ヒトとカワウ タイトル

飛ぶカワウ小さなイラスト


知多の
カワウ・現況

■知多のカワウ・現況■

天然記念物 <鵜の山>
鵜繁殖地
天然記念物鵜の山 繁殖地 面積約12ha, 昭和9年指定、正面に大日山(現鵜の山)、手前が堂前下池(現鵜の池)
カワウの夫婦とヒナ
(巣内)
カワウの夫婦とヒナ 左脚に緑色リング(1990年に標識)が見えるカワウは4才

カワウはペリカン目ウ科に属す魚食性の大型の水禽(スイキン)〈水鳥〉である。 わが国ではかつてよく見られた鳥種の一つであった。しかしながら、1960年代、高度成長の時期に、地域の開発が進み餌場やが奪われ、 農薬汚染なども重なり、わが国各地にあったカワウのコロニーは消滅した。
知多半島南部の美浜町には、わが国最大といわれるカワウのコロニー、天然記念物<鵜の山>繁繁殖地(<鵜の山>)がある。 そこからも、カワウは姿を消し1970年にコロニーとしての機能を失った。当時、カワウは<鵜の山>の東側の布土の丘陵地に、 約2000羽(1970)棲息するに過ぎなかった。

その後、環境状況が改善されたのか、1980年代、カワウの個体数はしだいに増え、 1990年には<鵜の山>に再び営巣した。また尾張旭と豊橋周辺にもコロニーが形成され(図1)、1993年には、菅田が新たに 美浜コロニーに加わった。
全国的にもカワウの個体数は増加している。現在、カワウは東北、関東、中部、近畿で繁殖し、冬季は北海道、 沖縄以外のほぼ全国に分散する。総個体数は、約5万羽程度と推測される。

【図1】愛知県におけるカワウのコロニーと日常の生活行動圏
カワウの生活行動圏図
美浜コロニー:消滅
【図2】美浜コロニー過去と現在美浜の鵜コロニー図
赤斜線部:過去の のカワウ生息域(1830-1969) 
青塗部:現在(1999.3)の生息域

愛知県には、1997年12月の調査では、約2万羽(19552羽)数えられた。現在、美浜には<鵜の山>ほか、坊之奥、菅苅、菅田の4コロニーがあい接して位置し(図2)、個体数は計約1万羽(9526羽)だった。
 一時、トキと同様に絶滅が憂慮されたカワウが、危機を脱した原動力として、主役を演じたのは、まさに知多のカワウであろう。しかしながら個体数の増加は、一方において、木を枯らし景観を損じ、あるいは養殖魚や放流魚を襲う害鳥として、カワウは俄に苦情や非難の対象となった。

全国的にカワウが激減し、各地のコロニーが消滅した状況に耐え、なぜ知多では<鵜の山>が復活したのか。そこには、ウ糞の「肥料タル哉毎年請負者ニテ売却シ該金ヲ以テ本村小学校資金ニ充テ」(銃猟禁制区拝借願、明治21年)た、ヒトとカワウ社会が共栄した<鵜の山>百数十年の歴史があった。カワウは今もなお、懐かしき友なのである。

 


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