単なる正方形の布。なのにどうしてこんなにも惹かれてしまうのだろう。 正月に親戚の家へ新年の挨拶に行き、伯母の買い物につきそうことになった。買い物を終え、商品を袋に入れていたとき、私は伯母が寿司のパックを風呂敷で包んでいることに気づいた。 「おばちゃん、それ、珍しいね」と声をかけると、伯母は言った。 「風呂敷は便利だよ。包むものによって形を変えられるし、使わない時はたたんでおけるし」 確かに、寿司のパックを入れるにはトートバッグよりも風呂敷のほうが適していると思った。寿司のパックのような大きいものは、トートバッグに入れるには横向けにしなければならないが、それでは寿司がグチャグチャになってしまう。私は、風呂敷の便利さに感心した。 風呂敷に興味を持った私は、風呂敷について調べてみることにした。初めは色々な包み方を知りたいと思いインターネットを閲覧していたが、私は、ある驚くべき記事に出会った。なんとイギリスで、クリスマスプレゼントの過剰包装をなくすため、政府により風呂敷を用いたラッピングを推奨するキャンペーンが行われたのだ。「日本をまねよう」というスローガンを掲げて。日本の文化が、国境を越えて、環境を守るための手段として注目されている。私は胸の高鳴りを感じた。 一枚で何通りにも形を変える風呂敷は、便利なだけではなく、環境にも優しいことを知った。そのような風呂敷の魅力が世界へと羽ばたいていることを私は誇りに思う。しかし、当の日本では、日本文化が忘れ去られつつあるように感じる。イギリスでキャンペーンが行われたように、「まねしたい」と思ってもらえるような日本文化を守り、受け継いでいくことが、今を生きる私たちの使命なのではないだろうか。誇るべき日本の文化。一枚の布が、大切なことを教えてくれた。
第3分野は全体的に優れた作品が多かった反面で、審査員の視点によって評価が分かれるケースもありました。その中で、これは審査員全員が高く評価した作品です。風呂敷という私たちの身近にある小さなものから、世界に視野を広げていく豊かな想像力に感心しました。足下を見つめ直して日本の良さについて考える高校生らしい視点に好感を持ち、話の展開の仕方も素晴らしいと思います。また、風呂敷の便利さに関心を持ったことをきっかけとして、インターネットで色々な包み方を調べるという行動を起こしている点も評価しました。