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ハラスメントゼロへの挑戦~ハラスメント防止のための基本理解~

2026.09.03
ハラスメントは、「職場」において「労働者」に対して行われる「いじめ・嫌がらせ」を指し、いじめ・嫌がらせに関する労働相談は年々増加傾向にあります。ハラスメントが生じる背景には、単に加害者個人の問題だけでなく、上司と部下のコミュニケーション不足や長時間労働、失敗を許さない不寛容な空気など、組織全体の風土が深く影響しています。ハラスメントは当事者の身心に健康被害を与えるだけでなく、周囲の職員の意欲も低下させ、結果として職場からの人材流出やサービスの質の低下といった多大な損失を引き起こします。一方で、組織を挙げてハラスメント対策を行うことは、職場環境の劇的な改善に繋がり、ワークエンゲージメントや生産性の向上、優秀な人材の確保など多くのメリットをもたらしてくれます。

パワーハラスメント―「優越性」と「指導」の境界線を見極める

パワーハラスメント(パワハラ)は、①優越的な関係を背景とした言動であり、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③労働者の働く環境が害される行為、という3つの要素をすべて満たすものと定義されています。ここで重要なのは、「優越性」とは職務上の地位(上司から部下)だけを指すのではないという点です。業務上の知識や経験の差、あるいは同僚や部下の集団による行為(部下から上司、同僚間など)も優越的な関係に該当します。業務に必要な「指導」とパワハラを区別するためには、その言動に「職務上の必要性」があり、その手段や目的が社会通念上許容される範囲内かどうかが個別に判断されます。また、働く環境が害されたかの判断は「平均的な労働者の感じ方」が基準となり、見聞きした周囲の者も被害者になり得る点に注意が必要です。

セクシュアルハラスメント―主観とジェンダーバイアスに気づき、見直す

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場において、労働者の意に反する「性的な言動」によって、仕事上の不利益を受けたり、働きやすい環境が損なわれたりする行為です。セクハラを考えるうえで大切なのは、「そんなつもりはなかった」「悪気はなかった」という行為者側の意図だけで判断しないことです。相手がその言動をどう受け止め、不快に感じたかという視点が重要になります。たとえば、本人が望んでいないボディータッチや、結婚・交際・性的なことについて繰り返し尋ねることなどは、相手に不快な思いをさせる可能性があります。また、「男性だからこうするもの」「女性だからこうあるべき」といった、無意識の性別による決めつけ(ジェンダーバイアス)が、何気ない言葉や態度に表れることもあります。セクハラは、異性間だけでなく同性間でも起こり得ます。大切なのは、「自分に悪気があるか」だけでなく、相手がどう感じるかを考え、自分の言動を振り返ることです。相手の立場や気持ちを尊重し、一人ひとりが安心して働ける環境をつくっていきましょう。

カスタマーハラスメント―福祉現場で深刻化するリスクと社会的背景

近年、介護や医療福祉の現場で特に顕在化しているのが、利用者やその家族から受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)です。令和4年度の公益財団法人介護労働安定センターの実態調査によると、過去3年間に利用者からのハラスメントが発生した割合は30.4%に上ります。カスハラは大きく「身体的暴力(叩く、つねる、ものを投げるなど)」「精神的暴力(大声、怒鳴る、理不尽な要求など)」「性的暴力(不要な接触、性的要求など)」の3つに分類されます。介護現場は身体的な接触が多く、個別対応になりやすい業務特性があるため、必然的にハラスメントが発生しやすい傾向にあります。これに加えて、「消費者の地位向上」や「過剰な期待」といった社会的背景も関係しており、職員の尊厳と安全を守るためにも見過ごせない問題となっています。

カスハラ発生時の初動―「怒りの段階」に応じた冷静な対応プロセス

万が一カスハラが発生した際、個人で我慢して耐えたり、その場で激しく議論したりするような初動は状況をさらに悪化させます。対応は、怒りの変化に合わせた「傾聴期」「手続期」「提案期」「終結期」のステップに沿って組織的に行うことが基本です。初期の「傾聴期」では、施設側に非がないことをわからせようとする論理的な説明や弁解は控え、相槌やおうむ返しを交えながらまずは相手の言い分をひたすら傾聴します。安易にすべての要求を受け入れるのではなく、事実がわからない段階での謝罪は限定的に留めます。その後、事実関係を整理し、解決策を提案するステップへと移ります。社会通念上不当な威嚇や暴力があった場合は、速やかに物理的距離を取り、個人で抱え込まずに上司へ報告し、警察への通報や法的対応など組織として毅然とした判断を下すことが大切です。

日常の予防策―相手に届く「伝え方のコツ」と契約に基づく関係性

ハラスメントのない良好な人間関係を日常から構築するためには、コミュニケーションの「伝え方」を工夫することが大切です。指導の場面では、①「~しよう」と肯定形で伝える、②「どうしたらできそう?」と未来に焦点を当てる、③「~してくれますか?」と提案・依頼形で伝える、の3つがコツです。相手に決定権を与えるような表現を用いることで、業務範囲内の適切な指導として相手に受け取られやすくなります。また、顧客や利用者に対しては、お互いの合意と確認を積み重ねること、そして「良かれと思って個人の判断で例外を作らない」ことが重要です。ルールに則り、契約通りのプロフェッショナルなサービスを徹底することが、結果としてハラスメントから職員と職場を守る最大の防御壁になります。

組織の取り組み―防衛線としてのルール化と迅速なフォロー

ハラスメントは一個人の問題ではなく、組織全体の風土が影響して発生します。そのため、全ての事業主に防止対策が義務付けられる中、組織として守る体制づくりが極めて重要です。具体的には、どのような言動が該当するかの基準や発生時の対応手順を明文化し、職員間で認識を統一します。現場で「良かれと思って」個人の判断で例外を作らないルールの徹底も不可欠です。万が一発生した際は、個人に抱え込ませず組織として速やかにルールに沿って対応します。そして、被害を受けた職員だけでなく、周囲で見聞きした職員に対しても迅速な精神的ケアやストレスマネジメントを行い、職場全体の安全と信頼を維持するフォロー体制を整えることが求められます。

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