FUKU+TOPICS

ホーム FUKU+TOPICS 行動には必ず「わけ」がある~ABA(応用行動分析)で変わる子どもへの眼差しと支援~

行動には必ず「わけ」がある~ABA(応用行動分析)で変わる子どもへの眼差しと支援~

2026.08.17
子どもが突然奇声をあげたり、作業の途中で部屋を飛び出したりするとき、私たちはつい「どうしてそんなことをするの?」と、その子の性格や障害のせいにしてしまうかもしれません。しかし、ABA(Applied Behavior Analysis:応用行動分析)という視点を持つと、それらの行動は全く違った形で見えてきます。ABAの根幹にあるのは、「行動には必ず『わけ(理由)』がある」という考え方です。子どもの行動を理解し、より良い支援へとつなげるためのABAの基本とその実践についてみていきましょう。

ABA(応用行動分析)とは何か

ABAは、相手の行動を客観的に捉え、その行動を変えていくための心理学的な手法です。最大の特徴は、行動の原因を「個人の心の中や障害」だけに求めるのではなく、「個人と環境の相互作用」として捉える点にあります。
例えば、子どもが奇声をあげたとき、「自閉症だから」「欲求不満だから」と考えるのは、原因を個人の内側に求めている状態です。これに対して、ABAでは「どんなときに(きっかけ)、何をしたら(行動)、どうなった(結果)」という、行動の前後の環境に注目します。これを「ABC分析」と呼びます。
A:きっかけ(Antecedent)……行動の直前の状況や環境
B:行動(Behavior)……本人が行った具体的な動作
C:結果(Consequence)……行動の直後に起きた変化

なぜその行動を繰り返すのか:行動の「4つの機能」

人は、自分にとって何らかの「メリット(結果)」があるからこそ、その行動を繰り返します。ABAでは、不適切な行動を含め、あらゆる行動には次の4つの目的(機能)のいずれかがあると考えます。

① 獲得機能:欲しい物や活動を手に入れるため

これは、自分の要求を通したいという目的です。適切な要求の仕方をまだ獲得していなかったり、「今はダメ」というルールが伝わっていなかったりする場合に、不適切な行動として現れることがあります。
具体的詳細事例
YouTubeを見ていたAさんに支援員が「もう終わり」と声をかけたところ、Aさんは奇声をあげました。その結果、支援員が「この動画が終わったら作業ね」と譲歩してしまい、YouTubeを最後まで見ることができました。この場合、Aさんは「奇声をあげれば、もっと動画が見られる」というメリット(結果)を得たため、次回も同じ状況で奇声をあげる可能性が高まります(行動の強化)。

② 注目機能:人にかまってもらいたい、褒められたい、注目を引きたいため

人との関わりや称賛、援助などを求める目的です。適切な注目の引き方を知らない場合や、適切な行動には無反応なのに、問題行動を起こしたときだけ周囲が反応してしまう場合に繰り返されます。
具体的詳細事例
普段、静かに作業をしているときは誰にも声をかけられない子が、わざと物を投げたり(乱暴な行動)、大声を出し始めたりしたとします。このとき、支援員が「ダメでしょう!」と強く叱ると、本人にとっては「叱られてでも注目を得られた」ことが「プラスの結果」となり、関わりを求めて不適切な行動を繰り返すようになります。

③ 回避・逃避機能:嫌な課題や状況を避けたり、終わらせたりするため

嫌なもの、難しいこと、終わりが見えない状況から逃れたいという目的です。
具体的詳細事例
知的障害のあるBさんは、作業中に何度も部屋を飛び出していました。Bさんは時計を読むことが難しく、「あと何分作業をすればいいのか」という見通しが持てていなかったのです。Bさんにとって部屋を飛び出すことは、「分からない・嫌な状況を中断する」という手段になっていました。飛び出すたびに支援員が追いかけて連れ戻すという対応は、結果的に「作業の中断」を成立させてしまい、行動を維持させている可能性があります。

④ 自己刺激機能:感覚的な刺激を得たり、自分を落ち着かせたりするため

行動そのものから得られる感覚的なフィードバックが目的です。
具体的詳細事例
周囲の状況とは無関係に、手をヒラヒラさせたり、体を揺らしたりする行動が挙げられます。これは、その動作を行うことで自分にとって心地よい刺激を得たり、不安な状況で自分を落ち着かせたりするという「わけ」があります。

「個人攻撃」の罠を避け、環境を変える

ABA(応用行動分析)において、「個人攻撃の罠」とは、子どもの問題行動の原因を考える際、具体的な解決策を検討する前に陥りやすい心理的な落とし穴のことです。この罠について、見ていきましょう。

1. 罠の正体:3つの責任転嫁

人は困った行動を目の当たりにすると、無意識に以下の3つの要因に原因を求めてしまう傾向があります。
  • 子どもの障害の責任にする:「自閉症だから」「知的障害があるから」といった、本人の特性や診断名を理由にしてしまうこと。
  • 保護者の育て方の責任にする:「親のしつけがなっていない」「家庭環境に問題がある」と、周囲の養育環境を責めること。
  • 指導者の力不足の責任にする:「担任の先生の指導力がない」「関わり方が下手だ」と、支援者のスキルに原因を求めること。

2. なぜこれが「罠」なのか

これらが「罠」と呼ばれる理由は、そこに原因を求めてしまうと、具体的な支援のアイデアが浮かびにくくなるからです。
  • 解決困難な理由に固執してしまう:性格や障害、過去の育て方は、支援者が今すぐ変えられるものではありません。変えられないものに原因を求めると、「仕方がない」という諦めや、お互いへの非難(攻撃)が生まれてしまいます。
  • 本人の頑張りを見落とす:「乱暴な子」「言うことを聞かない子」といった抽象的なラベルを貼ることで、その子が本当はどの場面で頑張っているのか、何に困っているのかという本質が見えなくなります。

3. 罠から抜け出す「ABAの視点」

この罠に陥らないために、ABAでは「行動の原因を『個人と環境の相互作用』に求める」という考え方を徹底します。
  • 「環境」に目を向ける:本人の性格を直そうとするのではなく、「どんなきっかけ(Antecedent)があったか」「行動の後にどんな結果(Consequence)が生じているか」という、本人の外側にある環境に注目します。
  • 「人」ではなく「状況」を変える:相手をコントロールして変えようとするのではなく、「どのように環境(きっかけ・状況・関わり・結果)を変えれば、本人が問題行動をしなくて済むか」を考え、実行します。

具体的な支援の実践ステップ

ABAを用いた支援のプロセスは次のようになります。
  1. 1. ターゲット行動の選定:減らしたい行動を一つ選ぶ。
  2. 2. 記録をとる:いつ、どこで、どのくらいの頻度で起きるか客観的な記録をとる。
  3. 3. 機能の仮説を立てる:4つの機能のどれに当てはまるか、行動の「わけ」を考える。
  4. 4. 目標設定と環境の調整
    1. 1) 行動の前(きっかけ)を変える:視覚的な予定表を使って見通しを持たせる、指示をスモールステップにする、物理的な環境(遊具の配置など)を整えるなど。
    2. 2) 行動の後(結果)を変える:望ましい行動をした直後に、即座に「プラスの結果(褒める、認める、好きな活動をさせる)」を与える。
  5. 5. 実践と振り返り:うまくいかなければ仮説に戻ってやり直す。
不適切な行動を無理やり力ずくでやめさせようとするよりも、その行動をしなくても済むように「事前の環境」を整え、適切な行動ができたときに「良い結果」が伴うように工夫する方が、本人にとっても支援者にとっても負担が少なく、効果的です。

小さな「できた」を積み重ねる

「言葉が話せないから叩く」というのは一つの側面かもしれませんが、叩かなくても自分の気持ちが伝わる環境や、叩く必要のない状況があれば、その行動は起きないはずです。
ABAを学ぶことは、子どもをコントロールする術を身につけることではありません。子どもの行動の背後にある「わけ」を理解し、「本人が困らなくて済む環境」を周囲が整えていくための、優しい眼差しを持つことなのです。うまくいっている場面に注目し、小さな「できた」を積み重ねていくことで、子どもとの関係性はよりポジティブなものへと変わっていくでしょう。

学校でのこどものしあわせを目指す多職種連携を学ぶ

学校福祉2026 オンデマンド配信

「学校福祉2026 オンデマンド配信」は、教育・福祉・心理の視点から子どもと学校が抱える福祉的課題に総合的にアプローチできる専門性を養うことを目的とした講座です。 学校・福祉・心理の領域に興味のある方はもちろん、気になるテーマを気軽に学びたい方、 自分のペースで少しづつ勉強していきたい方にオススメの講座です。

親子で楽しく遊びたい~発達が気になる子どもと遊び~

オンデマンド講座「親子で楽しく遊びたい ~発達が気になる子どもと遊び~」では、主に情緒面・行動面・対人面での発達の心配などのため、お子さんと「うまく遊べない」、「関わり方が難しい」、「どう対応していいか分からない」と感じている保護者の方が、安心してお子さんと関わり、遊ぶことができるようなヒントを提供することを目的としています。

心理学から知るきらめく個性

「心理学から知る きらめく個性」は主に子ども・児童に関わる支援者向けの講座です。
心理学の視点から「個性」を知り、さまざまな特性について理解を深めていきます。講義で取り上げる対象としては、子どもに限らず、保護者や支援者自身についてのコンテンツも含んでおり、基礎的な知識だけでなく、実践で使える子どもとの関わり方や保護者との関わり方、支援者のメンタルヘルスについても学ぶことができます。
資格や職歴を問わない講座となっておりますので、新たな学びだけでなく、気づきや振り返りの場としてご活用いただけます。
介護・福祉分野の人材研修なら日本福祉大学社会福祉総合研修センターへお任せください!