勢、身振り手振り、イントネーション、前後の文脈などから、そのことばが本音か建て前か、皮肉かなどを判断しています。アスペルガー症候群はそういったことば以外の情報を同時に受け取って総合的に判断するのが苦手なため、「わざわざやってくれてありがとう」と嫌味をいわれても、相手の口調や表情に注目できず字義通り感謝されたと捉えてしまうなど、ことばの裏にある真意を読み取ることがとても苦手です。 

また、アスペルガー症候群は自分がアウトプットする際にも、これらのことに同時に気を配ることが苦手です。そのため、相手の立場や前後の文脈を踏まえた言動ができず、思いやりがないなどと勘違いされてしまうこともあります。壁に寄りかかりながら話を聞く、相手の話に興味がないとあからさまにつまらなそうな表情をしてしまう、叱られた直後でもニコニコした表情をしてしまうなどの行動をとって、相手を不愉快にさせてしまうこともあります。相手の容貌や体型などについてコメントして人を傷つけていることに気づかないこともあります。本人に悪気はなく、そういった行動が相手を不愉快にしていることは思っていないため、「なぜか突然相手が怒りだした」と認識している場合がほとんどです。

共感性やコミュニケーションの問題以外の苦手や困りごと

アスペルガー症候群に限らず自閉スペクトラム症の人々は、失敗することを極端に恐れる傾向にあります。ですからテストで×がつく、ゲームに負ける、他人に誤りを指摘されるなどのことに対して、感情が大きく崩れる、そういった状況にならないためにそもそもやりたがらないなど極端な行動をとることがあります。急な変化や変更に対しては、とても不安が強くなります。自分の想定している段取りと異なると怒り出す、不安を払しょくするために爪噛みや指吸いなどの行動をしてしまうお子さんもいます。

アスペルガー症候群や自閉スペクトラム症の人々の多くに感覚の過敏さがあります。個人差がありますが、例えば、特定の洋服の手触りがチクチクして苦手、小さな音でも気になって集中できない、鮮やかな色や光に対して過敏で気分が悪くなる、においが気になって吐きそうになるなどです。また何かの音があると人の会話を集中して聞くことができず内容が理解しにくいなど、聞き取りにくさを訴える人もいます。

また発達性協調運動障害(いわゆる不器用さ)が合併することがあり、学校では丁寧な文字が書けない、図工や楽器演奏など細かい手作業が苦手、縄跳びや器械運動などが苦手、などが課題になってきます。
そのほか、不注意や衝動性が合併すると、身の回りのものが片付けられない、我慢ができず手や口が出てしまってトラブルになる、ゲームの時間やお金の使い方などがうまく制御できないなどの問題を抱えることがあります。
これら多くの困難をかかえるアスペルガー症候群の人たちですが、小さなころから遊びの中で少しずつ、先の見通しをつけて不安を払拭する、こだわりごとについて妥協する、失敗しにくいコミュニケーションの方略などを学んでいくことは可能です。

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監修・講座講師

大岡 治恵
日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科 学科長
日本福祉大学付属クリニックさくら 言語聴覚士
1990年から11年間、新城市民病院、岡崎共立病院等で言語聴覚士として勤務ののち、2001年より名古屋文化学園医療福祉専門学校専任教員、2008年より日本福祉大学中央福祉専門学校言語聴覚士科学科長として言語聴覚士養成に携わる。学生の演習施設、教員の臨床施設として併設施設「ことばと聴こえの支援室さくら」を開設、2020年日本福祉大学付属クリニックさくら開院後は、教員の傍らクリニックの言語聴覚士としても発達障害、構音障害、吃音等の臨床、および臨床研究を行っている。

日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科
日本福祉大学付属クリニックさくら

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