36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2014年度 日本福祉大学
第12回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第1分野  人とのふれあい
最優秀賞 最強のデート服
青森県立三本木高等学校 二年 山田 奈桜

 私は最近、おしゃれに興味を持ちはじめた。ついにはコーデアプリまでインストールしてたくさんの方々のコーデを見ている。その中で、祖母からのお下がりでコーデしている人を見つけた。思いついたら即行動タイプの私は、その日の帰りに祖母の家へ寄った。 
 私には絶対に素敵な服が見つかるという確信があった。なぜなら祖母は昔、当時街一番の高級ブティックで仕立て屋として働いていたからだ。祖母の家に着くやいなや、クローゼットを見せて欲しいと伝えた。「地味な服しかないよ」と言いながら祖母はクローゼットを開けた。「確かに地味な色合いだ」と心の中で思った。しばらく見ていると、祖母が「あ」と何かを思いだしたかのように呟き、クローゼットを物色し始めた。黒いスカート。私は息をのんだ。これまでに見たことのないような柄というか素材だった。レースのようだけどそうじゃない。ウエストにはベルトとバックルが付いていた。昔のものだけど、全く古臭くない。むしろ初めて見る新鮮で新しいもの。私はとても気に入った。そして祖母はこのスカートについての話をしてくれた。 
 ブティックで働き始める前、洋裁学校へ通っていた頃の話。祖母は当時の彼氏にデートに誘われていた。しかし、着る服もお金も無かったので自分で作ることに決めた。そうして出来上がったのが、このスカートだった。デート当日、スカートも好評で嬉しく思いながら帰ろうとした時、彼に初めてキスされたそうだ。当時の彼氏とは、祖父だった。 
 なんて素敵なエピソードを持ったスカートなんだろうと目を輝かせて見つめていた。「欲しい」と知らぬ間に呟いていたようだ。「お直ししてからあげるわ。私の作った大切なスカートを、大好きな孫が気に入ってはいてくれるなんて、これほど嬉しいことないわ」。 
 大切にしようと素直に思った。祖父と祖母の愛のつまったスカートは私に何をもたらしてくれるかしら。

講評

 第1分野は応募数が5000点を超えましたが、その中で他の作品を引き離して圧倒的に高い評価を受けた作品です。「コーデアプリまでインストールして」という書き出しから、「おしゃれ」に興味を持ち始めた高校生らしいかわいらしさや時代性が良く表現されています。今どきの高校生が、祖母が若い時にデートするために作った服に興味を持ったエピソードが具体的に書かれていて、エッセイとして楽しみながら読むことができました。「祖母」を家族の一員としてだけでなく、客観的に見ることができるようになった作者の成長が伝わってきた点も、高い評価につながっています。「最強のデート服」というタイトルも個性的で、良いと思います。

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