たとえば、かすかな息づかいで、スイッチを入れられれば、コミュニケーションの可能性は広がる。

その声に応える 日福の学び

使う人の顔が見えるモノづくり、楽しい生活の役に立つモノづくりを。

特別支援学校に通う、とても障害の重い子がいました。意識ははっきりしているのですが、動くことも、話すこともできません。その子が自らの意志でできるのは、呼吸器から息を吐き出すことです。このかすかな「息」をスイッチにしよう、と思いました。息を感知するセンサを襟元に付け、息を吐き出すことで、タブレットのスイッチが入り、好きな音楽を自分で聞けるようにしました。お母さんをはじめ、ご家族がとても喜んでくれました。次にお母さんの提案で、息のスイッチで楽器の音を鳴らすことができるようにしました。妹さんが弾くピアノに合わせて、その子が楽器の音を鳴らします。姉妹による合奏が実現したのです。「息を吐き出すことしかできない」のではないのです。「息を吐き出すことができる」のです。そこに可能性が広がります。私たちが手がけるモノづくりは、「顔の見えるモノづくり」「生活のにおいがするモノづくり」でなければならないと思います。目の前にいる、障害のある人の想いをどうすれば叶えることができるのか、生活をいかに楽しく豊かにできるのか、それが私たちのモノづくりに託された使命だと私は思います。

健康科学部福祉工学科情報工学専修渡辺 崇史 教授

これからの支援機器に求められるのは、
コミュニケーションの可能性を広げる技術。

現在,障害のある人に対する支援機器の提供システムには、障害者総合支援法上では、補装具と日常生活用具があります。上段で取り上げた息を活用したスイッチは、日常生活用具の中の「情報・意思疎通支援装置」や、補装具のひとつである「重度障害者用意思伝達装置」などの、コミュニケーション機器の操作手段としても利用することができます。補装具は他にも補聴器や車いす、盲人安全つえなど身近な用具が認定され、補助金の対象となっています。しかし、「情報・意思疎通支援装置」や「重度障害者用意思伝達装置」に限らず、コミュニケーションを支援する機器は他と比べて、まだまだこれからのようです。障害がある人の自立した生活や多様なコミュニケーションの可能性をさらに広げるためには、ITをはじめとする技術が急速に発展している現在、これらを活用できる人材と支援機器の研究開発が求められています。

※出典:「平成25年度 福祉行政報告例の概況」(厚生労働省)より一部抜粋

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福祉を変えていく、モノづくり。

渡辺先生のゼミ風景

渡辺先生は、機械工学の出身。人の役に立つモノづくりがしたくて、名古屋市のリハビリテーションセンターへ。そこで、障害がある人のための福祉用具の相談にのったり、使う人に合わせて機器を最適な状態に調整する仕事に取り組んだ。そこでもっとも多い相談は「コミュニケーション」に関するものだった。そのとき先生が着目したのは、「スイッチ」。無理なくできる身体機能を活かしてスイッチを操作できれば、その世界は大きく広がるのではないか。人のために何かがしたい、その優しい気持ちに、テクノロジーをON。モノづくりが福祉を変えていく。

Profile

WATANABE,Takashi
渡辺 崇史(ワタナベ タカシ)
教授
博士(工学:立命館大学)

名城大学理工学部卒業(1987)
立命館大学大学院理工学研究科修了(2013)
ホシザキ電機(株)(1987~1997)
名古屋市総合リハビリテーション事業団
(1997~2004)
日本福祉大学福祉テクノロジーセンター
(2005~2008)