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自閉スペクトラム症(ASD)への療育とは? 治療法やトレーニングについて【専門家監修】

2023.10.13

自閉スペクトラム症(ASD)への療育

療育とは障害のある子どもの発達を促し、日常生活を自立して送れるように援助することをあらわすことばです。自閉スペクトラム症は薬では治らないけれど、療育によってできることを増やし、行動特徴によって生じる困りごとやトラブルに対する工夫や援助をみつけることで、暮らしやすくしていくことが目的です。

「早期療育」というけれど、早ければ早いほどいいの?

障害の種類や重症度によって、どのくらいの年齢から支援を始めればよいかは変わってきます。ただ、かんしゃくやこだわりなどの育てにくさが小さなころからある場合、その原因や、よりよい対応方法を知っていれば、子育てに対するストレスや辛さが違ってきます。ですから、原因がわからずイライラして強く叱ってしまったり、子育てに疲れてお母さん、お父さんが抑うつ的になってしまう前に、早めに相談できる場所を確保することは大切なことです。

療育機関にはどのようなところがあるの?

こども発達センター、総合医療療育センターなど、地域によって名称は様々ですが、総合的な支援のできる公的な機関が設置されています。そのほかに、自治体から通所受給者証を受けることで利用できる児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所、医療保険で言語聴覚療法や作業療法などのトレーニングが受けられるところなど、「療育」を受けられる施設はたくさんあります。ただし、地域によって施設の数は異なりますし、施設によって対象としているお子さんの年齢や条件、提供しているサービスが違います。お子さんの年齢や特徴によって、どのようなところが向いているのか、公的な援助が受けられるかどうかわからない場合には、地域の子育て支援センターや療育センター、乳幼児健診の担当保健師さんなどに聞いてみましょう。 

治療法やトレーニングはどのようなものがあるの?

作業療法

国家資格である作業療法士が実施し、その治療手段としてさまざまな作業を用いる療法です。子どもの作業療法では、着替え、食事、セルフケア、遊びなど日常生活に関わるすべての諸活動を「作業」と位置づけ、不器用さや認知発達の遅れに対してトレーニングを実施します。特に自閉スペクトラム症(ASD)に対しては、座る姿勢の安定や、こだわり行動へのかかわり方、認知発達の偏りや感覚過敏への対応、ソーシャルスキルなどの支援を実施しています。

言語聴覚療法

国家資格である言語聴覚士が実施し、音が聞こえない、あるいは聞き取りづらい、ことばが出てこない、ことばが遅い、読み書きが上手くできない、声を出しにくい、発音が悪い、ことばが詰まるなどことばや声に関する問題のあるお子さんへの支援をします。自閉スペクトラム症(ASD)に対しては、ことばの遅れ、コミュニケーションの取りにくさに対するトレーニング、こだわり行動やソーシャルスキルへの支援などを実施しています。

ソーシャルスキルトレーニング(SST)

ソーシャルスキルトレーニングとは、ロールプレイやゲームなどさまざまなプログラムを通して対人関係など社会生活に必要なスキルを学んでいくトレーニングのことです。対人関係でのトラブルや感情コントロールで困難がある子どもに有効とされています。
 公認心理師、言語聴覚士、作業療法士などの専門家が実施している場合もありますが、実施するのに特に資格は必要なく、学校、児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業所などで教員や指導員が実施しているところも多くあります。

ペアレントトレーニング

自閉スペクトラム症(ASD)など発達障害のある子どもの養育者に対して、子どもの行動特徴の理解、よりよい関わり方、対応方法や工夫を学ぶプログラムのことです。専門家が実施する以外に、研修を受けた指導員や教員が実施している場合もあります。 

その他のトレーニング

そのほか、支援事業所のホームページなどを見ると、応用行動分析学(ABA)、TEACCHプログラム、感覚統合療法など様々な名称の支援方法が掲載されていますが、これらは支援のための理論や体系のことで、特定の資格取得者が実施する「療法」ではありません。
様々な専門家が、これらの理論や体系を踏まえて支援している場合がありますし、研修を受けた指導員や教員が様々な活動の中で取り入れている場合もあります。

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監修・講座講師

大岡 治恵
日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科 学科長
日本福祉大学付属クリニックさくら 言語聴覚士
1990年から11年間、新城市民病院、岡崎共立病院等で言語聴覚士として勤務ののち、2001年より名古屋文化学園医療福祉専門学校専任教員、2008年より日本福祉大学中央福祉専門学校言語聴覚士科学科長として言語聴覚士養成に携わる。学生の演習施設、教員の臨床施設として併設施設「ことばと聴こえの支援室さくら」を開設、2020年日本福祉大学付属クリニックさくら開院後は、教員の傍らクリニックの言語聴覚士としても発達障害、構音障害、吃音等の臨床、および臨床研究を行っている。

日本福祉大学中央福祉専門学校 言語聴覚士科
日本福祉大学付属クリニックさくら

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