36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2014年度 日本福祉大学
第12回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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座談会

タイトル、書き出し、読みやすさ。少しの工夫でさらに良い作品になります

今年で13回目を迎えたエッセイコンテスト。応募総数は過去最多で、1万点に迫る作品が集まりました。4分野そろって応募作品が増え、審査の通過率も昨年より圧倒的に高く、全体的にレベルアップした印象です。優れた作品が多く集まったため、審査員全員が高く評価した作品もありましたが、審査員によって「これが良い」と推す作品が異なり、意見が分かれる作品もあって、白熱した審査会になりました。

審査員プロフィール

第3分野・第4分野の増加が嬉しい。
二木 今年は9974点の応募があり、歴代一位の応募数でした。第1分野から第4分野まですべての分野で応募数が増え、特に昨年新たに設定された第3分野が大きく伸びたのが特徴です。実は、第3分野の「日常のなかでつながる世界」というテーマは、エッセイコンテスト開始当初はあったのですが、応募者が少なかったために無くしたものです。しかし、国際化の時代を迎えて、昨年復活させました。去年より200作品近く増えており、第4分野の伸び率が高いことも時代を反映していて、心強く思っています。では、今年の感想を、審査員の皆さんに順番に話していただきましょう。
杉山  私は第1回から参加していますが、毎年思い続けていたことが少しずつ良い方向に向かっていると感じました。今年は、政治的問題や社会問題、国際問題に目を向けたエッセイが多く、嬉しく思います。
板垣 私は6回目の参加ですが、今年は全体的にレベルが上がっていて、特に第4分野に良い作品が多かったという印象です。難しいテーマに目を向けつつ、自分の言葉に置き換えて書いている作品が多かったので、興味を持って読みました。
久野 私は昨年からの参加ですが、仕事柄、特に世界とのつながりについて書かれた作品に興味を持ちました。今年は「死」や「差別」をテーマにした優れた作品があり、とても興味を持って読ませていただきました。
川名 最近の高校生は、スマートフォンでの単語のやりとりばかりで、日本語は大丈夫かと危機感を感じていますが、主語述語のある文章をしっかり綴ろうという若者がちゃんといて、応募数が増えたことを嬉しく思います。でも、応募作品の半数以上が、身近な家族との触れ合いを書いた第1分野に集中したことは残念です。今年は戦後70 年で、メディアでそういう話題が数多く取り上げられていましたし、安保法制の問題や、選挙権が 18歳に引き下げられたことなどがありましたから、今自分がどういう世界にいるのかをしっかり感じ取って、書いて欲しかったなと思います。
角野 毎年感じるのですが、普通のことを普通に書いている作品が多いですね。高校生の考え方が、もう少し広く、深くなったら、もっと良い作品になると思います。もうちょっと冒険した作品に期待しています。また、厳しい意見になりますが、昔と比べると文章を書く力は落ちています。私は他のコンテストでも審査員をしていますが、どのコンテストでも同じですね。言葉を知らないと、自己表現もできませんから、もっと文章力を付けて欲しいと感じます。
高田 私は今年初めて審査員をさせていただきました。仕事でも、約15年ぶりに高校生と直接ふれあうようになったのですが、私や昔の高校生がほとんど関心を持っていなかった「家族」や、「自分が暮らすまち」に興味を持ち、両親や兄弟だけでなく、おじいちゃんやおばあちゃんとの触れ合いにも関心を持ってエッセイを書いていることが新鮮で、良い意味で驚きました。
「体験」をもとに、自分の考えを書いた作品を評価。
二木 昨年は、各分野の上位に選ばれた作品でも、審査員の意見が分かれるというケースがいくつもありました。視点が違うのは当然だと思いますので、個別分野の評価に入る前に皆さんがどんな点に注目して採点したかを聞かせていただけますか。
角野 最終選考まで残った作品は、どれも一定水準以上です。ですから、単純に5、4、3と点数をつけるには難しく、これは5でも5マイナスかな、これは4でも4プラスかな……と、細かく分けて採点をしました。
高田 私は、「36℃の言葉。」の通り、頭で考えて書いたものより、自分の実体験に基づいたエピソードを書いていて、情景が頭に浮かぶ作品を選びました。
川名 私も、実体験をもとに書いた作品を評価しました。特に、五感を刺激する作品、たとえば、においや音、手触りなどが伝わってくる作品に高い点を付けました。
久野 初めて参加した昨年は「発見」をキーワードに読んでいましたが、2年目の今年は自分の「体験」をもとにして、自分の考えを分析して、うまくまとめた作品を評価しました。また、1年生で頑張っている作品は、特に高く評価しました。
二木 私は、学年までは気が回りませんでした。そういう観点も、面白いですね。
杉山 「エッセイ」は「論文」ではないので、エッセイの持つ響きを大事にしたいと思いながら読みました。ですから、身近なことに着目して、起承転結でうまくまとめている作品を、エッセイコンテストの趣旨を考えて評価しています。
板垣 全体的な印象ですが、難しい言葉や、普段使わない借りてきたような言い回しを使っている作品を数多く見かけました。私は、そういう作品より、その場面に相応しい言葉を探して、自分の言葉で語っている作品を大事にしました。
二木 私は、団塊の世代のせいか、「小さな幸せ」を描いた作品より、個性的な作品を選びました。しかし、今年は全体的にまとまっていて、例年より審査員の間の評価の差違が小さかったと感じます。
書き終えた後に、二度三度と読み返すことが大切。
二木 最後に、来年応募される方に対する期待や助言を、お聞きしたいと思います。
角野 毎年言っていますが、最後に結論を書かなければいけないと思って、書かなくてもよい3行を書く作品が目立ちますね。そして、今年は、強烈な書き出しの作品がいくつかありました。「ドキッ」と驚きはするけれど、その背景が書いていないと、意味がよくわからないということにもなりかねません。種明かしをしない程度に、どんな状況や設定なのかを書いておくべきですね。
杉山 私も同じことを感じました。インパクトも大事だけど、だからといって、奇をてらうようなことはせず、素直に読みやすい作品を書くんだということを頭に置いて書いて欲しいですね。
板垣 全体の構成ですが、インパクトのある入り方より、最初に結論を書いて、一番伝えたいことは何なのかを明確にした上で、全体をどう組み立てていくかを考えると良いと思います。そして、もっと「言葉」にこだわって欲しいですね。使い古された言い回しではなく、「自分の思いを伝えるのに一番相応しい言葉は何か」をもっと考えると、自分の体温が伝わります。
久野 文章の書き方は、分野によって違うと思います。第1分野と第2分野は日常の小さなできごとや身近なことから普遍的なテーマを見つけ出して書くと良いですし、逆に第3分野と第4分野は普遍的なテーマを自分の問題として書くことが大切だと思います。このように方向性が違いますから、そのプロセスが読み手に伝わるように書くと良いと思います。
杉山 また、怒りを持つことは大切ですが、怒りをストレートにぶつけるのではなく、ろ過した上で、その怒りや考えを伝える工夫をして欲しいです。そして、くれぐれも下品な言葉は使わないようにしてください。今年、「日本語を大切にしたい」という作品がありましたが、同感です。最後に、これは個人的な希望ですが、ワープロではなく、できれば手書きにして欲しいですね。
高田 高校の3年間は短いですが、その間に体験して、感じた気持ちを大切にして欲しいと思います。どこかで聞いた話ではなく、自分の気持ちを書いた作品を読みたいと思います。
川名 良い作品を書くためには、できる限りたくさんの本を読んで欲しいと切に思います。ある日突然、良い文章が書けるわけではありません。たくさんの本を読んで、美しい日本語が自分の心の中に積み重なっていって初めて、その言葉を使いこなせるようになるのです。そして、書き終えた後に読み返して、辞書を調べながら誤字・脱字が無いかを確認するのが最低限の礼儀です。読み返すことが、さらに良い作品にするための推敲にもなるのですから。
二木 学校応募の場合は、先生方のご指導にも期待したいですね。今日は、長い時間ありがとうございました。
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