平成21年度
【テーマA】大学教育推進プログラム
「福祉大学スタンダードきょうゆうプログラム」
 − 日本福祉大学スタンダードの学生・教員・職員への水平展開による教養教
      育・FD・SDの一体的推進 −

1 教育の質の向上への大学等の対応について

(1)人材養成目的の明確化

@人材養成目的の学則等における規定について

大学全体の人材養成目的は、「本学は、真理の探究と人間の尊厳を基に、21世紀の新しい福祉社会の構築に貢献する指導的人材を育成する」(日本福祉大学学則第2条)と定めている。各学部の教育目標は、「日本福祉大学の学部・学科における教育の目標に関する規則」に【表1】の通り定め、本学Webサイトにて公開している。

【表1】各学部の人材養成目的
社会福祉学部 人間の福祉の増進を目指して、社会の変革を進め、さまざまな問題の解決を図れるソーシャルワーカーとしての専門職、地域社会で福祉の発展に寄与できる市民、国際化・情報化・高度技術化に対応でき、さまざまな社会的活動に携われる人材の育成を目指す。幅広い学びと実践を通して、学生が豊かな教養や人間性・創造性を備えることを目標とする。 福祉経営学部 経営の基礎を身につけ、福祉の視点を兼ね備えて、企業、医療、福祉、スポーツなどの分野で組織や地域社会に貢献できるマネジメント・リーダーになりうる人材を育成する。
国際福祉開発学部 福祉を理解し、英語を駆使して、組織運営と地域貢献を担うことができる人材を育成する。福祉、開発、環境、経済などを学ぶなかで、英語コミュニケーション、調査、ファシリテーションなどの能力獲得をはかることを目標とする。
子ども発達学部 乳幼児から青年期までにわたり子どもたちの豊かな人間形成を支えるために、成長・発達に応じた保育・教育・心理的な課題に専門的に対応できる人材を育成する。
情報社会科学部 高度情報福祉社会において情報ネットワークや情報メディアを有効に活用し、高齢者や障害者などの生活支援・リハビリテーション、安心・安全・安定が確保できるような環境の創造や住まいづくりに取り組める人材を養成する。
経済学部 協働型福祉社会の実現に貢献する人材の育成を目的とする。経済学の基礎とその応用ならびにシミュレーション学習、フィールド学習、外国語教育、数学教育等を通して、市場経済の仕組みを理解すること、持続可能な社会を設計する手法を身に付けること、目標達成のための合理的な行動能力を身につけること、を目標とする。
健康科学部 福祉社会の構築に資するため、医療・保健・福祉・工学等の多角的な側面から、年齢や障害の有無を問わず、誰もが自立した人生を全うできるよう支援し、また、情報工学の知識を活用して、健康を育むことのできる住環境・生活空間づくりを提案できる人材の育成を目指す。

A学生に修得させるべき能力について

【図2】日本福祉大学スタンダードとしての「四つの力」

【表1】の各学部の教育目標において、各学部が学生に修得させる能力を規定している(該当部下線)。これとは別に、本学建学理念を体現した教育標語「万人の福祉のために真実と慈愛と献身を」を受けて、「四つの力」(見据える力、共感する力、関わる力、伝える力=理解する力)(【図2】)を、「本学の学生全体が修得すべき能力・資質=日本福祉大学スタンダード」として提示している。

B「三つの方針」の明確化とそれを踏まえた実施・展開について

1)卒業認定・学位授与は、各学部における卒業要件に基づく及落審査を通して行われる。全学共通の卒業要件は、4年間の在学期間ならびに合計124単位以上の修得単位数である。各学部の卒業要件は、以下の【表2】の通りである。

【表2】各学部の卒業要件
社会福祉学部 総合基礎科目28単位以上、所属学科開講専門科目66単位以上
経済学部 総合基礎科目26単位以上、専門科目62単位以上、
新ふくしキャリア教育科目6単位以上
福祉経営学部 総合基礎科目26単位以上、専門基礎・専門科目68単位以上
健康科学部 リハビリテーション学科
総合基礎科目14単位以上、専門基礎・専門科目103単位
(理学療法学・作業療法学専攻)、95単位(介護学専攻)
福祉工学科 必修科目20単位含め計124単位以上
子ども発達学部 総合基礎科目28単位以上、所属学科開講専門科目66単位以上
国際福祉開発学部 総合基礎科目30単位以上、専門基礎・専門科目64単位以上
情報社会科学部 総合基礎等必修科目含め、専門基礎・専門科目46単位以上

  卒業論文は必ずしもすべての学部で必修としていないが、学部ごとに卒業論文報告会を開催し、論文のプレゼンテーションを課している。

2)カリキュラム編成には、各学部共通の次のような特徴がある。@「総合基礎科目」と呼ぶ幅広い視野と総合的な判断力を身につけることを目指す科目群を、低学年次のみに配置するのではなく、4年間を通したクサビ形編成をしている。A1年次から4年次まで、学生に帰属意識を持たせるクラス・ゼミ科目を配置し、学士課程4年間の一貫したゼミ体系を編成している。B学生が成長する場は教室内に限定されず、正課外の自主的活動を通して成長する機会が多いとの見地から、自主的活動を促進するように時間割に「空きコマ」を設けている。Cゼミ等の授業を中心に、できる限り体験型実践的学習を推進する教育を展開し、ゼミ教育と連携を持たせた実習、インターンシップ、フィールドワークをカリキュラムの柱に位置づけている。

3)多様な入試形態のもとで、AO入試等の推薦入試面接においてアドミッションポリシーに基づく選考を行い、入学後は、新入生全体に対するオリエンテーションと合宿セミナーにて学部のポリシーを徹底し、カリキュラム理念に関する理解を培っている。なお、各学部のアドミッションポリシーに基づく「求める人物像」では、全学的に共通するものとして、「ボランティア・文化活動などの経験や実績」、「地域活性化への貢献」などの社会参画プログラムに積極的な参加を希望する人、などを明示している。

(2)成績評価基準等の明示等

1.授業の方法及び内容並びに1年間の授業計画の明示内容・方法や学生の学習時間確保の方法について

 各授業科目の授業計画(担当教員名、授業におけるテーマ、科目の狙い、当該科目に関連する科目、使用テキスト・参考文献、受講上の注意、各回の内容、成績評価の方法)を記載した冊子『授業科目概要』を、全学生に配布している。また、専任教員担当の全講義科目について、科目ガイダンスのオンデマンドコンテンツを開発し、学生・教職員がインターネットを通じて随時、当該科目のシラバスの解説を視聴できるようにしている。
教員は当該授業科目の単位数に見合う学習時間確保のため、授業内外で適宜課題を課している。また、web上の学習支援システムで、科目担当教員が履修学生との質疑応答を行い、学習課題を課している。講義時間確保に関しては、国民の休日の一部を授業日とし、学年暦上のすべての曜日で半期15回開講を行っている。

2.学修成果に係る評価及び卒業認定の基準の明示と、その実施について

本学の成績評価基準は、S(90点以上100点以下)、A(80点以上89点以下)、B(70点以上79点以下)、C(60点以上69点以下)、D(59点以下)であり、S・A・B・Cが合格である。教員は、あらかじめ授業計画で学生に示した成績評価方法に基づき、評価を行っている。学期ごとにGPAを算出し、その数値を学年ごとに5段階に区分し、学生に示している。卒業認定に当たっての基準に関しては、一部学部では到達度試験を開始している。

(3)ファカルティ・ディベロップメントの実施

2007年度より全学教育開発機構(全学教育の推進にあたる教学機関)を設置し、全学FDについて、全学(マクロ)レベル・学部(メゾ)レベル・個々人(ミクロ)レベルに区分した方針策定を行っている。マクロレベルでは、全学FD事業として、テーマを設定した教育実践等の報告・交流会「きょうゆうサロン」を2007年度より開催している。「知多学」をテーマとした第1回「きょうゆうサロン」を皮切りに、これまで4回のサロンと知多半島の教育資源(NPOや醸造業の現場)を訪ねるバスツアーを実施した。また、2008年度より英語教育のFD懇談会も別途実施している。いずれも専任教員のみならず、非常勤講師の参加も得て開催を進めている。メゾレベルでは、各学部向けのFD補助金助成を行っている。2008年度は、公募審査により3学部(子ども発達学部、経済学部、国際福祉開発学部)に交付を行った。教員個人レベルのFDの促進については、ICTの教育活用事例および英語教育実践に関するFD助成制度を実施している。これらの助成については、年度ごとの報告書提出や報告会での報告など、成果の還元を義務付けている。なお、これらの取組は、FDも対象とした今回の取組開始後も、全学教育開発機構にて継続実施する。

(4)自己点検・評価等の実施体制・展開と評価結果の反映

 本学では、学部および教学組織ごとに、年度単位で重点事業と事業計画を策定している。全学機関である全学評価委員会と、大学院及び学部教授会のもとに置かれた大学院・学士課程教育等評価委員会が、自己点検・評価組織として、諸事業に対するPDCAサイクルに基づいた評価を実施している(@年度途中での中間報告、A年度終了後の結果報告に基づき実施)。さらに、教学担当副学長のもとに、評価活動支援機関である自己点検・評価推進委員会を設置し、各種研修会や全学調整を行っている。また、第三者評価として、各領域の専門家に委嘱した外部評価委員会を設け、多面的な評価活動を実施している。評価結果については、毎年度、自己点検・評価報告書を発行するとともに、各学部・各機関にフィードバックして改善を求め、次年度事業計画に反映させている。
 また、全教員に、年度ごとの教育研究計画書と実績報告書の提出を義務づけている。普通任用教員には、5年ごとに教員資格再審査が行われる。「教員資格再審査規程」の審査基準に則り、研究業績のみならず教育業績も対象とした審査を行っている。

 なお、大学認証評価については、2010年度に大学基準協会の評価を受審する計画である。

CGI