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「ふくし」を思う

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講演録

山本秀人教授 講演録 「知っておきたい乳幼児期の運動・認識・ことばの発達」

日本福祉大学セミナー 文化講演会
「知っておきたい乳幼児期の運動・認識・ことばの発達」

  • 講師:
    山本 秀人 教授(日本福祉大学 子ども発達学部 学部長)
  • 日程:
    2013年8月3日(土)

※所属や肩書は講演当時のものです。

 運動・認識・ことばの発達は、一見ばらばらのように見えますが、実は相互に関連しあいながら発達していきます。例えば、子どもがとび箱をとぶという運動ができるようになるのは、何かがわかったからです。わかるとは認識するということです。そして、人間の認識が高まっていく大前提として、ことばの発達があります。運動と認識とことばの三つは、非常に密接な関係性を持っているのです。

なぜ運動ぎらい・体育ぎらいが生まれるか

 運動ぎらい・体育ぎらいということばがありますが、生まれつき運動ぎらい・体育ぎらいの人はおらず、最初に客観的にきらいと感じるようになるのは4歳児ごろとされています。4歳児になると、自分を客観視できるようになり、友だちと比べてどうも自分は運動があまりうまくできないんだと感じると、運動する場面を避けるという選択をしはじめます。

 私は毎年ゼミ生に「体育への思い」というテーマでレポートを書かせているのですが、ある学生は、幼稚園のときに逆上がりができず、先生から「~ちゃんはできるのに、どうしてあなたはできないの?」と言われ、その一言によって運動ぎらいになったと書いていました。逆上がりができないのは、やる気や根性がないからではなく、技術的なつまずきがあるからです。逆上がりにもとび箱の開脚とび越しにも、成功のためのポイントがあります。もし先生がそれをご存じなら、そんなことばは出てこなかったはずです。きつい言い方をすれば、できるように指導できない先生が責任を子どもに押し付けた結果、運動ぎらい・体育ぎらいが作られたとも言えます。

 『ちびまる子ちゃん』の作者・さくらももこさんは、「中学校における体育の授業のこと」と題して、「小学校高学年ごろから体育の授業がいやでいやで、中学校では体育禁止令が公布されればよいと切実に思った。学習ものの場合は授業中眠っていれば現実逃避できるが、体育のような実技ものはそうはいかない。一体、あんなにも私に恥をかかせた体育の授業は、人間形成において、学校教育の中でとり入れなければならないほどの重要な役割を、どのへんに秘めているのであろうか。ギモンである」と書いています。この文章は、体育は何を教える教科であるのかという、教科内容研究の必要性を示唆しているような気がします。

 乳幼児期には多様な運動発達が見られますが、その背景には認識活動が介在しています。とび箱を何段とべたかということも大事ですが、同時に認識面をきちんと育てる必要があります。運動発達の過程では、運動能力が伸びる時期にその運動をやりたがるという特徴が見られます。3歳児は、「見てて、見てて」と言って少し高い所から飛び降りたがりますが、これは飛び降り運動によって降下緩衝能という能力を身に付けようとしているのです。

 降下緩衝能とは、足首と膝と腰の関節を使って、飛び降りたときの衝撃を和らげる能力で、何度も高い所から飛び降りることで身に付きます。3歳児がやたらに飛び降りたがるのは、この能力が身に付くのがこの時期だからです。ですから、危ないからと止めてはいけません。降下緩衝能を身に付けた子どもの走り方は全然違います。走ると全体重が片足に掛かるので、衝撃を和らげる能力が身に付いた子どもの走り方はスムーズなのです。乳幼児期の子どもはさまざまなサインを示すので、それを読み取って対応することが大切です。

 また、「見てて、見てて」ということばにも意味があります。この時期は自分がどのように思われているかが非常に大きな関心事で、大人が認めて褒めてくれることをすごく期待しているのです。これは3歳児の大きな発達的特徴の一つです。

 運動の発達を考えていく際には、運動学習がキーワードになります。「運動が学習?」と思われるかもしれませんが、人間の発達は自然発生的に展開されるものではなく、さまざまな学習を通じてなされますが、それは運動にも当てはまります。よく体が動きを覚えると言いますが、筋肉が動きを覚えることはありません。運動は学習により脳に記憶されるのです。そして、当然ながら運動学習の差は質の差として出てきます。

 また、用具や物を扱う運動は、一定の運動学習や習熟練習が不可欠です。うまくできない子どもは技術的なつまずきが生じている状態で、それが解消されればできるようになります。つまり、できないのではなく、うまくなる途中経過にあるのです。

 例えば、とび箱の腕立て開脚とびの最大のポイントは、手をついた位置より肩を前に出すことです。これをご存じの先生は「なんでとべないの」ではなく、「手をついたら、前にいるお友だちの顔をみてごらん」と言うことができます。顔を上げると頚反射で肩が前に出るからです。このような体の仕組みを理解した上で子どもに声掛けすることが、とても大切です。

※この講演録は、学校法人日本福祉大学学園広報室が講演内容をもとに、要約、加筆・訂正のうえ、掲載しています。 このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

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