昔、使っていた道具を見て、認知症のおばあちゃんが、微笑んだ。

その声に応える 日福の学び

認知症の方を思いやる、苦しみや辛さに寄り添う想像力が原点です。

作業療法士として多くの認知症の方と接してきました。しかし、感情も言葉も忘れている、作業もできない、そんな方たちに対して、それまで身につけたはずの私の知識も技術も、まったく役に立たない、作業療法士としての壁にぶつかりました。認知症の方は、心の奥底でこれから自分がどうなるのだろうかということを不安に思い、怯えています。そんな方のために、何かできることがあるはずだ、と葛藤するなかで出会ったのが、「回想法」でした。その後、認知症患者さんと向き合うなかで、その方の歩まれた人生の歴史や思い出を教えていただき、思いを交わし合う回想法の手法によって、認知症の症状が改善されるという可能性を体験的に学ぶことになりました。作業療法士として認知症の方の苦しみ、辛さを想像し、何かできることはないかと模索し続けた日々。そして今、私は、認知症の方から引き出すことができた「笑顔」を、患者さん、医療スタッフ、そしてご家族の方々とともに共有できる喜びをかみしめています。

健康科学部リハビリテーション学科作業療法学専攻来島 修志 助教

高齢者の心の安定をはかる回想法は、
認知症の進行を遅らせることができる。

下のグラフからも分かる通り、認知症患者は2025年には675万人~730万人に達すると推測されています。増え続ける認知症患者に対して、具体的な対策が求められる今、注目されているのが“回想法”です。回想法とは、なつかしい昔の話をしてもらい、聞き手が共感したり受け入れたりすることで関係を築き、認知症の進行を遅らせようとする心理・社会的アプローチのこと。認知症への不安を抱える高齢者にとって、回想法を通じて過去を振り返ることは、失われた自尊心を取り戻すきっかけになるのです。その効果が期待され、回想法は介護施設などで認知症を発症している方の進行を抑制するために、また、認知症予防のために、さまざまな場面で活用されています。

「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」
(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学 二宮教授)による速報値

平成24年
(2012)
平成27年
(2015)
平成32年
(2020)
平成37年
(2025)
平成42年
(2030)
平成52年
(2040)
平成62年
(2050)
平成72年
(2060)
各年齢の認知症有病率が一定の場合の将来推計
人数/(率)
462万人
15.0%
517万人
15.7%
602万人
17.2%
675万人
19.0%
744万人
20.8%
802万人
21.4%
797万人
21.8%
850万人
25.3%
各年齢の認知症有病率が上昇する場合の将来推計
人数/(率)
525万人
16.0%
631万人
18.0%
730万人
20.6%
830万人
23.2%
953万人
25.4%
1016万人
27.8%
1154万人
34.3%

※出典:「平成27年 認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~ (新オレンジプラン) 資料1」(厚生労働省)より一部抜粋

report

2025年700万人の認知症、この問題を解く鍵がここにある。2025年700万人の認知症、この問題を解く鍵がここにある。

まちづくりの拠点のひとつ、北名古屋市回想法センターでの活動

今、先生が力を入れているのは、「認知症の予防」だ。今後、団塊世代の高齢化が進むなかで、全国で認知症を患う人の数は2025年に700万人に達するとの推計値もある。厚労省などが対策を進めるなか、先生は北名古屋市の進める「回想法事業」で、健康高齢者を対象に認知症予防のための回想法プログラムを実施している。この活動を通じて健康高齢者が認知症の方を援助する互助の仕組みが出来上がりつつある。認知症予防と高齢者の生きがいを生み出すこの取り組みが、地域の絆を深め、笑顔あふれるまちづくりにつながることを先生は願っている。

Profile

KIJIMA,Syuji
来島 修志(キジマ シュウジ)
助教
修士(医療・福祉マネジメント:日本福祉大学)

放送大学教養部(文科系)卒業(2003)
日本福祉大学大学院医療・福祉マネジメント研究科修了(2013)
医療法人朋和会東春病院(1985~1988)
国立療養所東尾張病院(1988~1990)
一宮市立市民病院今伊勢分院(1990~1993)
医療法人博寿会本部記念病院(1993~1996)
日本福祉大学高浜専門学校専任教員(1996~2010)
日本福祉大学赴任(2010)