ヒトとカワウ タイトル

飛ぶカワウ小さなイラスト


<鵜の山>
生態

■<鵜の山> 生態■

1990年、<鵜の山>にカワウが戻ってきてから、すでに10年を経過した。その間、愛知、静岡、三重など中部、東海の地域にカワウが一般に見られるようになった。
<鵜の山>など美浜のコロニーでは、例年、12月中旬になると、頭部を白く飾った成熟したカワウ―シラガウ(写真1)が見られる。腰部の白色斑も目につく。成熟したカワウが集合し、営巣―繁殖が始まる。

(写真1)シラガウ 鵜の山の現況
白色の飾り羽は数十日もすると脱落

集合

1―3月には多数のシラガウが集合し、成鳥のほとんどすべてがシラガウで占められる(図1)。樹間の各所で雄が雌を誘うディスプレーや、巣作り、抱卵。育雛などの繁殖活動が、同時進行的に観察できる(写真2、3)。また地表に下りて、巣材を集めるカワウも多数見られる。

4―5月は営巣域が拡大し、雄、雌が鳴きかわし、ヒナの声がしきりに聞こえ、コロニー全域は喧騒だが、活気に充ちた繁殖の盛期である。

6―8月には、巣立ちする幼鳥が加わり、年間を通じて個体数が最大に達する。巣から離れ、樹間で親に餌をねだる幼鳥もいる。幼鳥は全体に薄く茶色であり、むね―腹部が白色かまだら様に見える。池の岸にも多数の個体が現われてくる。

8月、ヒナの声がほぼ途絶え繁殖期が終わる。

(図1) 美浜コロニーにおけるカワウ―シラガウ、    
                  成鳥、幼鳥―構成比

なおシラガウは1―4月まで教え、以後は成鳥に一括した。坊之奥、1986、1987

 ●――● 成鳥(シラガウを含む)
 ●――● シラガウ
 ●――● 幼鳥

(写真2)カワウのディスプレー      
鵜の山の現況
雄が奇妙な姿勢で雌を誘う
(写真3)巣作り
鵜の山の現況
雄が巣材を運び、雌がアレンジし巣を作る共同作業
(写真4)営巣活動
鵜の山の現況
各所で造巣、抱卵、育雛などが同時進行、中央の巣では親がヒナ3羽に給餌中、上池の岸、3月

分散

9月には、河口域や周辺の各地にカワウが眼につくようになり、コロニーの個体数が減少してくる。10月には、河川の上流域や県外など、日常の生活行動圏外へ分散していく。10―11月は、コロニー生息域が縮小し、個体数が盛期の約60%程度に減少する。カワウを全く見ない場所も生ずる。この状態は12月にも続き、やがてシラガウの出現とともに、次年度の集合―繁殖が始まる。

美浜個体群の維持

巣作り約20日、抱卵約30日、育雛40―60日、成書には1繁殖期に2―3回繁殖に従事すると記載されているが、多くは1回であろう。一腹の卵数4個、1巣あたり2羽巣立ちとすれば、年間、美浜から幼鳥2000―3000羽が生産される。
幼鳥の10%はいずれも分散せずコロニーに定着する(定着群)が、約90%はコロニーから姿を消す。そのうちの10%が3年後、成熟してコロニー回帰(回帰群)し、定着群とともに繁殖に従事し、個体群の維持、増大に勤める。なお美浜では、カワウは少なくとも数年、年齢にして10才の頃まで繁殖に従事すると推定される。


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