田中
「大和ハウス工業様には私どもの卒業生がしばしばお世話になっており、誠にありがとうございます。学生は御社に会社訪問すると、必ずフアンになって帰ってきます。そのような御社の企業としての特色をお教えいただけますか。」
小池
「住宅メーカーとして広く認知されておりますが、「人・街・暮らし」の全てに関わりを持つこと、生活の各場面に事業領域を置いていることが特色です。私どもの区分けでは、戸建、アパート、マンション建築のハウジング事業、ショッピングセンターやコンビニエンスストアなどの商業施設建築のビジネス事業、リゾートホテル、ホームセンター、スポーツクラブについてはライフ事業と括っております。」
大和ハウス工業株式会社総合技術研究所の菅野様(左)と小池様(右)。
進路研究第4回目は、大和ハウス工業株式会社総合技術研究所の菅野様(左)と小池様(右)。研究所において菅野様は設計・開発に、小池様は商品開発・マーケティングに携わる。
田中
「多角的でありながらも、手堅いという印象があります。特にいわゆるロードサイドビジネスの展開が巧みだといわれていますね。」
小池
「昨今、ストック社会ともいわれ、店舗のリサイクルやリフォームなどは一定の需要がありますが事業の柱は住宅部門においています。」
田中
「こちらの総合技術研究所は全社的にどのような位置づけになりますか?」
小池
「大和ハウス工業は研究開発部門のほとんどを、こちらのならやま研究パークに総合技術研究所として集中させています。150名余りの研究員を擁しており、様々な研究開発を行っています。研究開発全体をくくるテーマは『あ・す・ふ・か・け・つ・の』。これは安心・安全、スピード・ストック、福祉、環境、健康、通信、農業それぞれの研究テーマの頭文字からとったものです。また本研究所には研究や事業活動の展示・体験スペースとして、「テクノギャラリー」が併設されており、幅広く先端技術の紹介も行っています。」
田中
「『あ・す・ふ・か・け・つ・の』というのは研究所の研究テーマであるとともに、新事業領域ということでもあるわけですね。研究所では燃料電池やロボットスーツ、電気自動車の開発など、先を見据えた研究開発を積極的に展開しておられるようですが、特に成長分野と考えられているのは、どの分野でしょうか?」
小池
「今日のお話のテーマでもある健康と福祉もその一つだと考えています。高齢化とは、マーケット全体の変化になるわけですから。当社のユニバーサルデザインの考え方は、使いやすさ、わかりやすさ、安全性に、住空間として適しているかどうかという観点をプラスした『フレンドリーデザイン』という考え方に基づくものです。ユニバーサルデザインとしての機能だけではなく、住空間に適合し、デザインや品質感、住宅としての美しさをプラスアルファすることが出来るか、お客様に我慢して使っていただくのではなくて、商品として魅力的かどうか。商品が魅力的であれば、比較的若い世代のお客様にも将来に向けて無理なく選んで頂けるのだと思います。  
この下の階のテクノギャリーでは、フレンドリーデザインの展示スペースもありますので、実物をご覧いただきながら、ご説明しましょう。」
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スライドベンチ
テクノギャラリーにて、『スライドベンチ』の座り心地を確かめる田中先生。
菅野
「この『スライドベンチ付きシューズボックス』が、当社のフレンドリーデザイン製品の第一号で、シューズボックスから必要な時に引き出すタイプのベンチです。使用しないときはしまうことができるので、意匠的にすっきりしているのはもちろんのこと、玄関スペースを有効に使うことができます。」
田中
「ベンチとしての強度を担保する材質や構造、座面の高さの調節など、何でもないように見えて人間工学的なノウハウが必要な商品ですね。」
フィンガーセーフドア
『フィンガーセーフドア』で、指の挟まれ具合をチェック。ご説明は菅野様。
ファミリースイッチ
『ファミリースイッチ』はコストのかからない工夫で、先生もお気に入り。
インテリジェンストイレ
話題の『インテリジェンストイレ』の先進技術に田中先生も感動。
菅野
「商品開発にあたっては、様々な方々の行動解析をきめ細かく行います。動作観察、身体負荷の測定、利用者の評価などを踏まえて、はじめて製品化されます。こちらの『フィンガーセーフドア』は吊り戸で指を挟まないようにしようということで開発が始まり、様々なタイプの戸から玄関ドアまで、屋内外でシリーズ化されているものです。開閉時の利用者の動作を様々な点から研究し、より安全で使いやすい戸を開発しています。また足元には足指を挟んだ時の被害を軽減するためのカバーを設けています。小さいお子様がドアの足元で足指を挟むことが多いってご存知でした?
こちらの『ファミリースイッチ』は、自立しはじめた子供が軽く背を伸ばせば届く1メートル10センチの高さに電気スイッチを設定しています。車いすの方でも操作しやすい高さです。またウォークインクロゼットや食品庫に適した『シンクロ引分け戸』は、引分け扉の片方を動かすともう片方も動くという仕組みで、大きな荷物を持ちながらでも扉の開け閉めがしやすいということで提案させていただきました。肩を揺らさずに開け閉めが可能ということで、子供からお年寄りまで、幅広い方々が扱いやすいものとなっています。これらのものは2008年のキッズデザイン賞を受賞したものです。」
田中
「コストのかからないものもありますし、デザイン的にもよくできていて、一つひとつに感性的な面白さがあると思います。」
菅野
「個々の商品というよりも、あくまで住宅としてトータルのデザインであるよう注意を払っています。例えば、こちらの『フラットドアストッパー』はロック機構をドアの中に入れ、デザイン的にすっきりさせたものです。階段の補助照明はLEDを使い、照明を点から線にすることで光のムラを無くし、段差を立体的に把握することができます。段差の解消という点では、こちらの『フラットスルーウィンドウ』は室内外の継ぎ目の段差を無くし、車いすでも出入りがしやすくなっています。またこちらは他社と共同開発した『インテリジェンストイレ』ですが、体重と血圧、尿温、尿糖などが計測でき、ホームネットワークを介してパソコンで家族全員の日常の健康管理や半年や一年のスパンでの情報の集約が可能です。これからの住まいの機能を代表する商品でもあります。」
田中
「住宅メーカーでトイレまで開発されているというのは御社だけで、まず技術的にここまでできるというのが、すばらしいと思います。家庭への普及はこれからの課題として考えればよいと思います。」
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田中
「菅野さんとユニバーサルデザインとの関わりについてお教えください。」
菅野
「大学ではプロダクトデザインを専攻しており、どちらかといえば人間工学の側から住居デザインに興味がありました。建築については、入社後勉強したものですが、一貫してユニバーサルデザインの研究開発を担当しております。当社は様々な領域で事業を行っておりますが、高齢社会に対応する一つの方法として、ユニバーサルデザインは非常に重要であると考えています。」
田中
「本学健康科学部には、バリアフリーデザイン専攻が属する福祉工学科とは別に、理学療法学、作業療法学、介護学の三専攻を有するリハビリテーション学科がありますが、リハビリの先生たちとは家をどこまで便利にすべきなのか、という点について議論になるところです。健康のためにはある程度不便な方がよいという考え方もあります。例えば、バランスボールなどを使ったエクササイズや、いわゆる足裏刺激などを、危険でない形で風呂や階段に取り入れるのはどうかとか。これは住むことでフィットネスになるというアイディアですが…(笑)。」
菅野
「確かにあまりにも便利すぎるというか、やりすぎは良くないと思います。そういった意味ではユニバーサルデザインも成熟してきたというところがあって、曲がり角にきているのかもしれません。ただし高齢の方や障がいを持つ方の生活範囲、行動範囲を拡げていくという意味では、QOLを下げることにはならないと思います。『あ・す・ふ・か・け・つ・の』での新しい研究成果を組み合わせて、このQOLをプラスしていくこと、またフレンドリーデザインの商品開発と紹介を通じて、裾野を広げていくというのが課題であると思います。」
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『ダイワマンX(エックス)』と田中先生と菅野様の記念撮影。
最後に田中先生のたっての希望で、『ダイワマンX(エックス)』と記念撮影。お忙しい中、快くご協力いただき、大変ありがとうございました。
田中
「最後になりましたが、本学バリアフリーデザイン専攻の人材像の評価をお願いします。」
菅野
「最近、お客様の問い合わせで多いのが、60代70代のお客様の将来に備えた建て替えの問い合わせです。現場では営業と設計がチームを組んでお客様に対応するわけですが、お問い合わせに対して的確に対応できるかどうかが勝負です。例えば、天井走行リフトをつけたいと言われた時に、お客様の立場に立って本当にそれが必要なのかどうか考えることができることは大変重要なことです。高齢化を背景にお客様のこうしたニーズはますます多様化すると考えられます。フレンドリーデザインについてもお客様との実際の接点の中で、的確にご提案できればと思います。その意味で建築と福祉の知識と経験を併せ持つということは、とても評価できると思います。」
小池
「もちろんユニバーサルデザインやバリアフリーについての素養を最初から持っている人材の方がいいと思います。昨今、老人施設やグループホームで多くの方が亡くなられるいたましい火災が続きました。高齢の、特に一人暮らしの方の事故が増えています。スプリンクラーが設置されていなかったなどの法規違反については問題外ですが、そもそも建物として、設計段階の基本的な部分で解決できるような問題も多いと思います。当社は1989年にシルバーエイジ研究所を置き、医療・介護施設の企画段階から開設まで一貫してサポートする専門の体制を作りましたが、少子高齢化はこれからも進行し、高齢者や認知症の方も含めた障がいを持つ方々のニーズはどんどん増えてきます。こうした社会全体のニーズをどう実際の建築技術や事業に反映させていくか、当社がより発展する際に見逃せない大きなマーケットではないでしょうか。」
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田中先生の感想
  • 2009年度の新設住宅着工戸数は77万戸と2008年秋の金融危機の景気後退や人口の減少などをうけて激減しています。しかし、大和ハウス工業をはじめとした住宅メーカー各社は、ただ指をくわえて、その危機到来を眺めていた訳ではありません。
    住宅メーカーといわれる企業の業態変化は目覚ましいものがあります。ぜひ、住宅メーカー上位各社(大和ハウス工業、積水ハウス、住友林業、積水化学工業、旭化成ホームズ、ミサワホームなど)の業態変化の内容(新しい事業への進出・投資)や各企業が何を目指しているのかを調べて特徴をつかんでください。
  • 特に今回訪問した大和ハウス工業は時間をかけて丁寧に軸足を幾つも創り上げています。ハウジング事業、ビジネス事業、ライフ事業という括りは面白く、ビジネス事業では様々な企業と連携し成功を収めています。
    これらの3事業の成功は、ただ単に大企業が資本力に任せて取り組んだものではなく住宅メーカーの強みを存分に活かした結果だと思います。
    ホームページなどで大和ハウス工業のこれらの取り組みを学んで欲しいと思います。そして大手不動産会社(三井不動産や住友不動産など)やゼネコン(鹿島建設や清水建設など)の取り組む同種の事業との差異を見出して下さい。
  • 今回お邪魔した大和ハウス工業では、様々なユニバーサルデザインの部品を開発し自社の住宅に取り入れています。そのように生活者の声を聞いて自社で開発している企業は数少なく、真面目さや誠意を感じます。
    具体的なユニバーサルデザインの工夫が住まい全体で体感できるので、ぜひ大和ハウス工業のショールームや住宅展示場を訪問しましょう。
企業プロフィール 大和ハウス工業株式会社ロゴマーク
大和ハウス工業株式会社
〒530-8241
大阪市北区梅田三丁目3番5号 
TEL(06)6346-2111(代表)
http://www.daiwahouse.co.jp/index.html
昭和30年4月5日創業 代表取締役社長 村上 健治
従業員数 13,723名(平成22年4月1日現在)
業務内容
●建築事業
【住宅系】 注文住宅・分譲住宅・別荘地・マンション・集合住宅・寮・社宅等の企画・設計・施工・販売・増改築
【建築系】 レストラン・店舗・オフィスビル・医療・介護施設・工場・倉庫等の企画・設計・施工・販売・増改築
●都市開発事業
リゾートホテル・ゴルフ場・別荘地の企画・開発・設計・施工、都市の再開発・地域開発の企画・設計・施工、別荘地の販売・管理、一般土木工事の企画・設計・施工・販売代理
●海外事業
海外への部材の輸出入、建設・合弁事業
●その他
環境エネルギー事業、ゴルフ場の企画・運営・集客