依存症って、意志とか人間性とかの問題?

その声に応える 日福の学び

依存症の誤解・偏見、さまざまな障壁をなくし、適切な治療を受けられる環境を。

私は精神障害・疾患のなかでもとくに薬物依存症の方々と関わるケースが多くあります。薬物依存症は、意志や人格の問題と誤解されがちですが、そうではありません。これは「病気」です。したがって適切な治療が受けられれば、通常の社会生活が送れるように回復する可能性があります。しかし、周囲の誤解や偏見によって患者さんが萎縮し、治療を受けられなくなるケースもあります。社会的なバッシングだけではなく、制度上の障壁もあります。精神保健福祉法のなかでは精神障害に依存症も含まれていますが、現実には障害者手帳が取得できなかったり、障害年金が受けられなかったりするケースがあります。市町村によって制度の解釈に差があるのです。精神障害全般に言えることですが、患者さんを救うサービスや制度がまだまだ十分ではありません。私は精神保健にも携る医療ソーシャルワーカーとして、依存症の方の話に耳を傾けて、解決の方法を探ります。依存症の方の周りにある、さまざまな障壁や誤解、偏見を一つ一つ取り除くようご家族をはじめ周囲の人々から社会まで幅広く働きかけ、依存症の方が適切な治療を受けられるような状況を作り出したいと考えています。

社会福祉学部社会福祉学科医療専修山口 みほ 准教授

問題が深刻化している、危険ドラッグという新たな薬物。

薬物依存者の多くは、依存から抜けだせず、繰り返し薬物に手を出してしまう傾向があります。代表的な依存物質である覚せい剤の「再乱用者」は、覚せい剤事犯検挙者全体の61.1%(2012年度)。再乱用者が年々増加していることも懸念事項です。
また最近では危険ドラッグという新しい薬物も横行しています。2013年に危険ドラッグ(調査時点の名称は脱法ドラッグ)乱用の広がりについて全国レベルで調査した最初のアンケート(2013年 「厚生労働科学研究費補助金分担研究報告書 薬物使用に関する全国住民調査」)では、これまでに1回でも薬物を乱用したことのある人を示す生涯経験者の平均年齢が、危険ドラッグでは33.8歳と他の薬物よりも低い数値を表しました。つまり、危険ドラッグの乱用は過去の経験ではなく、直近の経験であり、それだけ若年層に乱用が広がっている可能性が示唆されているのです。

※出典:「平成26年 (啓発資料)薬物乱用の現状と対策」(厚生労働省)

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「情」と「理性」で、解決に向かう道のりを描く。「情」と「理性」で、解決に向かう道のりを描く。

現場の事例に触れ、現職MSW※と交流する活動 ※MSW=医療ソーシャルワーカー

現代では、国の方針で早期退院が病院に求められている。しかし患者さんは退院後にさまざまな不安を抱えているケースが多い。その板挟みのなかで、医療ソーシャルワーカーは患者さんとご家族の退院後のさまざまな問題点を明確化し、どのようにしたらその問題を解決できるのかを考える。山口先生は、この時、病院の事情も理解しつつ、それに流されるのではなく、あくまでも患者さんとご家族を中心に考えていくことが大切だと言う。人間としての「情」とさまざまな問題を論理的に解決する「理性」。解決に向かう道のりをしっかりと描いて、患者さんとともに前に進んでいくのが医療ソーシャルワーカーなのだろう。

Profile

YAMAGUCHI,Miho
山口 みほ(ヤマグチ ミホ)
准教授
修士(社会福祉学:日本福祉大学)

愛知県立大学文学部卒業(1986)
日本福祉大学大学院社会福祉学研究科修士課程修了(1996)
日本福祉大学大学院社会福祉学研究科博士後期課程単位取得満期退学(1999)
公立陶生病院相談室(1986~1994)
西山クリニックPSW(1996~)
日本福祉大学赴任(1999)
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部客員研究員(2010~)