36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2014年度 日本福祉大学
第12回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第2分野 あなたにとって家族とは?
優秀賞 眠っているまち。
青森県立三本木高等学校 一年 小笠原 咲

 眠っているまち。それは、朝早く、まだ動き出す前のまち。あるいは、まだ何かに目覚める前のまち。
 でも、私のまちはいつも眠っている様な気がする。商店街のシャッターはどんどん閉まって、小さい頃よく行った本屋さんも今は無くなって、私が大きくなるのとは反対に、私のまちは昔よりも小さくなっていく。遠くに住む友達にどんなまちか聞かれて、「こっちには何もないよ」と答えるのが恥ずかしくてしょうがなかった。
 まちのどこかが眠り始めて、代わりにどこかが少しずつ、少しずつ、変わり始めた。まちの寝相が変わり始めたのだ。
 小さい頃友達と遊んだ空き地には、老人ホームやマンションが建って、美術館や不思議なオブジェが出来た。私のまちは、いつしか私の知らないまちになってしまって、置いて行かれた気がしていた。ベッドから私だけ落っこちたみたいだ。それが私は寂しくて、悲しかった。大人になって、いつか自分のまちを思い出す時、何も思い出せないなんて、嫌だった。胸を張ってこのまちが好きだと言いたい。眠ったままの寂しいまちなんて、つまらないじゃないか。
 だから、私のまちは、眠っている場合なんかじゃない!シャッターも閉じてなんかいないで起きて!本屋さんも美術館も起きて!綺麗な官庁街通りの桜も起きて!ほら、美味しいバラ焼きも起きよう!私のまちはもっともっと良いところがある。まだ眠っているだけ。花火大会だって、秋祭りだって、楽しみにしている人はたくさんいる。駄菓子屋のおばちゃんも、公園を散歩しているおじちゃんも、みんなで、まだ眠っているこの街を起こそう!街「起こし」だ!
 眠っているまち。それは、朝早く、まだ動き出す前のまち。あるいは、まだ何かに目覚める前のまち。
 私のまちは、これから目が醒めるところだ。

講評

 「私のまちはいつも眠っている様」「まちの寝相」「街『起こし』」など、使われている言葉がとてもユニークで、作者ならではの表現になっている点が高く評価されました。まだ一年生ですから、これからが楽しみです。しかも、そのユニークな言葉の中にユーモアも込められており、すばらしいエッセイになっています。「この作品が一番良かった」という審査員もいたほどです。このまちに住む人がこの作品を読んだら、きっと何か感じるところがあるでしょう。また、作品集ではわかりませんが、文字がとてもきれいで読みやすかった点も好感を持ちました。

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