36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2018年度 日本福祉大学
第15回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 ひと・まち・暮らしのなかで
第2分野 スポーツとわたし
第3分野 日常のなかでつながる世界
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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座談会

タイトル、書き出し、読みやすさ。少しの工夫でさらに良い作品になります

今年のエッセイコンテストは、今までで最も多い応募点数となりました。海外からの応募作にも優れたものがあり、審査員の皆さんは、それぞれ心に残った作品を挙げながら、熱い議論を繰り広げました。

審査員プロフィール

海外からも優れた作品が届きました。
児玉 今年は応募総数が1万1844点となり、初めて1万点を超えました。今までで最も多い作品数です。

川名 「文章を読む・書く」という仕事をしている私にとっては、文章を書こうと思う若い人が増えたことが幸せです。

板垣 点数が増えただけでなく、年々洗練された作品が増えていると思います。今年は、どの分野も甲乙つけがたい作品が集まって、受賞作を選ぶのが難しかったですね。

角野  作者の居住地もバラエティーに富んでいましたね。これまでも海外からの応募はありましたが、海外在住者の受賞作品が増えましたね。

杉山  国内でも都会の学校だけでなく、地方の高校生の佳作も多くありました。個人的にはそういう地元の良さを書いた作品を応援したくなります。ただ今年は、私の専門分野である第2分野の「スポーツとわたし」に飛び抜けた作品がなかったのが残念です。来年に期待したいと思います。

古内 初めて参加した私にとっては、10代後半の皆さんがどういうことを考えているかがしっかり伝わってきて、どの作品も楽しく読むことができました。

久野  私が高い点をつけた作品は、大半は他の審査員の皆さんも高い点でしたが、時には私だけが高い点だったり、一人の審査員が高い点をつけている作品に低い点をつけている審査員がいたりと、審査員の得意分野や感性によっても評価に違いがあることを感じました。

情景が浮かぶエッセイに魅力を感じる。
児玉 審査では審査員によって意見が分かれることがあります。皆さんはどのようなポイントに注目して、審査をされましたか?

久野 私は3つあります。第1は、読んでいて情景が浮かぶエッセイであること。第2は、作者の言いたいことがきちんと伝わっているかどうか。第3は、素直に書いている作品を高く評価しました。

川名 私も情景が目に浮かぶ作品が好きです。今回もそういう作品が優秀作品に選ばれました。頭で考えただけだったり、色々な所から説明を取ってきて文章につなげるのではなく、自分の体験を通して感じたこと、得たことを素直に書いた作品に魅力を感じます。

板垣 私はエッセイに欠かせない「文章が活き活きしている」ことと、「理屈っぽくなりすぎない」ことの、バランスが取れた作品に高い点をつけました。

角野 分野によっても視点が変わってきます。たとえば第1分野では、自分のまわりのことをしっかり見つめていて、その視点が個性的な作品を選びました。

古内 タイトルのつけ方も大切ですね。平凡なタイトルでは魅力が半減してしまいます。でも、奇抜すぎると好き嫌いが分かれてしまいます。私も文章を書く一人として、今まで以上にタイトルのつけ方に気を遣おうと思います。

杉山 皆さんのご意見に加えて、構成も大事だと思います。あらためて、「起承転結」という言葉を思い出してほしいです。その中でも特に、「結」の部分が大切なのですが、最後でがっかりしてしまう作品が結構ありました。

久野 毎年の話ですが、まとめが残念で、「最後の三行は書かない方が良かった」という作品が少なからずあります。無理に一般論でまとめるのではなく、自分の視点と言葉で書くと説得力が増します。

児玉 大学のレポートでもそうですが、今は簡単に情報を検索して文章に足せるので、それなりに体裁を整えることはできます。でも、情報だけでは相手に伝わりません。自分の言葉で書いた方が、相手の心に強く伝わります。

2回・3回と声を出して読み返してほしい。
児玉 来年以降にも作品を応募する皆さんに対して、アドバイスがあればお願いします。

板垣 特定の分野の話だと、作者やその分野の知識がある人にはわかっても、多くの読者にはわからない言葉があります。そういう言葉には説明を入れてほしいですね。基本的なことですが、どんなに良い作品でも誤字脱字があると、それだけで良さが半減してしまいます。

川名  今回、作品自体は視点も文章のまとめ方も素晴らしくて優秀作品の有力候補だったのに、最後のクライマックスの部分で明らかに文章が途切れている作品がありました。読み返せば気づくはずなのに、残念です。「読み返していないんじゃないか」と思う作品は信じられないくらいたくさんあります。

杉山 一度だけでなく、二度、三度と読み返してほしいですね。気づいた所を直していくことで、文章も構成もより洗練されていきます。また、読み返す時は、ぜひ声に出して読んでほしいです。黙読では気づかない点も、声を出して読むと気づきますから。

久野 過去の出来事を書いた作品で、過去の話だけで終わってしまい、「今もそれを続けているの?」と疑問が残ったものがありました。エッセイでは、時間軸を明確に表現すると良い作品になります。「その時はこうだった」で終わらず「その結果、現在はどうなのか」まで書いてほしいです。

角野 「高校生福祉文化賞」ということもあって、皆さん、真面目ですよね。もちろん、それも大切なことですが、音楽ではクラシックやジャズだけでなくロックもあるように、冒険したエッセイも読んでみたいと思います。もちろん、内容や文章の完成度も大切ですが、高校生らしい視点による、何か一つ突き抜けた作品が出てくることを期待しています。

古内 作品の中には、私も同じような経験をしていて、とても共感したエッセイもあれば、私には経験がなく、新しい発見をしたエッセイもありました。どちらも興味深く読むことができましたが、優秀作品を選ぶ時には、やはりエッセイらしい作品を評価します。ユーモアがある作品や、読み終えた時に気持ちが温かくなる作品を読みたいですね。

児玉 そうですね。最終審査まで残る作品は、どれも良く書けていると思いますが、もっと高校生のハートが伝わってくる作品を読みたいですね。高校生の皆さんは、いろいろ悩んでいることがあるでしょうし、将来の不安もあるでしょう。そうした自分の気持ちを社会と結びつけて書いたエッセイに出会いたいと思います。審査員の皆さん、本日は長時間にわたって、ありがとうございました。
金澤 泰子

審査員 金澤 泰子
 今年で審査員としてエッセイを読ませていただくのは3度目ですが、今回も高校生の持つ「優しさ」に触れて様々なことを考える機会となりました。
 皆さんの持つ「優しさ」の根底には他者への深い尊敬の念があるのだと感じます。自身のことだけでなく、他者を尊重するからこそ、温かな思いやりが生まれ、それが「優しさ」になっていくのでしょう。また、温かさだけでなく、独自の視点で細かな点も見逃さない鋭さも感じられます。その鋭さがエッセイを単なる一般論ではなく、読んだ人の心に刺さる作品に昇華しています。
 これからも温かさと鋭さを兼ね備えた優れた感性でもって、日常生活に深く思いを巡らせていってください。来年のエッセイも楽しみにしております。
※ 座談会当日ご欠席のため、後日、審査にあたっての講評をいただきました。
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