36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2014年度 日本福祉大学
第12回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第4分野 社会のなかの「どうして?」
優秀賞 今はまだ近くて遠い国
渋谷教育学園幕張高等学校 二年 金 亮丞

 僕は日本で生まれ日本で育った。日本を一歩も出たことがない。でも、僕はみんなと少しだけ違う。僕は韓国人だ。
 僕は九年間朝鮮学校に通った。朝鮮学校に入りたいと言ったのは僕だった。自分の国を良く知らないのは変だ、と思ったからだ。僕はそこで、韓国の言葉を習い、韓国の歴史を学び、韓国の音楽を聴き、韓国の踊りを踊り、韓国の誇りを抱いてきた。僕にとって、とても大切なことをたくさん学んできた。
 そんな僕は、高校から日本の学校に通うことにした。はじめての日本の学校!僕はワクワクしていた。高校入学を控えた春休みに、ふと本屋に立ち寄った。派手に彩色された売り上げランキングの棚に目を移した僕は、衝撃的なものを目にした。「当店売り上げ第一位!人気の嫌韓論です。タイトルは…」「えっ?けんかんろん!?」僕は思わず悲鳴を上げそうになった。「韓国を嫌う本が一位…」僕は急に日本の学校での生活が不安になった。
 そして僕は高校に入学した。そこで、もちろん自己紹介が必要だった。自分の名前を言うのにこんなにも緊張したことは無かった。心の中で深呼吸して、ゆっくりと言った。「名前はキムリャンスンって言うんだ」胸がドキドキした。息を止めて友達の反応を待った。すると、反応は意外なものだった。「へー、変わってるから覚えやすい。韓国語、ほんの少しだけ知ってるよ。響きがきれいで好きだよ」その言葉を聞いた瞬間、僕の心を塞き止めていたモワッとしたものが、一気に晴れたのがわかった。
 色々な報道があり、色々な主張がある。「どうしたら国と国が仲良くできるのだろう?」僕は度々疑問に思った。けれど、一人一人が触れ合ってみれば、答えは必ずわかるはずだ。国と国も、人と人のつながりだから。近くて遠い国が、近くて近い国となるのは、夢じゃない。僕たち次第です。

講評

 怒りを込めた乱暴な言葉ではなく、穏やかな言葉を使って、自分の気持ちを書いている点に好感を持ちました。自己紹介で自分の名前を言う時に緊張して、胸がドキドキする状況が読む私たちにも伝わってきますし、自己紹介を通してわかったことをうまくまとめています。最後の「国と国も、人と人のつながりだから」という言葉に共感しました。締めくくりも素直な気持ちが表現されていて、気持ちの良い読後感を与えてくれます。この気持ちをいつまでも大切にして、人と人の交流をこれからも続けていってくださいね。

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