36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2014年度 日本福祉大学
第12回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第2分野 あなたにとって家族とは?
優秀賞 雨のスクラム
日本福祉大学付属高等学校 一年 水野 李都

 「今夜はひどい雨になりそうだから、早く帰って来るんだよ」そう母に言われた日は、学校が終わると一目散に家に帰っていた。我が家の周辺は、少し前までは大雨が降るたびに道路が冠水してしまう地区だったからだ。
 雨が降る前には、家の前のプランターを動かす人や、土のうや止水板を準備する人など、どこの家でも被害を最小限にする準備に一生懸命だ。「たいした雨でないといいのに」と思いながら。
 しかし天気予報通り、その夜は大雨になった。温暖化の影響なのか、激しい雨に見舞われる機会は多くなっているようだ。みるみる家の前の道路の水たまりが、大きな川になっていく。そのうち家は海に浮かぶ小島のようになってしまう。家の前の道を大きなトラックが通り過ぎるたび、大波が各戸に押し寄せ、あちこちからドラム缶、ビールケースなど、大きな物が容赦なく押し寄せてくる様子は見ていて、とても恐ろしい。そんな時、近所の大人達が家から出て来てそういった物をどんどん片付けていく。そうして町内の家を守り、道路の事故を防いでいるのだ。
 水が引いた後は、自宅周辺に残されたがれきを皆が掃除し合う。それは、誰かが声を掛けるわけではなく、ごくごく当たり前にあっという間に行われている。
 ひんぱんな水害と隣り合わせの地域に長年住んでいる人達の備えや対応は、慌てずに着実に、だ。これで、数日で普通の暮らしを取り戻せるようになっている。そんな生活が出来るこの地域の人達は、自然と防災意識が身に付いているのではないか。水害だけでなく今後起こりうる天災にもこういう意識があれば、きっと役に立つと思う。
 数年前に地下導水管が導入され、最近は水が溜まることはほとんど無くなった。近所の人達による「雨のスクラム」は多分もう目にすることは無いけれど、その心構えを私は忘れたくない。

講評

 まず、「雨のスクラム」という題名がとても良いです。題名を見て、「何だろう?」と興味を惹かれて読み進んでいきました。大雨という自然災害を経験することによって、人々が力を合わせ、自然と防災意識が身に付いていくのではないかという作者の考えが素直にまとめられていて、読んでいて「そうなんだろうな」と納得感を持って読むことができました。優れた観察眼を持っている点を評価して、優秀賞に選びました。高校1年生ですので、来年以降も、さらに良い作品を書いてくれるのではないかと期待しています。

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