あなたの体温を、伝えてほしい 36℃の言葉 2005年度 第3回高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集

学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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審査員の評価と感想

実体験を通して感じたこと。それを基に、今後どうしたいかを具体的に表現した作品が高く評価されました。

各審査員が上位に上げた作品はいずれも紙一重の差で、どの作品を最優秀賞に選んでもおかしくない状態でした。そんな審査の過程と作品に対する感想を、それぞれの視点で、五人の審査員に語っていただきました。



体験の奥にあるものを感じ、書いてほしい。

宮田 三回目を迎えた今年は、応募点数が8677点と、昨年より2000点以上も増えました。年々応募数が増えており、とくに学校単位でまとめて出されるケースが増えています。団体応募の件数は昨年より35%もアップし、高校の先生方の熱心な取り組みに頭が下がります。そこで、今回新しく学校賞を設けることにしました。
高山 文章の書き方をきちんと指導していらっしゃる先生が多いようで「うまいなぁ」と思う書き出しの作品がいくつもありましたね。
杉山 だからといって、入賞作品が特定の高等学校に偏ることはありませんでした。やはり、一番は高校生らしい視点。実体験に優る強さはありませんから、先生方の指導はもちろん、エッセイを書く本人の視点が大切だということには変わりがないということでしょう。
川名 文章はうまいのですが、もう一歩突っ込んで書いてほしいと思う作品がいくつもありましたね。体験した事実だけを書くなら単なるレポートです。自分が何を感じて、その体験を基にこれからどうしたいのか。それを書くのがエッセイであるという基本をもう一度見直してほしいと思います。
角野 私もそう思います。見えているものを書くだけでなく、その奥にあるものを発見し、感じとって表現してほしいですね。何かで見たり聞いたりした意見ではなく、高校生である自分自身がどう感じているのかが具体的に伝わる、そういう作品が、強く印象に残ります。


家族との葛藤や社会への抗議をもっと表現しては。

杉山 今回の特徴としては、おじいちゃん、おばあちゃんを取り上げたものが多かったですね。おじいちゃんやおばあちゃんが病気で寝ている話や亡くなられた話を何人もの人が書いていましたが、三世代同居の家庭がまだまだ残っているんだと思うとホッとしました。
角野 しかし驚いたのは、おじいちゃん、おばあちゃんの話を第二分野の「あなたにとって家族とは?」ではなく、第一分野の「人とのふれあい」で取り上げられていたことでした。核家族化が進み、おじいちゃん、おばあちゃんと接する機会が減っているのでしょうね。内容にも物足りなさを感じて、最近の若い人の「人とのふれあい」や「家族とのふれあい」はこんな程度かと思うとちょっとさびしくなりました。
川名 家族は毎日接している身近な存在ですから、もっと葛藤があると思うんですよ。わずか800字でまとめるのは難しいのでしょうが「洗濯や掃除をしてくれて感謝しています」でとどまっている作品がたくさんあって残念でした。もっと本音を知りたいというもどかしい思いで読んだ作品はいくつもありました。
宮田 私は第一分野から読んだのですが、第一分野は昨年と比べて少し物足りなかったですね。表面的なところで留まっていて、踏み込みが足りないと感じました。これはぜひという作品がなく、選考が難航しました。
高山 家族関係が希薄になったのに対し、ボランティアの話がずいぶん増えましたね。学校教育の中にボランティアがしっかり定着してきたことがよくわかります。私自身は、毎回第四分野の「社会の中のどうして?」に興味をもって読んでいます。もっと社会に対して、大人に対して、強烈な「なぜ?」を持ってほしいですね。抗議でも反発でもいいですから。
角野 そうですね。今回は第四分野が一番おもしろかったですね。
川名 第三分野は都市の再開発や利便性のテーマが多かったですね。同じような素材が多いと、どうしても印象が薄れがちです。
角野 日本では再開発で古い街並みが失われつつありますが、身近に暮らすまちの風景を描写し、大切にしている思いが伝わる作品が心に残りました。
高山 身近な第一分野や第二分野と違って、第三分野は高校生にとって難しいテーマなんでしょうね。
杉山 最優秀賞の作品は、自分の町に受け継がれていることに参加し、この先も残していきたいというのが、身の丈に合っていてよかったと思います。
宮田 昨年もそうでしたが、今回も「このテーマなら違った分野に出した方が高い評価ができるのに」と思った作品がありました。分野の選定も重要なポイントになることを忘れてほしくないですね。


若者の表現したい気持ちを大事にしたい。

宮田 今回感じたのは、書きっぱなしで、誤字脱字や当て字の多い作品があったこと。提出する前にもう一度読み直して「これが一番適した表現だろうか」と推敲することが作品の完成度を高めます。もっと手を入れて、自分の作品を大切にすれば、さらによいものができたのに…と思うと残念です。
高山 「あたたかい人柄」を、多くの人が「暖かい人柄」と書いていました。これは「温かい人柄」と書くことが普通ですね。
角野 最後の三行が無ければもっと良くなるのに…という作品も数多くありました。最後はきれいにまとめなければいけないと、カタチにこだわっているのでしょう。もっと自由になっていいのよといってあげたい。
杉山 今回も携帯電話からの応募が何点もあったようですが、やはり自分の手で書いた作品の方が、その人の文字を通して伝わってくる何かがありますね。
川名 携帯電話での応募の是非は別として「最近の若い人は言葉で表現するのは苦手」だとか「文章を書かない」と言われがちですが、確かにペンや鉛筆で書く機会は減っているものの、パソコンや電子メールで文章を書き、自分の気持ちを表現する機会は増えていると思うんです。今年は8000点を超える応募があったことに驚きましたが、道具が変わっても表現したい気持ちがあることはよいことだと思います。逆に、インターネットのような便利なツールがあるのですから、数字などはしっかり調べた上で書いてほしいですね。
宮田 本日は長時間にわたって熱心に審査していただき、ありがとうございました。

座談会イメージ
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