36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2014年度 日本福祉大学
第12回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第1分野  人とのふれあい
優秀賞 父のように
聖ウルスラ学院英智高等学校 三年 川村 美侑

  私の父はいつも変なギャグを言う。行動するにもどこか抜けていて、いわゆる、どこにでもいる普通のおじさんだ。そんな父は、私が小さい頃から自衛官として働いている。
 私には兄が二人いる。どちらも父の背中を追って、中学卒業後、自衛官への道へと進んでいった。しかし、私には分からなかった。毎日夜遅くに帰ってきては、クサい足のまま夕食をガツガツ食べる父。お風呂に入ったらすぐに寝て、私が翌朝起きるともうすでにその姿はない。一体どんな仕事をしているのか。兄たちが父と同じものを目指した理由が分からなかった。
 そう思いながら過ごしていたある日、大きな地鳴りと共に、これまで経験したことのない巨大な地震が発生した。あの、東日本大震災だ。多くの人が亡くなり、苦しみ、約三年経った今でもまだ復興していない地域がたくさんある。そんな中、活躍が注目されたのは自衛隊だった。私の父はそれからしばらく帰ってこなかった。時々、自分の分として配給された食料を残して、私たち家族のために届けに来てくれた。その優しさに、私はとても感動した。状況が落ちついてくると、父は泥だらけの汚い格好で帰ってきた。でも私にはそれがすごくカッコ良く見えた。あの時の父は、いつもの抜けている父とは違って、自衛官としての姿の父だった。それから救助の様子などを話してくれた。それは一人の青年を助けた時の話だった。父が「頑張れ、生きるんだぞ」と励ますと、その青年は「俺も将来、絶対自衛官になります」と小さな声で言ったそうだ。父はとても嬉しそうに、満足げに話してくれた。
 たくさんの被害をもたらした震災ではあったが、これを通して父の働く姿を見て知ることができた。同時に、父を尊敬し、あこがれるようになった。私は将来、人の役に立てる仕事に就いて、たくさんの人に夢と勇気を与えられるようになりたい。そう、父のように。

講評

 東日本大震災をテーマとした作品は、過去の作品も含めてたくさんありましたが、父親の仕事を通して描く視点が斬新でした。「夕食をガツガツ食べる」「お風呂に入ったらすぐに寝て」「泥だらけの汚い格好で帰ってきた」といった父親の様子が具体的に書かれている点がいいと思います。父親や兄の気持ちを理解できなかった前半と、東日本大震災の復興に父親が参加した中盤以降の対比がドラマチックに描かれており、震災の復興に泥だらけになってがんばる姿を見て、父親や自衛官の仕事に誇りを持つようになった気持ちの変化がよく伝わってきます。

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