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うちの子はことばが遅れている? ことばが遅れる原因と、ことばを育てるために家庭でできること【専門家監修】

2023.10.13

ことばが遅いかどうかの判断の目安

健診で「少しことばが遅いようですね」と言われたら、「そのうちに出てくる?何かの障害かもしれない?」と心配になりますよね。「ことばが遅い」という場合、実際に観察できるのはお話している語ですから、どうしても何語話せるか、どのくらいの長さで話せるかが気になってしまいますが、ことばというのはまず理解できるようになって、少し遅れて分かるようになった単語が話せるようになります。ですから遅いかどうかの判断には、実は「どのくらい理解できているか」が重要になってきます。

1歳半健診のころの目安

多くのお子さんが1歳のお誕生日を過ぎると、カタコトで「マンマ」、「ワンワン」など意味のある単語が言えるようになります。この時それに先駆けて、大人が話しかけた単語が理解できるようになっているのです。まずはパパやママが「ワンワン」といったらそちらを見るか、「ブーブー」といったら車を指さすかどうかを観察してみてください。1歳から1歳半くらいの間にいくつかの単語が理解できるようになるのが目安です。

3歳健診のころの目安

2歳前後には語彙も増えて2語文が分かるようになります。「おてて洗う」、「お風呂に入る」などの2語文の指示が分かるか、「大きい」、「小さい」などの概念を表すことばが分かるかが目安です。3歳くらいになるといろいろな色の名前や「動物」「食べ物」などのカテゴリーを表す語も分かるようになります。お話できなくても、「黄色い帽子持ってきて」など3語文くらいの指示どおりに行動できるかどうか観察してみてください。
乳幼児期の子どものことばの発達は個人差がとても大きく、また環境や、引っ込み思案かどうかといったそのお子さんの性格も関わってくるため、上記の目安に当てはまらないからと言って、すぐ「ことばが遅れている」とは断言できません。

ことばが遅れる原因

聴こえの問題

耳の聞こえが悪いことでことばが遅れる場合があります。重度の聴覚障害があれば、新生児の時期や健診の時に発見され気づかないということはないと思いますが、中耳炎などの耳の病気を繰り返すお子さんでは、途中から聞こえにくくなる、片耳だけ聞こえにくい、高い音だけ聞こえにくいなど、普段ある程度の大きさの音には反応するので、発見が遅れる場合があります。

知的発達の遅れ

知的な発達全体がゆっくりの場合、ことばの発達もゆっくりになります。この場合、運動や着替え、食事などの動作、おむつの取れる時期、お絵描きや遊び方なども、同じくらいの年齢のお子さんよりゆっくりで幼い感じになります。

自閉スペクトラム症などの発達障害

知的障害がない場合でも、自閉スペクトラム症などの発達障害が原因でコミュニケーションに遅れや偏りが生じることがあります。視線が合いにくい、ちょっと普段と違うことがあるとパニックになる、かんしゃくが強い、遊び方にこだわりが強いなどの特徴があり、お友達とうまく遊べない、トラブルになるといった特徴がみられます。ことばは、まったくでない場合から、たくさんおしゃべりできる場合までさまざまですが、質問したことに答えない、一方的にDVDのセリフやコマーシャルのフレーズを言う、オウム返しになってしまう、独り言が多いなど、コミュニケーションの取りにくさが特徴です。

ことばだけが遅れる場合

ことばが遅れる原因は様々ですが、今の医学ではっきりわかっていないものもあります。ことばの出始めが遅く、2~3歳過ぎになってやっと単語を話し始め、4、5歳くらいまでカタコトしか話せなかったけれど、その後たくさんおしゃべりできるようになって追いついてしまう、所謂「レイトトーカー」という状態もあり、これは「障害」ではなく個人差の範疇です。知的障害や自閉スペクトラム症などの発達障害がないにもかかわらず、4、5歳になっても追いつかずにことばの遅れだけがある場合、特異的言語発達障害などと呼ばれます。ことばの理解は年齢相当にできて、ことばの表出だけが遅れる場合と、理解面と表出面の両方が遅れる場合があります。3歳児健診の時点で「レイトトーカー」と言われたお子さんのうち、15~20%がこの特異的言語発達障害の状態に至ると考えられています。これらのことばの遅れは就学前後にはあまり目立たなくなるのですが、学習に必要な言語力には到達していないことが多く、その後の学習に影響を及ぼすことがあります。またその後、限局性学習症(いわゆる学習障害)に移行するリスクが高いことも指摘されています。

ことばを育てるために、家庭でできること

「様子をみる」とは何をみること?

健診で「様子を見ましょう」と言われた場合、「様子」って何を見ればよいのか、家庭で何かできることはないのかと不安になると思います。「様子」を見るとは、先ほどご説明したことばの発達の目安を参考に、お話しできることばの数がそんなに変わらなくても、理解できることばが増えてきているかを観察していくとよいと思います。その他、かんしゃくや、こだわりなどの特徴に変化があるか、着替えやトイレなど生活習慣の自立ができるようになるかにも注目してみてください。

お子さんへの話しかけ方

また、ご家庭でお子さんへ話しかけるときは、今理解できる語彙や長さを意識するとよいでしょう。まだ単語の理解ができていないようだったら、実物を見せてから行動しましょう。例えば園に行くときは通園の鞄や帽子を見せる、車に乗るときは車の鍵を見せてから行動するなどです。単語が分かるようになってきたお子さんはなるべく具体的な単語で話しかけましょう。
ある程度分かる単語の数が増えてきたら、一つ語を付け加えて話しかけるようにしてみましょう。単語なら2語文、2語文なら3語文です。例えばお子さんが「ワンワン」と言ったら「大きいワンワンだね」、「ワンワンいっちゃったね」、お子さんが「黒いワンワン」といったら「黒いワンワンお散歩してるね」といった具合です。なるべく今、目の前で起きていること、子どもが興味を持ったことについて、意識してことばに出してみましょう。 

絵本の読み聞かせなど、やった方がよい遊びは?

絵本を読み聞かせするとよい、動画を見せっぱなしにするのはよくないなど、いろいろと言われますが、その時にお子さんと楽しい時間を共有するのが目的ですので、絵本も動画も要は使い方次第だと思います。遊びの中でどのようにお子さんに働きかけたらよいのかについては、後に紹介している講座をご覧ください。

ことばのことを相談できる専門機関

様子を見ていて不安なことがある場合は、健診の時に担当してくれた保健師さんなどに相談してみましょう。専門的な医療機関や児童発達支援の事業所など、相談先を紹介してもらえると思います。
子ども発達センター、療育センター、総合病院、リハビリテーション病院、小児科、耳鼻咽喉科、歯科クリニックなどの中には、言語聴覚士や作業療法士などの専門家をおいて、お子さんの発達支援を実施ししているところがあります。どこの施設に言語聴覚士がいるか、日本言語聴覚士協会、各都道府県言語聴覚士会で調べることができます。ホームページに検索サイトがある、メールで問い合わせをすると答えてくれるなど、都道府県によって対応は異なりますが、分からないことがあれば、まず問い合わせてみてください。 

児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業所

最近はこれらの事業所で言語聴覚士をおいて専門的な支援をしているところが増えています。 

子どもと楽しく関わり、発達を見守ろう!

オンデマンド講座「親子で楽しく遊びたい ~発達が気になる子どもと遊び~」では、主に情緒面・行動面・対人面での発達の心配などのため、お子さんと「うまく遊べない」、「関わり方が難しい」、「どう対応していいか分からない」と感じている保護者の方が、安心してお子さんと関わり、遊ぶことができるようなヒントを提供することを目的としています。
詳しくは下記ボタンのリンク先のホームページから。
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監修・講座講師

大岡 治恵
日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科 学科長
日本福祉大学付属クリニックさくら 言語聴覚士
1990年から11年間、新城市民病院、岡崎共立病院等で言語聴覚士として勤務ののち、2001年より名古屋文化学園医療福祉専門学校専任教員、2008年より日本福祉大学中央福祉専門学校言語聴覚士科学科長として言語聴覚士養成に携わる。学生の演習施設、教員の臨床施設として併設施設「ことばと聴こえの支援室さくら」を開設、2020年日本福祉大学付属クリニックさくら開院後は、教員の傍らクリニックの言語聴覚士としても発達障害、構音障害、吃音等の臨床、および臨床研究を行っている。

日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科
日本福祉大学付属クリニックさくら

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