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第17回 高校生福祉文化賞エッセイコンテスト

審査員プロフィール・審査員の評価と感想

審査員プロフィール

  • 紙テープ
    児玉 善郎
    日本福祉大学学長
    教授

    1959年兵庫県生まれ。博士(工学)。技術士(建設部門・都市および地方計画)。神戸大学大学院工学研究科修了後、(株)計画技術研究所、神戸大学技官等を経て2000年から日本福祉大学に赴任。2013年4月社会福祉学部長、2017年4月から学長。地域包括ケアにおける居住支援の方策、住民支え合いのまちづくり等の研究に携わっている。

  • 紙テープ
    角野 栄子
    作家
    日本福祉大学客員教授

    1957年早稲田大学教育学部卒業。1959年からブラジルに滞在。帰国後、創作活動を始める。『ズボン船長さんの話』で旺文社児童文学賞、『おおどろぼうブラブラ氏』で産経児童出版文化賞大賞、『魔女の宅急便』でIBBYオナーリスト文学賞、野間児童文芸賞、小学館文学賞を受賞。2014年旭日小綬章を受章。2018年3月国際アンデルセン賞作家賞受賞。

  • 紙テープ
    杉山 邦博
    元NHKアナウンサー
    日本福祉大学客員教授

    1930年福岡県生まれ。1953年早稲田大学文学部を卒業し、NHKに入局。アナウンサーとして、オリンピック、プロ野球などスポーツの実況放送を担当。特に大相撲中継は45年間継続して担当し、独特の名調子で好評を博す。1989年から日本福祉大学客員教授、2013年から日本福祉大学生涯学習センター名誉センター長。

  • 紙テープ
    川名 紀美
    元朝日新聞社論説委員
    日本福祉大学客員教授

    1970年朝日新聞社入社。大阪本社学芸部、社会部、学芸部次長を経て1995年から論説委員。社会福祉全般、高齢者や子ども、女性の問題に関する分野の社説を担当。2009年5月朝日新聞社退社。フリージャーナリスト。著書に『井村雅代・不屈の魂』『アルビノを生きる』『再婚』『親になれない−ルポ・子ども虐待』など。

  • 紙テープ
    金澤 泰子
    書家
    日本福祉大学客員教授

    1966年明治大学卒業。書家・柳田流家元に師事。1985年翔子誕生。1990年東京に書道教室開設。著書に『愛にはじまる』『天使の正体』『天使がこの世に降り立てば』『空から』『翔子の書』『涙の般若心経』『心は天につながっている』『あふれる愛』など多数。現在、久が原書道教室主宰。東京藝術大学評議員。

  • 紙テープ
    久野 研二
    国際協力機構(JICA)
    国際協力専門員
    日本福祉大学客員教授

    1991年に青年海外協力隊としてマレーシアに派遣された後、国際協力機構(JICA)の専門家などとして途上国の障害(者)問題に従事。学術博士(開発学)。現在世界38カ国に広がる障害教育のネットワークである「障害平等研修フォーラム(NPO法人)」の代表理事。著書に『ピア・ボランティア世界へ』など。

  • 紙テープ
    板垣 哲也
    朝日新聞社論説委員

    1988年朝日新聞社入社。高松支局、神戸支局、大阪社会部、政治部、生活部などで勤務。介護保険の創設、年金や医療の制度改革など、政策の決定過程や、医療・介護の現場などを取材。社会保障担当の論説委員、編集委員などを経て、2015年11月から現職。

  • 紙テープ
    古内 由美子
    進研アドマナビジョンブック
    編集部

    秋田県横手市出身。東京学芸大学教育学部卒。株式会社福武書店(現株式会社ベネッセコーポレーション)にて進研ゼミ中学講座、小学講座、こどもちゃれんじのDM営業、編集を経て2015年3月退社。
    2018年4月から株式会社進研アド マナビジョンブック編集部所属。

審査員の評価と感想

優れた作品が僅差で並び、熱い議論になりました。
今年は各分野で最終選考まで残った作品の点差が少なく、
どの作品を選ぶか審査員全員が頭を悩ませました。
熱い議論が飛び交った審査会の感想を、審査員の皆さんにお聞きしました。

座談会全体イメージ

さまざまな視点の作品があり、興味深かった。
  • 【児玉】

    今年は第1分野の作品が最終審査に一番多く残り、審査員の皆さんの点数の差も拮抗きっこう していて選考が難しかったですね。

  • 【板垣】

    ただ今年は「ここが素晴らしい」と思う作品でも、「ここが引っかかる」という点があり、決め手に欠ける印象を受けました。

  • 【古内】

    説明が足りないために書いてある状況を読みとることが難しく、審査員によって受け止め方が異なってしまい、評価に差がつく作品が何点かありました。だからこそ、情景が目の前に浮かぶような臨場感あふれる作品は高い評価につながったと思います。

  • 【杉山】

    第2分野は昨年と比較して、今年は優れた作品が多く、どの作品を選ぼうかと頭を悩ませました。

  • 【金澤】

    今回は自分がスポーツをした体験を書いたのではなく、テレビを見て感じたことをまとめた作品など、これまでと違う視点の作品もあり、おもしろく読めました。

  • 【川名】

    第3分野もグローバル化が進んだことで、海外旅行に行った時の経験や感じたことを書いた作品の他に、海外に住んでいる日本人の作品や、日本で暮らしている外国人とのふれあいを書いた作品もあり、さまざまな視点の作品を読むことができて楽しかったですね。

  • 【久野】

    第4分野は毎年読みごたえのある作品が多かったのですが、今年は全体的に苦戦していた気がします。青臭い考えでもいいから、日常生活の中で「どうして?」と思ったことを、もっとぶつけてほしいですね。

  • 【板垣】

    第4分野では私たちもハッとするような、とても素晴らしい作品がありました。簡単に答えの出ない難しいテーマが多い分野でもありますが、自分の意見だけでなく反対意見にも目を向けると、より考えが深まります。意欲作に出会えることを大いに期待しています。

  • 【児玉】

    同じようなテーマでも、たとえば第3分野の「グローバルな社会とわたし」に入れた方がよい場合もあれば、第4分野の「社会のなかの「どうして?」」に入れた方がよい場合もあります。「どの分野に応募するのが最適か」を考える必要もありますね。今回は文科系の部活動での体験にもとづく作品を第2分野の「スポーツとわたし」に応募している例もあり、こうした点も含めて分野の見直しを今後の課題として考えたいと思います。

  • 【杉山】

    若い人たちが普段何気なく使っている言葉の中には、エッセイに書く時にはふさわしくない言葉もあります。日本語は奥深く、同じ状況や気持ちを表現するにしても、違った言い回しや用語の方がよい場合もありますから、言葉を吟味して使ってほしいですね。

  • 【川名】

    今年も、「最後の三行がなければもっとよくなるのに」と残念に感じる作品がいくつもありました。無理に一般論でまとめるより、自分の言葉で締めくくった方が読者の心に響きます。

問題意識をもつことが自分なりの視点につながる。
  • 【児玉】

    今年の応募総数は昨年より減りましたが、団体応募では初参加の学校が昨年より増え、初参加の中にも100作品以上の応募をいただいた学校がありました。また、イギリス・オーストラリア・アメリカ・カナダ・香港と海外からの応募が増えるなど、裾野が広がったと感じます。

  • 【児玉】

    来年はもっと多くの応募をいただけることを期待して、応募する皆さんへのメッセージやアドバイスをいただきたいと思います。

  • 【古内】

    一般論ではなく、高校生らしい目のつけ所に期待しています。そのためには、日常の生活を通して感じたことを書き留めておくことが大切です。それを見直しながら、さらに広げたり深めたりすることが、高校生らしいエッセイを書く時に役立ちます。日頃からそういう習慣をつけると楽しいですよ。

  • 【久野】

    大きな体験である必要はありませんし、大風呂敷を広げる必要もありません。小さいことに注目して、新しい発見や自分の考えを素直に考えて書くといいと思います。

  • 【川名】

    毎日感じている「うれしい」「おかしい」といった気づきを日記でもメモでもいいので日常的に書くこと。その積み重ねが大切です。そうすると、身近なことでも自分の体験を通して感じたことを深めた表現となり、読む人が共感できる作品となります。

  • 【杉山】

    今年の最終選考に残った作品の中には、小学校時代に体験したことを思い返した作品がいくつもありました が、直近の出来事や出会いから感じたことも大切にしてほしいですね。一番大事なのは問題意識をもつこと。漫然と暮らすのではなく、「おや?」「どうして?」と立ち止まって考えることで、自分なりの視点や意見が芽生え、それが最終的な起承転結につながっていくのです。

  • 【板垣】

    過去の話で終わるのではなく、その時に感じたことを「今の自分」につなげて、「その体験を通してどう変わったか」を書いてほしいですね。また今年も、誤字脱字が気になりました。書き終えた後に何度も読み返して、誤字脱字がないようにしてください。また、改行(段落替え)が少ない作品も目立ちます。段落ごとに言いたいことを整理すると、どのような順番にすればわかりやすいかが明確になり、構成も決まってきます。こうした文章を書く基本をもう一度見直してほしいと思います。

  • 【金澤】

    今の高校生は、みんな優しくて温かいと感じます。私たちが経験してこなかったことや、気づかなかったような小さなことを発見して、エッセイにまとめていく皆さんは素晴らしいと思います。来年も素晴らしいエッセイに出会えることを期待しています。

  • 【児玉】

    私も高校生が感じていることが素直に伝わってくる文章に期待しています。日常生活の中で実感している“ふつうのくらしのしあわせ”について、高校生としての熱い思いを表現してほしいですね。審査員の皆さん、長時間にわたってありがとうございました。

動きのある文章を

審査員 角野 栄子

はっと心が動いたら、何かの種がその人に落ちてきたときなのでしょう。そこが大切です。そのとき、目にした光景を、気持ちのままに表現してみる。すると、文章に動きが出て、その時の感動を読む人と共有出来るように思うのです。今年も、沢山いい作品を読ませていただきました。レベルは年々あがっていると実感しています。ただ作品に意味を持たせたいという気持ちにとらわれ、そのことが先行してしまっているように感じます。それは作品を似通ったものにしてしまいがちです。あなたの心が動いたら。あなたのときめきのままに自由に、そのことを書いてみませんか? まるで写真を撮るように。そこから思わぬ表現が現れ、自然な動きが生まれ、いっしょに意味も生まれてくるでしょう。高校生らしい自由な眼差しで書かれたビビッドな作品を期待しています。

※ 台風15号のため、選考会に出席できませんでした。それで選考の感想を書かせていただきました。