FUKU+TOPICS

ホーム FUKU+TOPICS アスペルガー症候群のある子どもの接し方とは? 対応や支援の方法について 【専門家監修】

アスペルガー症候群のある子どもの接し方とは? 対応や支援の方法について 【専門家監修】

2023.12.04

アスペルガー症候群とは?

アスペルガー症候群は発達障害の一つで、コミュニケーション能力や社会性に障害があり、対人関係が苦手という特徴があります。また、限定されたものや手順に強い興味やこだわりがあるという特徴もあります。ことばの遅れや知的障害はないので、小さいころには気づかれにくく、大きくなっても周りからはちょっと変わった人などと思われがちです。症状のあらわれ方には個人差があり、幼児期にそれほどこだわりがなくかんしゃくなどが目立たない場合、集団生活や対人的なやりとりでトラブルが生じがちな就学期以降や成人期になってから社会生活に困難さを感じ、気が付く場合もあります。

アスペルガー症候群の症状・特徴

<特徴①>対人関係や社会的コミュニケーションの困難さ

会話は表面上問題なくできますが、行間を読むことが苦手で、字義どおりの意味で解釈する傾向があります。そのため、冗談や皮肉が理解できず、他者の真意を勘違いしやすい傾向があります。人の心情を直感的に理解し共感したり、人の気持ちを想像したりすることが苦手なために、場の空気を読むことや、相手の気持ちに共感する言動がとれず、対人関係でトラブルを抱えがちです。

<特徴②>特定のものや行動における反復性やこだわり

興味の偏りがあり、興味のあることには過剰に熱中します。規則性のあるものを好み、それが崩れることを極端に嫌う傾向があります。また、決まった手順や物の置き場所などへのこだわりがあり、それを崩されることに強いストレスを感じる場合があります。

周囲の人たちの対応や接し方で気を付けるべきことは?

ことばで伝えたことは字義通りに解釈しがちなため、指示を出す場合はあいまいな表現は避け、出来るだけ具体的にするとよいでしょう。小学校で「春を探しに行こう。」という課題が出たとします。「春」という具体物はありませんから、「春になると咲く花は何かな?」「春になると出てくる虫は何かな?」などとひとつひとつ質問してあげましょう。そして、挙げられた具体的な花や虫を探すよう指示します。その際、「何時何分までに探して見つからなかった場合は教室に戻る」ということも併せて指示するなど、想定外の事態への具体的対処方法も明確にするとよいでしょう。
また、段取りが苦手なため、具体的にスケジュールを示す、急な変更は避ける、変更がある場合は文字や写真などで視覚的に変更が分かるように提示してあげるとよいでしょう。新しい場面に慣れるまでは出来るだけ同じパターンやスケジュールにしてあげると安心でしょう。いつもと違う手順に対しては不安が強い人が多いのですが、少しずつ変化や変更を受け入れて妥協できるようにしていくと、将来的にストレスが少なく暮らしやすくなると思います。
相手の気持ちを推測するのは特に苦手なため、例えば爪噛みをして唾液が付いた手で友達の持ち物を触って嫌がられるなどのトラブルになることがあります。このように不適切な言動をとった場合は、やめるように強くたしなめても、なぜいけないのか理解できません。その時相手はどう思っているのかを短く解説する、どのように行動するとよいのか具体的にとるべき行動を示すようにしましょう。
長々とお説教をしても、耳から入ってきた情報を把握するのが苦手な傾向がありますから、「唾がついたら相手が嫌だと思う。」「許可を得ていないのに突然さわるとびっくりする。」というふうに短く伝えます。しかし、すぐに応用はきかないため、他の場面では同じ失敗をしがちです。「何度言ってもわからない」と思わず、似たような場面でも丁寧に相手の気持ちの解説、取るべき行動の指示を繰り返していくと、次第に自分がしがちな失敗のパターンがつかめてきます。

治療や支援できることは?

アスペルガー症候群の症状は、トレーニングによって困難が軽減する部分もありますが、基本的には「治らない」ものです。ですが、支援できることはたくさんあります。将来的に目標とするのは、自分の認知のパターンの特徴をよく認識すること、そして、大きな失敗をしないために工夫ができるようになることです。そのためには小さいころから、トラブルになったことを強く叱るのではなく、なぜそのようなことが起きたかを短く解説し、対処の仕方を一緒に考えてあげることが重要です。
強く叱れば、その場ではその行動は止むでしょうが、叱る人が身近にいない場合に自分でコントロールする力が育ちません。トラブルや失敗が起きた際に、一緒に対処の方法や工夫を考えてくれるサポーターがいることで、相談することの大切さや工夫の仕方を学ぶことができます。
トラブルを未然に防ぐことばかりを考えがちですが、小さな失敗やトラブルとその対処の仕方をたくさん経験していくことで、将来的に自分でトラブルになりそうなことを察知して事前に工夫できるようになれば、ずいぶんと暮らしやすくなるはずです。自分ではその言動の不適切さが認識できない場合でも、お友達と遊ぶ中でほかの人の不適切な言動には気づくことができることも多いものです。対人関係の困難への対処は、机の上で知識だけ学んでも実践できるものではありません。遊びや学校生活など対人関係の中で少しずつ実感していくことが重要です。

子どもと楽しく関わり、発達を見守ろう!

オンデマンド講座「親子で楽しく遊びたい ~発達が気になる子どもと遊び~ 」では、主に情緒面・行動面・対人面での発達の心配などのため、お子さんと「うまく遊べない」、「関わり方が難しい」、「どう対応していいか分からない」と感じている保護者の方が、安心してお子さんと関わり、遊ぶことができるようなヒントを提供することを目的としています。 
「親子で楽しく遊びたい ~発達が気になる子どもと遊び~ 」コンテンツも含みこんだ保育所・幼稚園・児童発達支援事業所・放課後等デイサービスなどで働く職員向けのオンデマンド研修(39講座・58時間)はこちら。

監修・講座講師

大岡 治恵
日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科 学科長
日本福祉大学付属クリニックさくら 言語聴覚士
1990年から11年間、新城市民病院、岡崎共立病院等で言語聴覚士として勤務ののち、2001年より名古屋文化学園医療福祉専門学校専任教員、2008年より日本福祉大学中央福祉専門学校言語聴覚士科学科長として言語聴覚士養成に携わる。学生の演習施設、教員の臨床施設として併設施設「ことばと聴こえの支援室さくら」を開設、2020年日本福祉大学付属クリニックさくら開院後は、教員の傍らクリニックの言語聴覚士としても発達障害、構音障害、吃音等の臨床、および臨床研究を行っている。

日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科
日本福祉大学付属クリニックさくら

関連講座

よく一緒に読まれている記事