36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2014年度 日本福祉大学
第12回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第2分野 あなたにとって家族とは?
審査員特別賞 私の街の防犯カメラ
昭和女子大学附属昭和高等学校 三年 濱野 舞綾

 私の住む街には無数の防犯カメラがある。それは目に見えないものである。けれど、それらの防犯カメラによって街の安全が維持されていると言っても過言ではない。けれど困ったことに、これらの目には見えない防犯カメラによって私に関する多くの情報が父や母に全て伝えられている。だから私が街で何かをすると何でも父や母にはお見通しなのだ。
 私が、少し元気がないのも家に帰る前から母は知っている。毎日のように、誰かしら学校帰りの私に声をかけてくれる人がいるからだ。「まあちゃん。学校はどうだった」と。この年になると、まあちゃんと呼ばれるのは恥ずかしいけれど、私を気にかけてくれている人がいるというのは何とも嬉しいものだ。
 私が、見た目がちょっとだけやんちゃな友人と駅前で立ち話をして家に帰ると、父に「誰と駅前で話をしていたんだ」と聞かれたこともある。またあのおじさんに見られていたのか…と、何かに負けたときの悔しさのような感情がこみ上げてきた。しかし、それ以上にここにも私を気にかけて心配してくれていた人がいたのだと改めて感謝の気持ちでいっぱいになった。
 毎日のように報道されている児童が巻き込まれた事件。どれもこれも悲惨過ぎる事件ばかりだ。けれど、私の住む街では絶対に起こらないであろう事件ばかりなのだ。それは、私の住む街には目に見えない防犯カメラが無数にあるからだろう。誰かがどこかで見ているというのは、犯罪者を駆除するには最適なツールなのだ。だから、私の住む街では小学生の登下校を見守る高齢者の方々がいる。私が小学生の時から雨の日も、どんなに暑い日も立って見守ってくれている。そのときに私の顔と名前を覚えてくれた方が今でも「まあちゃん。学校はどうだった」と声をかけてくれているのだ。
 今日もどこかで私を見てくれている人がいる。今日も無数の防犯カメラは作動中だ。

講評

 近所の人たちの「目」を「防犯カメラ」に例えた視点が面白いと感じました。最近は地域の人たちのつながりが少なくなっていると言われますが、こういう子どもたちを地域の人たちがみんなで見守る街があってもいいと共感しました。街の人たちの温かい気持ちが伝わってきます。「私が街で何かをすると何でも父や母にはお見通しなのだ」ということに最初は抵抗や反発を感じながらも、それが「私たちを優しく見守ってくれているんだ」ということに気付いた「発見」と、感謝の気持ちに変わっていくプロセスをストレートに表現しているところがいいと思います。

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