36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2014年度 日本福祉大学
第12回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
募集テーマ内容・募集詳細はこちら
応募状況
参加校一覧
HOME
入賞者発表
第3分野 わたしが暮らすまち
優秀賞 時の壁を越えて
日本女子大学附属高等学校 一年 西山 萌花

 八月六日。友達と遊んでいる最中にサイレンが鳴った。私は立ち止まって黙祷をした。周りの友達はそれを見て、何してんの?と笑った。
 小さい頃から黙祷のサイレンが鳴ると、家族皆で手を合わせるのが当たり前だった。でもそれは、友達にとっては当たり前ではなかった。私はあの時日本の今を目の当たりにしたような気がした。
 私は去年の夏、広島を訪れた。実際にあったとは思えない、酷すぎる写真や展示物を見て、正直初めは目を背けたくなった。しかし、それ以上に戦争の恐ろしさと、自分が広島を訪れたことの意味を強く感じた。戦争を二度と繰り返してはならないと何度も思った。しかし、それをどんなに思っていても、心の中で叫ぶことしかできないことが悔しかった。学生である自分に、何ができるのかわからなかった。自分をとても無力に感じた。
 そんな中、私は被爆した方のお話を聞いて、自分なりの答えを見つけた。力強く、私にあの時あったことを語るおばあさんの姿に、次は自分が語り継いでいく、発信していく番なのだと気付かされたのだ。日本人として、将来を担う者として、戦争を受け止め、自分の言葉で周りに発信していく。それが、私なりの平和との向き合い方なのだと思った。
 夏休みが明けると、早速学校のスピーチで皆に戦争の話をした。その時、黙祷していた私を笑った友達は、じっと私の目を見て話を聞いていた。そして、わざわざ私の所に感想を言いに来てくれた。自分の想いが形になったような気がした。
 「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」原爆慰霊碑に刻まれたこの言葉。今、日本のどれだけの人がこの言葉を心に留めているのだろう。
 「過去を知る」ことは、「未来を変える」ことの始まりだ。想いと言葉は時の壁を越える。そう信じて、発信し続けていきたい。

講評

 広島に行って被爆した人の話を聞くという自分の体験と、黙祷を友達に笑われたことや夏休み後のスピーチという身近な出来事を結びつけて、エッセイとして上手にまとめていると思います。最初はサイレンを聞いて黙祷をした作者を友達が笑って、冷ややかに見ていることにひるんだ作者。しかし、夏休みが明けた時に自分の体験を話すと友達が真剣に話を聞いてくれて、感想を言ってくれたことに「自分の感じたことを伝える手応え」を感じ、「発信し続けていきたい」という決意を持ちました。そうした作者の気持ちが素直に綴られている点に、好感を持ちました。こういう高校生が増えて欲しいという気持ちも込めて、優秀賞に選びました。

UP