36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2014年度 日本福祉大学
第12回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
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入賞者発表
第4分野 社会のなかの「どうして?」
審査員特別賞 命の選択〜私の決意〜
盈進高等学校 一年 渡部 千絵

 「九七%」。妊婦が出生前診断を受けて異常が判明し、人工妊娠中絶を行った人の割合だ。
 私ならどうするだろうか。「知的障がいがあるかもしれません」と言われたら…命はすべて奇跡的に授かるもの。中絶するか、産むか。
 「ひと昔前は、子どもが産まれたとき『手足はある?』と聞いたものよ」。そう母から聞いたことがある。「五体満足に生まれただけでも幸せ」などという言い方は、「障がい=不幸」という考え方の裏返しだ。
 私が生まれた十六年前、超音波検査である程度、目に見える障がいが分かった。医学は進歩し、現在は、染色体異常までも分かるようになった。
 教えてほしい。「異常」ではなく、「普通の人」ってどんな人?
 私には、知的障がいをもつおじさんがいる。父の弟。祖母は、おじさんのご飯やトイレの介助も行う。祖母はこれまでとても苦労しただろう。でも祖母は、おじさんといるとき、いつも笑顔で、私には幸せそうに見える。だからおじさんも嬉しそう。父も弟をとても大切にしている。私はそんな家族を誇りに思う。だから、障がい者は不幸だとは思わない。
 大人たちはよく、「外見で判断せず、中身で判断しなさい」と言う。では、本当にそれはできているだろうか。できていないと思う。「人と違うから」と、差別やいじめを受け、命を奪われる人がいる。じゃあ、「普通の人」って?誰が基準?何が幸せ?この世に同じ人は一人もいないじゃない。
 命はすべて同じ重さ。私はそう思うから、人が違いによって幸せになることを阻まれる社会こそ、不幸だと思う。
 出生前診断は今後、癌になりやすい体質か、身長は何センチくらいになるかまでも診断できる可能性があると言われている。私が大人になる頃は、この診断を受けるのが当然の社会になるかもしれない。だったら…もし、私が障がいを持った子どもを授かったら…
 揺れるかもしれない。でも私は絶対、人工妊娠中絶しない。命に選択肢はあってはならない。

講評

 出生前診断についてはいろんな考えがあると思います。高校1年生の作者がそこに問題意識を持ったこと、そして、「異常」と「普通」という難しい問題を自分で考えて、「命に選択肢はあってはならない」という結論を出したことに感心しました。その賛否両論のある問題を必死に考えぬく姿勢に審査員の私たちも、共感します。作者が将来、結婚して、小さな命を授かった時に、このエッセイを書いた時の気持ちを思いだして欲しいと思います。「生命」をテーマにした作品は他にもありましたが、この作品は論旨が明確で、文章としてよく書けている点を評価して、審査員特別賞に選びました。

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