看護学部
2024.12.09
生涯発達看護学や助産学、女性看護学を専門に研究されている岡田先生に、看護教育や研究の道を志すきっかけについて伺いました。また、岡田先生の専門領域や、“ふくしの総合大学”に設置された看護学部ならではの魅力についてもお話しいただきました。
原田学長 岡田先生は、いつから看護の分野への関心を持たれたのですか。
岡田先生 中学生ぐらいから人のお世話をするのが好きで、親や友達など、率先して周りのお世話をしていました。高校になると『人のおもてなしをするのが私は好きなんだ』ということに気がつき、おもてなしをするお仕事に就きたいなと思い、さまざまな仕事を調べました。調べていく中で、旅館の女将や、社長秘書、飲食業、そして看護師の仕事に興味を持ちました。その当時、マザーテレサがノーベル平和賞を授与されたこともあり、私の中で“旅館の女将さん”か“マザーテレサ”…どちらかの選択になりました(笑)テレビなどで見るマザーテレサの生き様は、当時の私の心にすごく響き、看護の勉強をしてみようと思ったことが最初のきっかけです。
原田学長 当初描いていた看護師のイメージに変化などはありましたか。
岡田先生 当時は看護師養成の大学が少なく、今の教育よりも実践に重きを置く教育でした。4年間の大学生活の内、約2年が実習期間で現在よりも過密なカリキュラムとなっていたため、看護師になるまでの道程は本当に大変でした。
原田学長 教育や研究者としての道を志すようになったきっかけを教えていただけますか。
岡田先生 大学卒業後、助産師の資格取得を目指して1年間学校に通いました。その後、東京で4年間の臨床経験を積みました。病院で助産師として働く中で、様々な方と出会い、失敗もたくさんしました。臨床現場での経験を積み重ねていくうちに、現場で感じた『なぜ・どうして』を探求していきたいと思っていた矢先、ご縁をいただいたことをきっかけに、教育・研究者の道を歩むこととなりました。
原田学長 岡田先生の専門領域について教えていただけますか。
岡田先生 私は主にウィメンズヘルス領域を専門としています。病院での助産師の仕事は、妊婦健診や産後健診に関わり、分娩時には赤ちゃんを取り上げ、産後から退院するまでの間は育児の技術や母体を回復させるためのセルフケアについての保健指導などを行います。このように周産期の女性の健康を考えることはもちろん大切ですが、それ以外にも思春期や更年期、老年期など、女性の一生の健康を考えることがウィメンズヘルスの研究領域となります。日本の看護分野では、主にアメリカの研究成果やエビデンスが取り入れられています。アメリカがかつて男性中心の社会だった影響もあり、研究成果の多くは当時の男性を対象としたデータに基づいています。したがって、女性の健康(ウィメンズヘルス)についての研究は遅れていました。しかし、女性は性周期に伴う健康課題があり、性周期を持たない男性との違いがあります。また、その影響は同時に次世代へも影響します。その例として“思春期やせ症”は月経不順や不妊につながり、女性の一生の健康にも影響を及ぼすだけでなく、その女性が妊娠した場合、低栄養状態が胎児に引き継がれ、赤ちゃんの出生体重が低下し、その赤ちゃんが成人すると生活習慣病に罹患するということが分かっています。このように、女性に特化した健康を考えることが、女性の生き方の変化や、少子社会の招来など我が国の社会背景とあわせて、未来と密接に直結している分野であると思っています。
原田学長 本学の看護学部や看護学研究科でも女性看護に関する教育や研究が展開されているのですか。
岡田先生 本学の看護学部では、周産期における母性意識や母性機能を最大限に発揮できるよう支援する医療に特化した、母性看護学という領域に焦点が当てられていますが、看護学研究科(大学院)では『ウィメンズヘルス看護学領域』を立ち上げ、実践に活かせる研究力を養成しています。
原田学長 日本福祉大学の看護学部の学びの特徴について教えていただけますか。
岡田先生 看護学部が“ふくしの総合大学”の中にあることは非常に価値のあることだと感じています。看護は人の命や人の健康を支えますが、その先にはその人の“生活”があります。私自身、生活を支え整える福祉と看護は切っても切れない分野であるとずっと思っていました。“ふくしの総合大学”に現在の看護学部が設置されることを知り、とても魅力に感じたことを覚えています。また、『所属する学部学科に関わりなく、すべての学生が身につけて卒業してほしい4つの力』として示されている『日本福祉大学スタンダード(伝える力/見据える力/共感する力/関わる力)』が看護師の養成に求められる要素と一致しており、これらのことが日本福祉大学の看護学部で学ぶことの魅力であると感じています。
「母性看護学」での講義の様子
原田学長 看護師を目指している現役の学生や、現在看護師として働く卒業生に期待することはありますか。
岡田先生 日本福祉大学の看護学部は基本的な実践能力を養うことを大事にしています。本学の看護学部を卒業し、現場に出てからも患者さん一人ひとりの命と健康に向き合い、大学で学んだことを糧に実践し続けてもらいたいと思います。
原田学長 最後に、日本福祉大学での教育について先生が感じられていることについて教えていただけますか。
岡田先生 学園創立70周年宣言でもある『Well-being for All』の概念が私はすごく好きです。心と体が健康でないと良好な状態は保てず生きづらくなってしまいます。人の命と健康を守り育む看護の視点を大切にしながらこれからも教育や研究を続けていきたいと思います。
原田学長 医療面でサポートする看護と、生活の福祉が一緒になって、それぞれの『Well-being』がつくれるといいですよね。